昨日の夕方、カナダ人の友人から、うれしいメールが届きました。
「うれしい知らせがあるよ。今日、僕の住んでいるブリティッシュ・コロンビア州が、北米で最初の炭素税を導入したんだ。国中がそのニュースで持ちきりさ。みんな、かなり好意的にとらえているみたいだ。一歩前進!ってとこだね」。
何かと後れをとっていると批判されてきた北米(アメリカもカナダも)でも、着実にうねりが起こり始めています。まえにエンバロメンタル・ディフェンスの活動紹介でちらとた米国のUSCAPについてご紹介しました。
> さらに私たちは、米国内での温室効果ガス排出量の上限が連邦議会で立法化され
> るよう、大手企業27社および国内の6環境団体と組み、画期的な米国気候行動パー
> トナーシップ(USCAP)を立ち上げた。私たちはともに、2050年までに排出
> 量を6〜8割削減するべく、市場ベースの上限設定を求めている。
USCAPのウェブサイトからもう少し詳しくご紹介しましょう。実践翻訳チームの温暖化チームのメンバーが訳してくれました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
USCAP
http://www.us-cap.org/
http://www.us-cap.org/USCAPCallForAction.pdf
米国気候行動パートナーシップ(United States Climate Action Partnership、USCAP)は、大手企業および主要な気候・環境保護団体からなる連合体で、一丸となって米国連邦政府に対し、温室効果ガス排出量の大幅削減を義務づける法律の制定を求めている。
USCAPは2007年1月、1年にわたる話し合いと協力を経て、経済界全体を規制の対象とする、市場主導型の気候保護アプローチを策定する上で指針となる一連の原則と提言をまとめた。
USCAPは、この『行動の呼びかけ』(A Call for Action)と題する、解決策をベースにした提言の立法化に迅速に取り組むことが、改革の推進、米国のエネルギー安全保障の強化、経済成長の促進、米国貿易収支の改善、さらには、この極めて重要な地球規模の課題に対して米国に強く求められているリーダーシップの発揮につながると確信している。
USCAP創設時にメンバーとして名を連ねたのは、アルコア、BPアメリカ、キャタピラー、デューク・エナジー、デュポン、FPLグループ、ゼネラル・エレクトリック、PG&E、PNMリソーシズなどの大手企業と、エンバロメンタル・ディフェンス、天然資源保護協議会、地球規模の気候変動に関するピューセンター、世界資源研究所の4つのNGO。
その後も規模は拡大しており、新たに参加した企業・団体は、アルキャン、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)、ボストン・サイエンティフィック、クライスラー、コノコ・フィリップス、ディーア・アンド・カンパニー、ダウ・ケミカル、エクセロン、フォード・モーター、ゼネラル・モーターズ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、マーシュ、全米野生生物連盟、ザ・ネイチャー・コンサーバンシー、NRGエナジー、ペプシコ、リオ・ティント、シェル、シーメンス、ゼロックスなど。
以下、『行動の呼びかけ』(A Call for Action)より
【コミットメント】
「われわれ米国気候行動パートナーシップのメンバーは、環境的に有効かつ経済的に持続可能で、われわれの原則に合致する公正な気候変動プログラムの可能な限り速やかな立法化に向け、大統領、連邦議会、その他すべての利害関係者と協力することを約束する」
【6つの原則】
・気候変動のもつ地球規模的な側面に対して責任ある行動をとること
・技術革新へのインセンティブを創り出すこと
・環境面で有効であること
・経済的な機会と優位性を構築すること
・過度に影響を受ける分野に対して公正であること
・早期の行動に対して報奨を与えること
【USCAPの目的】
『行動の呼びかけ』を策定した目的は、合理的に達成可能な最短期間で、温室効果ガス(GHG)排出量の増加を抑え、食い止め、減少に転じさせることである。
【政府のとるべき行動】
USCAPは、工場などの大規模な固定排出源や運輸部門などの主要な排出部門からの温室効果ガス排出量や、商業ビル・住居用建物でのエネルギー消費による排出量の削減を義務づける政策的枠組みの立法化を、議会に対して強く求める。
このアプローチの土台となるのは、経済界全体を対象としたキャップ・アンド・トレード・プログラムとこれに関連する政策で、これらによってGHGの大気中濃度を抑え、人と環境への大規模な影響を最小限に食い止めることを目指す。
USCAPは米国議会に対して、短・中期的な排出量削減目標の設定や、技術の研究・開発・利用を推進する国家プログラムの策定、さらには、最終的に地球規模の解決策が必須となることを考え、途上国をはじめとする他国の行動を促す取り組みの構築を提言する。
(小野寺春香)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
米国の主要企業が集まって、NGOといっしょに、連邦政府に対し、「削減義務のある法律を作れ」と圧力をかけているのですね。
これまでの産業界なら、「そういう法律を作るな、作ると産業界が困るから」という圧力をかけたのでしょうけど、世界のルールが変わりはじめていることを痛感します。
英国でも、英国産業連盟(CBI)という大手企業の集まりが、「2050年までに英国政府が目標としている60%削減に協力し、3年間で100万トンを削減する」という報告書を出しています。
日本の産業界は、炭素税にも排出権取引にも一貫して反対の姿勢でした。経産省が検討を始めるという、ひとつのシグナルが出されましたが、すぐにさまざまな反対意見やけん制が飛び交っています。しばらく目を離せない状態ですね。
このような議論の展開にも大きな影響を与えると思われますが、昨日の夕方、日本でも官房長官の記者会見で、福田首相直轄の有識者会議についての発表がありました。
私もメンバーとして参加することになりましたので、できるだけ世界の常識や一般の人々の思いを伝えてきます〜。そして、「そもそも何を目的として考えるのか」(たとえば、100年後の地球なのか、今日の既得権益なのか)というようなことも、最年少のひよっこの強みで言っちゃおう、と思っています。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
官房長官記者会見
http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/press.html
○地球温暖化問題に関する懇談会について
「地球温暖化問題に関する懇談会」、通称「低炭素社会懇談会」と言うことにいたしましたが、大変皆さんご関心をいただいておりましたが、それを決定をいたしました。目的・メンバー等はお手元のとおりでございます。第1回目の会議は、今日程調整中でございますが、3月早々にも開催をしたいと思っております。内閣官房副長官補室の方にお問い合わせをいただければと思っています。
この懇談会でどういうことを議論するかと言えば、地球温暖化、ある意味では大変厳しい条件をクリアしていかなければなりませんが、逆に言えば「ピンチはチャンス」というようなこともありますので、日本社会或いは世界を新たな角度から見た発展のチャンスとして捉えて、我が国が来るべき低炭素社会づくりにおいて、世界に貢献をしていくという大変幅広い観点から議論をしていただきたいと、こう思っているところでござます。
いろんなことを議論していただくことになろうかと思いますが、一つは、低炭素社会への転換を目指しまして、生産だけではございませんで、人々のライフスタイルでありますとか、或いは、都市・交通の在り方等々、根本的に幅広く見直していくといったようなことを検討していただくのかなと思います。
或いは「環境モデル都市」というものを選んだらどうかというアイディアが既に出されておりますけれども、実際はどういうものなのかと、基本的なコンセプトの検討もしてはどうかと、或いは、京都議定書の6%削減の目標達成計画の確実な実施を始めとする、この温暖化対策による、特に国レベルで幅広く取り組んでいく必要がございますので、それをどのように幅広い国民の皆さん方にご協力をいただけるか、その方策を検討したいと。
或いは、これから正に国際的な議論が行われていくわけでありますけれども、そういう中で日本がリーダーシップを発揮するためにはどういうことをやっていったらいいだろうかというようなことであろうかと思います。再三お尋ねのあった「排出量取引」についての議論も、出てくるんだろうと思われます。分科会は、今予め何を作るということは決めておりませんけれども、議論が進む中でそういうことも必要あらば、やっていったらどうかなと思っております。
当面は、北海道洞爺湖サミットを一つのターゲットにして議論を進めていくわけでございますが、さらにCOP15に向けて、来年の末に向けて、いろんな議論をしていかなければと思っております。
人選はなぜ選んだのかと、一人ひとりについては申し上げませんけれども、先ほど申し上げしたような幅広い観点から、また、国際的な観点も含めてご議論をいただける専門的かつ高い見識を有する方々にお願いをしたと思っているところでございます。
なお、政府側からは、総理、官房長官、環境大臣、経産大臣が出席することを想定いたしております。
地球温暖化問題に関する懇談会 名簿
枝廣 淳子 有限会社イーズ代表取締役
奥田 碩 トヨタ自動車株式会社取締役相談役、内閣特別顧問
勝俣 恒久 東京電力株式会社取締役社長
黒川 清 内閣特別顧問
末吉竹二郎 国連環境計画金融イニシアティブ特別顧問
高橋はるみ 北海道知事
月尾 嘉男 東京大学名誉教授
寺島 実郎 財団法人日本総合研究所会長、株式会社三井物産戦略研究所所長
松井 三郎 京都大学名誉教授
三村 明夫 新日本製鐵株式會社代表取締役社長
薬師寺泰蔵 総合科学技術会議議員
山本 良一 東京大学生産技術研究所教授
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私の名字、五十音順だと、だいたいいちばん上に来ちゃうんですね。恐縮〜。(^^;
冒頭のカナダの友人からのメールは、
「キミも忙しいだろうけど、元気かい? いろいろがんばってね。持続可能な方向へ向けての勢いがつき始めていると思うんだ。世界は、もういくつかの奇跡を必要としている。そんな奇跡が起こるよう手助けしようじゃないか!」
と結ばれていました。
そう、奇跡がいくつも起こるよう、みんなそれぞれ、自分にできること、自分が大事だと思うことを、できる範囲でよいからやっていきましょうね! きっと世界は変えられます。