地球の体積の99%以上は1,000℃以上だってご存じでしたか? 私たちの暮らす地表の温度から考える想像できませんが、100℃以下は1%もないそうで、地球はまさに「火の玉」なのですね。
中が高温で外(表面)は低温ですから、いつも自然に熱が外へ流れ出しています。その熱が温泉を沸かしてくれているのですね。この地球の熱を使おうという動きが世界的に広がっています。(ちなみに、地球内部の熱がなくなるまで10億年以上かかるので、人間の時間軸で言えば、ほぼ無限に持続可能なエネルギーです)
この地熱エネルギーの蒸気でタービンを回して発電するのが「地熱発電」です。
「地熱エネルギー」や「地熱発電のしくみ」、「日本の地熱発電」などについて、わかりやすい情報が、日本地熱学会のウェブサイトにあります。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/grsj/
この日本地熱学会が昨年秋に、「我が国の地熱エネルギー利用に関する提言 日本を真の地熱大国に!」を出しました。
提言のポイント
●低炭素排出で、24時間安定な発電が可能な、国産エネルギー地熱の利用拡大を!
●地球の恵み地熱を地球温暖化対策・エネルギー安全対策の柱の1つに!
●世界有数の地熱資源保有国日本が世界から取り残される!
●国は地熱利用に対する高い目標を掲げ、必要な支援策の確立を!
●地熱と温泉の共生的利用を!
●有望な地熱資源が眠る国立公園の開発利用ルールの確立を!
詳しくはこちらにあります。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/grsj/news/prposal08/proposal2008.html
なぜって、日本は、インドネシアと米国に次ぐ世界第3の地熱資源保有国なのですが(火山が多いほど地熱資源のポテンシャルは大きい)、下でレスター・ブラウン氏が紹介しているように、世界各国で地熱エネルギー開発が進んでいるのに、日本では2000年以降新しい地熱発電所はひとつも建設されていないのです。
地熱発電のCO2排出量は火力の数十分の1、原子力の半分という「低炭素社会に必須のエネルギー」だというのに。現在の日本の地熱発電は18ヶ所で、出力合計は50万キロワット強、国内発電能力の0.25%前後にすぎません。(温泉は1,000を超える=それだけ地熱が地表近くにある恵まれた国なのですが!)
そんな日本地熱学会の声に後押しされるように、今年に入って、日本でもようやく地熱エネルギーの開発が始まるとの報道がありました。
日経新聞(1月3日付)などによると、「地熱発電所の新建設計画が20年ぶりに国内で動き出す」とのこと。
・三菱マテリアルとJパワー:約400億円、出力6万キロワット、秋田県湯沢市、16年にも稼働
・日鉄鉱業と九州電力:約200億円、3万キロワット、鹿児島県霧島市(既存地熱発電所の隣接地)
・出光興産の子会社、出光大分地熱:2ヶ所目の建設に向け、本格調査へ
そして、経済産業省でも、「CO2をほとんど排出しない国産エネルギーである地熱発電の普及を図るため、自然公園法の改正も含め、国立公園内の開発促進策の検討に入った」とのこと。4月にもまとめる報告書に、同法改正や環境省との開発規制の申し合わせ解消など、具体的な規制緩和策を盛り込む方針だそうです。
これまで日本の地熱発電の開発が進みにくかったのは、資源の82%が国立公園内で規制を受けていることも理由の1つ。「国立公園区域のうち「特別地域」の開発には認可が必要な上、両省の申し合わせで新規開発は行わないことになっている。「普通地域」でも届け出が必要で、環境や景観保護にそぐわない場合は中止を命令することができる」という規制があっては、なかなか開発が難しいです。
まえに、
> 余談ですが、地熱発電ビジネスを舞台にした経済小説『マグマ』が面白いそうで
> す。私も読んでみようと思っています。熱くなれるかも。(^^;
>
> 「マグマ」(朝日文庫)
> 真山 仁 (著)
とご紹介した「マグマ」、面白く読みました。国立公園内での開発のしにくさも登場していました。
地熱発電は、設備出力は小さいのですが、天候に左右されず、設備利用率が高いため、発電電力量は太陽光発電よりも大きいとのこと。CO2をほとんど出さず、国産で、天気にも左右されない安定したエネルギー、日本はレスターが「これだけ温泉があるのに、地熱を使っていないのはもったいないなあ」というほどの地熱資源大国なのですから、じょうずな利用が進んでいくことを願っています。
さて、その地熱発電、世界の状況をレスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からのレポートでお届けします。実践和訳チームが訳してくれました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
世界の地熱発電、爆発的拡大の兆し
http://www.earthpolicy.org/Updates/2008/Update74.htm
ジョナサン・G・ドーン
化石燃料の価格が急騰し、各国が石油への依存度を減らす方法や温室効果ガス排出量の削減方法を探る中で、発電への地熱の利用に新たな注目が集まっている。
地熱エネルギーによる発電は、1904年にイタリアのラルデレッロで始まり、今では24カ国で行われている。そのうち5カ国は、自国の全電力の15%以上を地熱発電で得ている。2008年の前半に、世界の地熱発電の設備容量は合計1万メガワットを超え、現在、ほぼイギリスの人口に相当する6,000万人分の電力需要を満たすに十分な電力が生産されている。2010年には、46カ国で地熱発電が行われ、合計設備容量は1万3,500メガワットにまで増えるかもしれない。これは石炭火力発電設備27基分に相当する。
地球の表面を覆う地殻の最上部、厚さ約10キロメートルの範囲に存在する熱エネルギーは莫大で、すべての石油と天然ガスの資源を合わせたエネルギー量の5万倍にもなる。このエネルギーは、地球の核で生じるエネルギーと、ウラン、トリウム、カリウムといった天然の放射性同位体の崩壊によって生じるエネルギーによるものである。
チリ、ペルー、メキシコ、米国、カナダ、ロシア、中国、日本、フィリピン、インドネシアなどの環太平洋火山帯(太平洋を取り巻く火山活動の活発な地域)に位置する国々は、地熱エネルギーが豊富である。アフリカのケニアやエチオピアなどにまたがる大地溝帯も、地熱に富む。世界全体では、自国の電力需要をすべてまかなうに足る地熱資源を持つ国は39カ国あり、その人口は合計7億5,000万人以上に上る。(www.earthpolicy.org/Updates/2008/Update74_data.htm のデータを参照)
地熱発電を行うには、通常、蒸気タービンを動かすために熱水や水蒸気が溜まっている地下の貯留層(槽)が必要であった。しかし、現在では、閉じた熱交換システムで沸点の低い液体を用いる新しい技術により、これまでよりもずっと低い温度での発電が可能である。この画期的な進歩により、地熱資源に関しては名の知られていないドイツなどでも地熱発電が可能になってきている。また、この進歩が、2010年までに地熱発電を行う国がほぼ2倍になるかもしれないという理由の一つである。
地熱発電所には、低炭素で燃料費のかからない地元のエネルギー資源で発電できるということ以上に、常時必要なベースロード電力が1日24時間供給されるという長所がある。蓄電や非常用電源は必要ない。
米国は世界で最も地熱発電量が多い国である。2008年8月時点でのアラスカ、カリフォルニア、ハワイ、アイダホ、ネバダ、ニューメキシコ、ユタの7州の地熱発電容量の合計は、約2,960メガワットに達する。設備容量が2,555メガワットと世界のどの国と比べても多いカリフォルニア州では、電力の約5%を地熱エネルギーから得ている。この設備のほとんどは、サンフランシスコ北部の地質学的活動が活発なガイザーズという地域に導入されている。
「2005年エネルギー政策法」により、地熱発電が米国政府の再生可能エネルギー生産税控除を受けられるようになったため、米国西部の多くの市場では現在、地熱資源で発電される電力のコストが化石燃料による電力コストと等しくなっている。経済情勢が追い風となり、地熱産業は急速に活性化している。
2008年8月時点で、97もの新規地熱発電プロジェクトが承認されており、その設備容量の合計は最大で4,000メガワットに上る。これらのプロジェクトは13州で開発中であり、そのうち約550メガワットのプロジェクトはすでに建設段階にある。新規設備には、バルカン・パワー社のネバダ州ソルトウェルズとオーロラ近くの350メガワットと245メガワット、カルエナジー社のカリフォルニア州南部のソルトン・シー近郊の155メガワット、およびダヴェンポート・パワー社のオレゴン州ニューベリー火山近くの120メガワットなどの、大規模プロジェクトが多く含まれているため、7,000人の正規雇用の創出が見込まれている。
現在、開発されているのは、可能性のごく一部にすぎない。米国エネルギー省の推定では、低温度技術の登場により、少なくとも26万メガワットの米国内地熱資源が開発可能である。マサチューセッツ工科大学が主体となった研究では、地熱の研究開発に15年間で約10億ドル(約1,000億円。石炭火力発電所1基分の建設コスト程度)投資すれば、2050年までに10万メガワットの商用設備の展開につながると指摘している。
欧州で最も地熱エネルギー開発が進んでいるのは、イタリア(810メガワット)とアイスランド(420メガワット)である。イタリアでは2020年までに容量がほぼ倍増すると予想されている。電力需要の27%を地熱利用でまかなっているアイスランドは、発電に占める地熱の割合が世界で最も高い。設備容量がわずか8メガワットのドイツは遅れを取っているが、2004年に導入されたキロワット時当たり0.15ユーロ(約20円)の固定価格買取制度の効果が現れはじめ、バイエルン州を中心に、現在では150のプラントが建設中である。
地熱発電量が多い上位15カ国のうち、10カ国は発展途上国である。電力の23%を地熱エネルギーでまかなっているフィリピンは、米国に次いで世界第2位の地熱発電量を有する。フィリピンは、2013年までに地熱発電設備容量を60%以上増やし、3,130メガワットにすることを目標としている。
世界第3位のインドネシアは、さらに大きな目標を掲げている。今後10年間で新たに6,870メガワットの地熱発電容量を開発するというもので、これは現在同国がすべてのエネルギー源から得ている発電量のほぼ30%に相当する。インドネシア国営石油会社のプルタミナは、この事業の大半を手掛けることを期待している。そうすれば、再生可能エネルギー市場に進出し始めた在来型エネルギー企業のリストに名を連ねることになるのだ。
アフリカの大地溝帯には、地熱開発の可能性が無限にある。他国にさきがけて開発をリードしているのはケニアだ。2008年6月下旬に、ムワイ・キバキ大統領は、およそ1,700メガワット分の地熱発電を10年以内に新たに導入すると発表した。これは現在の地熱発電容量の13倍で、ケニアがすべてのエネルギー源から得ている総発電容量の1.5倍に相当する。
また、アフリカの地熱エネルギー事業に1億5,000万ドル(約150億円)資金提供するというレイキャビク・エナジー・インベストの支援で、ジブチは数年以内に電力のほぼすべてを地熱でまかなうことを目指している。さらに開発を後押ししているのは、世界銀行から一部資金援助を受けている国際機関のアフリカ地溝・地熱開発機構(ARGeo)だ。ARGeoは、地熱開発の初期段階で損失を受けないように投資家を保護して、大地溝帯の地熱エネルギー利用を促進しようとしているのだ。
世界のエネルギー消費の30%以上を占める産業界も、確実で低コストの地熱エネルギーへの転換を始めている。世界的な大手産金会社のリヒール・ゴールドは、パプアニューギニアに56メガワットの地熱発電所を所有し、石油火力発電よりはるかに低いコストで、自社の電力需要の75%をまかなっている。アイスランドでは、レイキャビク近郊に地熱発電設備を5基建設する計画がある。2012年に完成すれば総容量は225メガワットになり、その電力が新設のアルミニウム製錬所に供給される予定である。
再生可能エネルギーである地熱には数十万メガワット規模の開発の可能性があるが、その開発はまだ始まったばかりである。しかし、価格変動が大きく炭素含有率の高い化石燃料に代わるものとして、費用対効果が高く低炭素の再生可能エネルギーに各国の指導者がますます関心を寄せる中、今は利用の少ない地熱発電もこれから一気に主流になるだろう。
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2020年までに炭素排出量を80%削減する計画の一環として、アースポリシー研究所は世界全体の地熱発電量を20万メガワットにすることを目標に掲げている。詳細は『プランB3.0:人類文明を救うために』(Plan B 3.0: Mobilizing to Save Civilization)の第11章から13章(http://www.earth-policy.orgにて無料ダウンロード可能)を参照。
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ウェブサイト:www.earthpolicy.org
【翻訳 A.I. 小林紀子 山田はるみ】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ドイツでは150ものプラントが建設中って、すごいですね。
日本でも、規制緩和などで開発できる状況を作りつつ、「よーし、やるぞー!」という事業者や投資家を呼び込むための仕組み(ドイツでは固定価格買取制度)もいっしょに進めていくことが大事ですね。