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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2011年04月22日

アースポリシー研究所より「今こそ、日本のエネルギーの将来を再考すべき時」 (2011.04.22)

エネルギー危機
新しいあり方へ
 

レスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所が4月7日に、「今こそ、日本のエネルギーの将来を再考すべき時」というリリース文を出しました。

いち早くお届けしたいと緊急和訳チームにお願いして訳してもらいました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

今こそ、日本のエネルギーの将来を再考すべき時

J・マシュー・ロニー

http://www.earth-policy.org/plan_b_updates/2011/update94

マグニチュード9.0の地震と津波が日本の東北地方に壊滅的被害を及ぼしてからほぼ4週間、緊急作業員は、機能を失った福島第一原発の安定化に今でも奮闘している。さらなる放射線漏れを最小化し、全住民の健康を守るために緊急になすべきことを実行するのに加えて、政府は原子力拡大の長期計画を再考し始めている。

海外のマスコミ報道は概して、原子力がもはや一つの選択肢にならないならば、日本は、石炭、石油、天然ガスによる発電を拡大しなければならないと推測している。

しかし、政府指導者たちは、選択肢をこれらだけに限定しなくてもよい。日本の地熱、風力、太陽エネルギーの可能性を見直すと、日本国内の再生可能エネルギー資源は、世界第3位の経済大国の電力を容易に賄えることがわかるだろう。

エネルギー需要の大部分を満たすのに現在輸入に依存している国の脆弱性が、二つの自然災害の影響で鮮明に浮き彫りになった。日本は、原子炉の燃料に用いるウランのすべてを輸入しており、原子力はエネルギー消費の11%を占めている。

そして、日本は、石炭と天然ガスの世界一の輸入国であり、エネルギー利用の21%と17%をそれぞれ占めている。日本は、世界第3位の石油輸入国でもある。石油は、日本のエネルギー利用の46%を占めており、大部分が輸送部門で消費されている。

残りのエネルギー利用は、再生可能エネルギー源に由来するものであり、ほとんどが水力である。全体で、日本は年間およそ1,600億ドル(約13兆3,000億円)を、石炭とウランのすべて、そして、石油と天然ガスのほぼすべてを輸入するために費やしている。

【図中】Oil:石油 Coal:石炭 Natural Gas:天然ガス Nuclear:原子力 
Hydroelectric:水力 Other:その他
【グラフ下】全体で2京2,300兆BTU
【出典】米国電子工業会よりアース・ポリシー研究所

原子力特有のリスク(http://www.earth-policy.org/plan_b_updates/2008/update78)、いくつかの主要な石油産出地域を取り巻く慢性的な政治不安、そして、化石燃料を使い続けた結果として生じる気候の不安定さと公害病を考慮すると、日本の現在のエネルギー経済は、安全からはほど遠い。幸いなことに、大地、風、太陽からのエネルギーで、この図式を劇的に変えることができる。

日本は構造的に活発な環太平洋火山帯に沿って位置しており、およそ200の火山とおよそ2万8,000の温泉のある、世界で最も地熱の豊富な国の一つである。従来の技術を用いると、地熱エネルギーは、8,000万キロワット以上の発電容量を供給することができる。これは、日本の電力需要の半分を満たすのに十分な量である。

しかし、現在利用可能な現代の強化地熱システム(EGS)技術を用いれば、日本の地熱の潜在能力は大幅に向上するだろう。米国地質調査所による米国の地熱資源に関する研究(http://pubs.usgs.gov/fs/2008/3082/)により、EGSは米国の地熱発電の推定の潜在能力を13倍に高めることがわかったことから、可能性が感じられる。

この莫大な資源があるにもかかわらず、日本は、1966年に岩手県で初の実用規模の発電所が稼働して以来、わずか53.6万キロワットの地熱発電容量しか開発してこなかった(www.earth-policy.org.のデータを参照)。どの1年をとっても、地熱発電による供給は日本の電力の1%に満たない。とりわけびっくりするのは、日本の三つの会社――富士電機、東芝、三菱重工――が世界の地熱タービンの2/3を製造している、ということだ。

同様に、日本の膨大な風力エネルギーの潜在能力は、ほとんど利用されてこなかった。2010年の終わりに、日本は230万キロワットの風力発電容量を設置した。これは、日本の70万世帯に電力供給するのに十分な量である。2020年および2030年の公式の目標値は、それぞれ1,000万キロワット、2,000万キロワットであり、2030年の目標値は、日本の現在の電力消費の6%に匹敵する量である。

しかし、米国科学アカデミー紀要に発表された2009年の研究(http://www.pnas.org/content/early/2009/06/19/0904101106.abstract)では、日本の陸上での風力資源は、日本の電力の半分を供給することができるだろうと推定している。利用可能な海上風力発電源を含めると、風力エネルギーの潜在能力は、現在の電力需要を遙かに上回る。

再生可能エネルギーに関する日本のもっとも意欲的な目標は、太陽光発電(ほとんどが屋根にパネルを設置するタイプ)に関するものだ。太陽光発電設備容量における世界的先導国の中でも、2010年には日本で推定90万キロワットが電力網に接続され、全発電容量では350万キロワット以上となった。

2020年までに、日本はこれを8倍に増やし、2,800万キロワットとすることを「2030年までに5,300万キロワット」という目標とともに目指している。この発電容量は日本の1,800万世帯に電力を供給するのに十分であろう。

日本の太陽光発電の最近の急速な成長は、太陽光発電を採用することを強く促進する政策によるものだ。例えば、政府は家庭の太陽光発電システムの導入費用を最大35%まで補助している。また再生可能エネルギーシステムによって家庭から電力網に供給された電力には、電力会社が住居所有者に割増金を支払うという規定(固定価格買い取り制度として知られている)があり、住宅用の太陽光発電をなおさら魅力的なものにしている。

2009年半ばに始まった日本の太陽光発電の買い取り価格は、住民がキロワット時あたりの電気代として通常支払う価格の約2倍である。さらに、国の「太陽光発電ロードマップ(PV2030+)」戦略のもとで、技術を改良し、設置をさらに進めることで、政府は太陽光発電を利用可能な最も安い電気の選択肢の一つにすることを目指している。

太陽光発電は広く採用されつつあるようだが、その一方で、風力と地熱発電は複数の障害によって阻まれてきた。重大な制約のひとつに、さまざまな技術に配分される「エネルギー研究開発・実証」の資金提供の不均衡を挙げることができる。

地熱は2002年以降、政府からまったく研究開発・実証資金を受けていない。風力は年間およそ1,000万ドル(約8億3,000万円)を受けている。まったく対照的に原子力は年間23億ドル(約1,912億円)を得ているのだ。

地理もまた地熱と風力の開発を妨げてきた。最も優れた陸上の風力資源は日本の北部と南部の各県にあるが、需要が最も高いのはこの国の中央部分なのだ。つまり日本の風力エネルギーを十分に利用するためには、電力網及び送電線の拡張が必要だろう。

地熱の場合、潜在的な発電容量のほとんどが国立公園内に眠っており、1970年代に可決された自然公園法のもと利用できないことが明言されている。しかし地熱事業は環境に対して重大なマイナスの影響をもたらさずに開発可能なので、政府はこの政策を再検討しようと考える可能性がある。

地熱と風力エネルギーは、現在の日本において電力需要の何倍もの電力を賄うのに適していることに加え、現在輸送手段に使われている輸入された高価な石油の大部分に取って代わることも可能である。

日本の鉄道利用者数は既に、他の先進国と比べて見事なものだ。現在鍵を握るのは、貨物のトラック運送を電化された鉄道にもっと切り替えること、都市内におけるライトレール(軽量な中小規模の鉄道)や地下鉄の利用を増やすこと、従来の自動車からプラグイン・ハイブリッド車と電気自動車への移行を促進すること、そして電車も自動車もすべてが、主に再生可能エネルギー源により生産された電気によって走行することである。

日本は、破滅的な地震と津波から再生、再建する中で、本質的に危険な原子力と輸入化石燃料にさらに大きく依存するのか、それとも新しいエネルギー路線を描くのかを決めなければならないだろう。

もしこの国が化石燃料と原子力の代わりに再生可能エネルギーに向かうのであれば、それは健康、エネルギー安全保障、そして国民の経済的な幸福に投資することにもなろう。

放射性物質に汚染された空気、水、作物という将来的の危険回避に加え、日本は輸入エネルギーのために支払っている年間数百億ドル(数兆円)もの費用を節約するだろう。それはまたすでに強大な再生可能エネルギー製造業を促進するだろう。2009年には、日本は太陽光発電の製造において中国に次いで第2位だった。そして既に記したように、日本企業は世界の地熱タービンの製造で優位に立っている。

明らかに、日本は放射能の危険をもたらすエネルギー源にも、地球の気候を不安定に陥れるエネルギー源にも甘んじる必要はない。日本は、風力、太陽、地熱について、全面的に取り組むことで、すべての原子力発電所および化石燃料を用いる発電所の計画を取り消し、現存の発電所を置き換え、そして二酸化炭素を排出しない国産エネルギーによって交通システムに電力を供給することが可能なのだ。

(訳注 換算レート:2011年3月31日の終値83.15円)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

[No. 1959] で、「原子力か、化石燃料か」ではなく、「原子力でも化石燃料でもない世界」へ、と書きましたが、こうやってデータでそれが可能であることを出してもらうと勇気百倍ですね!

これからの日本が、これまでと同じ道を進む「プランA」を選択するのか、それとも、これまでとは違う、持続可能な国につながる「プランB」を選択するのか、レスターたちだけではなく、世界中が注目しているのだと思います。

そして、プランAかプランBか、という選択は、日本だけではなく、世界各国が、世界中が直面している課題でもあります。

このプランBについて、レスターの本をもとにしたPBSのドキュメンタリー番組が放映されました。4月末まで、ウェブサイトで見ることができます。こちらのリンクからどうぞ!

For the month of April only, you can watch a streaming edition of the film Plan B on the PBS website.
http://www.earth-policy.org/publications/C130

ちなみにレスターの英語はシンプルで簡潔でわかりやすいので、英語のヒヤリングの練習にもよいですよ〜。(^^;

※メールニュースに掲載されている内容・情報はそれぞれのご判断の上、出所(枝廣淳子の環境メールニュース http://www.es-inc.jp)を添えて、引用・転載くださってけっこうです。ただ、どの情報も「その時点での情報」であって、のちに修正・追加等される可能性がある情報であることをご理解・ご明記いただければ幸いです。

 

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