ちょうど1ヶ月前、新聞に
エネルギー基本計画、原発「重要」の文言削除へ
という記事が出ていました。
パブリックコメント時の案では「基盤となる重要なベース電源」と位置づけられていますが、「重要な」の文言を削除する方向で調整するそうです。調整する理由として「約1万9千件も寄せられた国民の声や、与党内の慎重な意見を反映して表現に修正を加える必要があると判断した」と書いてありました。
パブリックコメントに寄せられた声に応えたのかと思いきや、今回発表された政府原案のくだんの箇所を見てみると、あれれ?
「原子力(前略)エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である」
「重要な」が入ったままです。国民の声を反映するのをやめたのでしょうか???
(ちなみに、「ベース電源」と「ベースロード電源」という表記の違いがありますが、両方とも、電力需要の変化に対応して、ピーク時に必要量を発電する「ピーク電源」に対して、「安定した一定の出力で発電を行うもの」の意味で、同じ意味だと考えられます)
今回の政府原案には、少なくとももう1つ、気になるところがあります。
1.一次エネルギー構造における各エネルギー源の位置付けと政策の基本的な方向
(2)原子力
さらに、原子力利用に伴い確実に発生する使用済燃料問題は、世界共通の課題であり、将来世代に先送りしないよう、現世代の責任として、国際的なネットワークを活用しつつ、その対策を着実に進めることが不可欠である。
と書いてあります。パブリックコメント時の案では、この箇所は以下のようになっていました。
さらに、原子力利用に伴い確実に発生する使用済核燃料は、世界共通の悩みであり、将来世代に先送りしないよう、現世代の責任として、その対策を着実に進めることが不可欠である。
今回挿入されている「国際的なネットワークを活用しつつ」というのは、何を意味するのか? 何の可能性を盛り込んでおくために入れられたのか?
かねてからモンゴルに核廃棄物を運び込むという話が取りざたされてきました。もしかして、そういった可能性を活かしておくため、なのでしょうか?(いま何かが決まっているわけでなくても、のちの官僚が「エネルギー基本計画に書いてあるでしょう、その線に沿ってやっているだけです」といえるように?)
国際的なネットワークを活用すべきだ、というパブリックコメントがあって、それを反映したのでしょうか? それとも、国民からのコメントにはなかったものを、パブコメ後の最終原案にするりとすべり込ませたのでしょうか?
パブリックコメント時の案から最終原案へ、だれがどのように議論・判断して、この形になっているのかも不明であり、そして、最終原案に対して国民は公のプロセスとしては説明を要求する発言の権利も持っていない(与党の了解を経て閣議決定されるため、自民党議員に意見を伝えることはできます)ということから、こういった基本計画を策定するプロセスそのものへの疑問・不信感が生じます。
エネルギー基本計画の最後には、国民へのコミュニケーションや対話の重要性が述べられていますが、基本計画を作るプロセス自体を、もっと進化させていかなくてはと思います。
エネルギー基本計画の政府原案はこちらにあります。
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/kihonkeikaku/140225_1.pdf
パブリックコメントに向けて出された当初の案はこちらです。
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonseisaku/13th/13th-1.pdf