環境省は2014年5月23日、2013年度に国内の湿地のうち湿原及び干潟が有する経済的な価値を評価した結果を発表しました。
2010年に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で、TEEB(生態系と生物多様性の経済学)の最終報告書が公表されるなど、生物多様性や生態系サービスの価値を経済的に評価することの重要性が注目されています。
様々な主体が生物多様性及び生態系サービスの価値を認識し、その保全や利用に際して適切な意思決定が行われることを促進するため、環境省でも経済価値評価の検討を進めており、今回、日本の生態系の中でも特に近年の損失が大きい生態系である湿地について、経済的な価値の評価を実施したものです。
今回の評価では、様々な湿地タイプのうち湿原及び干潟を対象とし、全国の湿原(110,325ヘクタール)及び干潟(49,165ヘクタール)が有する生態系サービスの経済価値評価を行いました。
○調整サービス
気候調整(二酸化炭素の吸収)約31億円
気候調整(炭素蓄積)約986億円―約1,418億円
水量調整 約645億円
水質浄化(窒素の吸収)約3,779億円
○生息・生育地サービス
生息・生育環境の提供 約1,800億円
○文化的サービス
自然景観の保全 約1,044億円
レクリエーションや環境教育 約106億円―約994億円
○供給サービス
食料 約907億円
○調整サービス
水質浄化 約2,963億円
○生息・生育地サービス
生息・生育環境の提供 約2,188億円
○文化的サービス
レクリエーションや環境教育 約45億円
となりました。
単純合計すると、湿原は年間約8,391億円~9,711億円、干潟は年間約6,103億円の生態系サービスを生み出していることになります。
この評価は、湿原及び干潟が有する価値のごく一部を既存の調査研究事例から整理したものであり、湿原及び干潟の価値の全てを評価したものではありません。今後の調査研究の進展による改善が望まれるとされていますが、生態系の価値を、経済界や産業界、一般の人々に経済的な価値として示すことは、ひとつの重要な取り組みだと思います。
本来、生態系や自然は代替不可能な貴重なものであり、経済的価値をつけることはできないという考え方もあります。しかし、経済活動を通じて大きな影響を与えている人々にも理解・評価してもらい、保全がいかに大事かをわかってもらうには、貨幣換算してその価値を示さなければならない、という側面もまた事実です。