数日前の日経新聞に、商用車世界首位のドイツのダイムラーが「トラック予備部品の3Dプリンターでの生産を開始」という記事がありました。幸せ経済社会研究所の読書会で5月に取り上げた『限界費用ゼロ社会―<モノのインターネット>と共有型経済の台頭』で、3Dプリンターのもたらす大きな変革とその進みつつある実例にびっくりしたのですが、経済の主流でもこういった動きが加速していくのでしょうね。
3Dプリンターがあれば、世界のどこでも、オンラインで必要な"設計図"をダウンロードして、「必要なものを、必要なだけ、必要な時に、必要な場所で」、製作できるようになります。輸送も在庫も不要になりますから、これまでの生産のしくみと比べると、環境負荷を大きく減らせると期待しています。
また、『限界費用ゼロ社会』の説明で「なるほどなあ!」と思ったのは、従来型の生産は「Subtractive」(引き算方式)だったのが、3Dプリンティングでは「Additive」(足し算方式)になる、ということ。どういうことかでしょうか? これまでのやり方だと、たとえば、鋼板を作り、そこから金型で切り出して、さらに研磨などして、必要な部品を作ります。その製造工程のあちこちで、端材や研磨くずが出ます(多くの産業ではそれらをリサイクルするしくみをくふうしています)。
他方、3Dプリンティングでは、フィラメント(印刷にとってのインクにあたるひも状の樹脂などの原材料)のプリントを重ねていくことで、必要な部品を作ります。切り出すのではなく、重ねていく、足していくやり方です。こうすることで、原材料のムダを大きく減らすことができます。『限界費用ゼロ社会』には「必要な原材料は10分の1ですむ」とありました。
そのうえ、3Dプリンティングでは「1コからでも作れる」ことが大きな魅力となります。「大量に生産しないと高くなってしまう」これまでのやり方ではとは異なるしくみだからです。冒頭の日経新聞の記事の最後には、「顧客はオンラインで部品のコードを入力すれば消耗品などを簡単に注文できる。10年前の部品でも対応可能という」とありました。いまはメーカーもいつまでも金型や生産ラインを残しておくことはできないので、交換部品の保持期間を決めていますが、その必要もなくなるとしたら、「部品の生産が終わっているから」泣く泣く修理をあきらめていた、"もったいない"ムダも減らせそうですね!
これまでの「切り出し型」の製造方式から、「重ね塗り型」の製造方式に変わることで、環境負荷は実際にどのように変わるのでしょうか?
せっかくの新しい技術が本当に地球にも役に立つように、どこが問題になりそうか、何を気をつけたら良いのか、今のうちに知っておきたいですよね。LCA(ライフサイクルアセスメント)の専門家にぜひ計算してほしい!と願っています。