ホーム > 一日一題 > トランプ政権、パリ協定から離脱

エダヒロ・ライブラリー一日一題

トランプ政権、パリ協定から離脱

2017年06月03日

トランプ米大統領がパリ協定からの離脱を発表しました。「ショックですか?」と聞かれますが、トランプ大統領が誕生した時点でわかっていたことでもあり、世の中は行ったり来たりしながらある方向に進んでいくと思っているので、落ち込んだりがっかりしたり、ということはないです。ただ「米国の心ある人たちの幸福度がまた下がりそう。温暖化に真剣に取り組んでいる米国企業や自治体がやりにくくなって可哀想だなあ」と思いますが......。

パリ協定からの離脱は、発効から4年後以降と決められているので、実際の米国の離脱は、次の大統領選挙のあとになります。それまでにも温暖化の被害はあちこちで顕著になり、脱炭素技術が次の時代の競争力の源泉になることが明らかになっていくでしょう。米国内でも大きくエネルギーシフト・脱炭素化をする企業や地域が増えているでしょう。次の大統領選の争点になるとしたら、パリ協定離脱派が不利になると思うのですが、どうでしょうか。

4年後はさておき、今回の離脱発表は間違いなく、米国の権威や世界からの信頼を失墜させました。現在は中国が世界第1位の温室効果ガス排出国ですが、これまでの累積を見ると、米国が世界で最も温室効果ガスを出してきています。その責任のかけらも感じていない振る舞いです。

パリ協定は目標未達の罰則もないため、私はトランプ政権の米国がパリ協定に残ったまま何もせずに足を引っぱる可能性もあると思っていました。そんなことをされて、頑張ろうとしているみんなの士気を下げるよりも、「みんなの共通の敵」になって、温暖化に取り組むべきだと考えている国や地域、企業、市民などみんなの結束を強めてくれるほうがマシ(?)かもしれません。

トランプ大統領のパリ協定離脱の発表を受けて、欧州の国々やカナダなど政府から非難の声明がだされています(日本政府は出さないのでしょうか?)。企業や自治体からも心強い発言や声明が相次いでいます。6月1日付のニューヨークタイムス紙の記事から、いくつか紹介しましょう。

IBMは、パリ協定への支援を再確認すると共に、大統領が演説で「パリ協定は、米国の労働者と経済にとって悪い取引だ」と述べたことに反論しています。「パリ協定は、すべての参加国が、気候変動に対して最大限の努力をすることを求めているが、その努力は各国が決めるものだ。IBMは、パリ協定の参加者として話し合いのテーブルについているほうが、外にいるよりも、結果をリードしやすいと信じている」。

GEのイメルト氏はツイッターで「大統領の決定にがっかりした。気候変動は現実のものだ。今や政府に頼ることなく、産業界がリードしなくてはならない」と発言しています。

そして、大統領の演説で「フランスのパリよりも先に考えることが大事だ」と名前を挙げられたピッツバーグの市長はツイッターでこう応じました。「私たちは絶対にパリ協定の指針を守りますからね、私たちの市民のため、私たちの経済のため、そして未来のために」。

 

このページの先頭へ

このページの先頭へ