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エダヒロ・ライブラリー一日一題

「ピーク・オイル」論の"3つの段階"とは?

2018年01月09日

1/7付の日経新聞に、「石油需要 いつ頭打ち 20~30年代? EVシフトで分析相次ぐ」という大きめの記事がありました。石油は世界の動力源として非常に大きな役割を果たしており、石油産業は世界経済に大きな影響力を有しているため、、「世界の石油使用量はピークに達してそのあと減っていく」という「ピーク・オイル」は、つねに大きな関心事でした。

ただ、その「背景・理由」は変わってきています。この記事では、「ピーク論の歴史は古いが、その根拠は原油がいずれ枯渇するという供給面の制約だった。今回のピーク論はもっぱら需要面からきている」とありますが、私は「ピーク・オイル論には3つの段階」がある、と考えています。

「ピーク・オイル論1.0」は、おなじみの「石油は枯渇する」というもの。再生不可能資源(少なくとも人類の時間軸では)である石油は、掘り尽くすと使えなくなります。「可採年数」(あと何年掘れるか)という言葉で語られる、「供給側」の制約です。今でも、地質学者を中心に、「石油の生産量はすでにピークに達している」とする研究者と、「シェールオイルも開発されており、生産量はまだまだ増やせる」という研究者が激しい議論を交わしています。

私の言うところの「ピーク・オイル論2.0」は、「温暖化への懸念のため、石油が地下に残っていようといまいと、掘り出せなくなる」というものです。1.0が「地球の供給側」の制約とすると、2.0は「地球の吸収側」の制約です。地球には毎年ある量の炭素を吸収する力がありますが、人間の排出量がそれを大きく超えているために温暖化が生じています。温暖化を進めないためには、地球が自然に吸収できる量まで排出量を下げる必要があります。そこから、「石油があっても燃やせない」という制約が大きく出てきたのです。

そして、「ピーク・オイル論3.0」は、「石油需要のピーク」。1.0や2.0が地球の制約だったのに対し、こちらは人間の嗜好の変化によるものです。EVや自動運転、シェアリングエコノミーの広がりによって、石油の需要そのものが減っていきます。この記事では、石油需要のピークは20年代か30年代か、という議論を紹介しています。いずれにしても、「あっという間」にやって来ることは間違いないでしょう。

ちなみに、「ピーク・オイル」を最初に提唱したの米国の地質学者ハバートは、ピーク・オイルを「石油の採掘ペースが最大になるタイミング」としています。この定義であれば、その理由が、地質学的な枯渇だろうと、気候変動への懸念だろうと、消費者の嗜好の変化による需要減少だろうと、関係ないですね。

レスター・ブラウン氏がよく言っていた言葉を思い出します。「石器時代が終わったのは、石を使い尽くしたからではない」。同様に、石油時代が終わるのも、ですね!

 

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