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エダヒロの本棚

地球のなおし方――限界を超えた環境を危機から引き戻す知恵
著書
 

ドネラ・H・メドウズ+デニス・L・メドウズ+枝廣淳子(共著)
ダイヤモンド社

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デニス・メドウズ氏他著の『成長の限界 人類の選択』で示された「地球はすでに限界を超えている」というメッセージをデータとともにわかりやすく伝えると同時に、持続可能性の分野ではおそらくはじめてのシステム思考の入門書です。地球環境の現状を嘆くのではなく、理性的に問題の構造を理解し、真の解決策を考えていくアプローチを知ることができます。

あとがき

本書は、二〇〇五年三月に刊行したデニス・L・メドウズ著の『成長の限界 人類の選択』の翻訳を進めているあいだに、「ぜひ作りたい、ぜひ出したい!」という思いを募らせ、デニスを説得し、編集者に相談して、進めてきたものです。こうして思いをカタチにすることができ、こんなにうれしいことはありません!
デニスとの出会いは、「バラトン・グループの合宿に来ませんか?」というメールをいただいた二〇〇二年の春。デニスとドネラ・メドウズさんが二三年前に立ち上げたバラトン・グループでは、毎年秋にハンガリーのバラトン湖畔の小さなホテルを借り切って、二十数か国からの約五〇人のメンバーで一週間の合宿をします。朝から夜まで議論するなかで、数多くの共同プロジェクトが生まれます。私もグループメンバーのアラン・アトキソンの『カサンドラのジレンマ』(PHP研究所刊)を翻訳して日本に紹介するなど、「一年三六五日、世界のどこかでメンバーが共同プロジェクトを進めている」バラトン・スピリットをわくわくしながら少しずつ実行してきました。
デニスが世界中に衝撃を与えた『成長の限界』から三〇年後の本の準備を進めている――合宿でそう聞いた私は、「日本でも読んでもらいたい!」とデニスにかけあい、出版社に企画を出し、『成長の限界 人類の選択』の翻訳出版を実現することができました。
この本の翻訳を進めながら、「デニスたちの大切なメッセージをもっと広く、たくさんの人々に伝えたい。デニスたちにとってはいわずもがなの前提となっている『システム思考』の考え方を、日本の人々にも使えるようになってほしい」と思う気持ちが強くなってきました。
残念ですが、地球環境問題は改善に向かう前に、まだしばらくは悪化していくでしょう。そのときに、パニックに陥ったり、絶望したり、諦めたりして、解決策を模索し、実行していく勇気と知恵を失ってしまわないために、問題の現象だけではなく仕組みを冷静に理解すること、「悪いのは人ではなく、システムなのだから、システムを直せばいい」と人や自分を責めないスタンスを持つこと、さまざまな要素がつながり影響しあっている現状や問題の全体を考えて、「昨日の解決策が今日の問題を起こす」にならない真の解決策を考えていくことが、ますます重要になってくると信じています。その「理性と心のよりどころ」となるものがここにある!と思ったのです。
ダイヤモンド社の石田さんに「メドウズさんたちのメッセージのエッセンスをわかりやすく伝え、システム思考の説明を補足した入門書を作りたい」と相談したところ、「ぜひやりましょう!」と前向きなお返事をいただき、喜び勇んでデニスにメールを打ちました。「君はわれわれのメッセージをきちんと理解してくれていると信じているから、大変だとは思うけど、やってみるなら応援するよ」との返事に小躍りし、企画と執筆に取りかかりました。『成長の限界 人類の選択』をベースに、デニスやドネラさんの書かれたものやバラトンでのシステム思考のワークショップ、自分の思いや考えなどを盛り込みました。詳しいデータやシミュレーションの前提などについては、同書をご覧ください。
本書の意義に賛同して日立製作所と日立環境財団の応援もいただくことができ、とてもうれしく思っています。
今日、多くの人が環境問題の重要性を認識しており、どうすればよいかもわかっていて、そのための技術もあります。必要なのは、実際の行動を変えていくこと、多くの人々に働きかけていくことです。「自分を変え、まわりを変えていく人」のことを「チェンジ・エージェント(変化の担い手)」と呼びます。本書の執筆と平行して、たくさんの人や組織にシステム思考をはじめとする変化のスキルやメソッドと勇気を提供したいと、変化のサポート専門会社「チェンジ・エージェント(www.change-agent.jp)」を立ち上げました。「変化し、進化しつづけることで真に強い企業になる」ことを目的とした企業研修事業のほか、デニスたちの開発したシステム思考のトレーニングの実施、講演などを行っています。本書はこの「思いはでっかい」小さな会社の最初のプロジェクトの一つです。
デニス、ドネラさん、石田哲哉さん、そして「一人でも多くの人に届けたい」という思いをくみ取って、素敵な装丁やわかりやすく素敵なイラストを作ってくださったデザイナーの斉藤重之さん、本当にありがとう! 本書が真の解決策に向かう変化のうねりを生み出す一助となることを、本書をいっしょに作ってくれたチェンジ・エージェントの同僚の小田理一郎ともども心から願っています。

二〇〇五年七月吉日

枝廣淳子

 

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