写真やイラストが多く、まるで写真集のようです。美しい造りの本ですが、映像のパワーでこれまで「不都合」だから、と隠されてきた、または目を覆ってきた「真実」を淡々とパワフルに伝えてくれます。そして最後に、「私たちには何ができるか。どうすべきか」を伝え、「もう手遅れだ」ではなく、「まだ間に合う。変えていこう!」という力強いメッセージと希望を与えてくれる本です。ぜひ手にとってご覧ください!
訳者あとがき
私がアル・ゴア氏の映画について知ったのは、持続可能性の研究者・活動家の国際ネットワーク「バラトングループ」のメーリングリストで「試写会、すごくよかった。満場の観客がスタンディング・オベーションだったよ」と盛り上がった時だった。
自分でも温暖化を最も優先順位の高いテーマとして講演や執筆等の活動をし、精鋭翻訳チームとともに世界の温暖化に関わる最新情報をメールニュースやウェブサイトで伝えてきた私は、温暖化が映画になるという時代の風を感じ、「ゴアさん、打って出たのだな」と思ったのだった。
6月の米国出張の折に、アースポリシー研究所のレスター・ブラウン氏にも勧められて見にいき、涙がこぼれるほど心から感動した。
米国各地の書店に平積みにされている書籍『不都合な真実』を見ながら、「日本ではいつごろ出版されるのかな、だれが訳すのかな、いいなー」と思っていた私に、翻訳のチャンスを下さったランダムハウス講談社の齋藤光弘氏、CMEコデックス野澤汎雄氏、卜部ミユキ氏、(財)地球・人間環境フォーラム平野喬氏に感謝している。
今回の翻訳はまったく新しいプロジェクトとなった。大変短い期間での翻訳であることに加えて、温暖化の専門用語から生物名、南極点のポールの姿まで、調べなくてはならないものが山のようにあったからである。
私が原書を見ながら読み上げる和訳を高速で正確に入力してくれた阿部泰子さん、専門用語を教示下さった国立環境研究所の森口祐一氏、江守正多氏、WWFジャパン、安仁屋政武氏、環境省、各国大使館のほか、リサーチ依頼に力強く応えてくれた佐藤千鶴子、庄司晶子、長澤あかね、岡田量裕、飯田夏代、翻訳の質の確保を手伝ってくれた中小路佳代子、ランディ・ヘルテン、小野寺春香の諸氏のおかげで、ゴア氏のメッセージを正確にできるだけわかりやすく伝えるとともに、巻末の参考情報に日本語サイトも掲載できたことに心から感謝している。
訳文の練り上げを手伝ってくれた中小路佳代子さん、がっちりとスクラムを組んで支えてくれた同僚の小田理一郎、事務所の増田里江、星野敬子、いつものように明るく力強く軽々と伴走してくれた関美穂に心から感謝している。
「温暖化はわかるけど自分の生活は変えたくない」と言う人も多い。企業経営者から「コストや競争力もあるから、温暖化対策だけに力を入れるわけにはいかない」と聞くことも多い。しかし、本書からも明らかな温暖化の現実は揺るぎなく、目を閉じても消え去るものではない。現状を前提とするのではなく、あるべき姿を出発点として考えなくてはならない。そういう意見は「不都合」かもしれない。しかし「真実」である。
本書が、「不都合な真実」に真摯に向き合い、今日の便利さや利益ではなく将来世代も含めた視野で考え、ひとりひとり、組織、地域、社会、国、国際社会の動きを変えていく強力な原動力になることを心から祈っている。
2006年11月23日 誕生日に 枝廣淳子