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エダヒロの本棚

私たちの選択 ―温暖化を解決するための18章
翻訳書
 

アル・ゴア(著)、枝廣淳子(翻訳)
ランダムハウス講談社

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3年前に出された『不都合な真実』は言ってみれば問題提起編でしたが、今回の『私たちの選択』は、問題解決編です。温暖化問題の解決策について、世界の最新の知見を集め、詳しく「私たちの選択」について説明しています。温暖化問題はエネルギー問題でもあります。低炭素型のエネルギー源や、エネルギー効率化、さらにスーパーグリッドまで幅広く論じます。本書をテキストに、社内・業界向け講演会や勉強会もお薦めです。ぜひご活用下さい。

訳者あとがき

待ちに待ったアル・ゴア氏の『不都合な真実』に続く新著をお届けできることをとてもうれしく思う。
『不都合な真実』が世界に及ぼした影響は、言うまでもなくとても大きい。この3年間に、人々の意識は高まり、さまざまな取り組みが始まり、「温暖化問題」は国内・国際政治の主要な議題に位置づけられるようになった。
『不都合な真実』は、言ってみれば「問題提起編」である。それに対して「ではどのように解決したらよいのか?という「問題解決編」が待たれており、前書刊行後、ゴア氏は何度もソリューション・サミットを開いてきた。
温暖化の「科学」についてはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)いう国際機関がある。世界中の科学者が、温暖化の原因や影響についての多様な研究を集め、分析・精査し、科学界の共通認識をまとめていく場だ。
前書以上に短い納期での翻訳作業を進めながら、「ゴアさんがこの本でやろうとしていることは、“ひとりIPCC”なんだ」と思い至った。
温暖化の「科学」についてはIPCC があるが、さまざまな解決策や技術、その実現性や有効性、課題や解決策を導入するための障壁といった「問題解決」に関しては、IPCC のような国際機関はいまのところないのだ。ゴア氏が多くの科学者やスタッフの力を借りて、問題解決に関する世界中の知見や研究を集め、分析し、評価した集大成が、本書『私たちの選択』なのである。
本書に示されているように、解決のための技術はさまざまな分野ですでに存在している。あとはそれをどのように、政治的、心理的な障壁を乗り越えて広げていくか、である。温暖化懐疑論者の仕組んだ情報攪乱キンペーンが人々の意識を左右するというくだりが本書にも出てくるが、人々の意識や行動を問題解決に向けてどう変えていけばよいのか、既得権益を守るための金にまかせた攪乱運動に対抗できるのは何なのか──3年前よりも、土俵は実戦的なものとなってきている。戦いの舞台は、政策、マーケティング、経済的インセンティブ、社会的受容、心理学といった領域に入りつつあるのだ。
日本には、気候の危機の解決に資する優れた技術がたくさんある。人々の意識も高く、まじめな国民性を有する国だ。その日本でも、CO2は残念ながら増え続けている。一方、新政権となって、既得権益に引っ張られるのではなく、「すべきこと、正しいこと」への意識と行動が高まり、「空気が変わり始めた」ことも実感できる。
本書が、温暖化という切迫した危機はもちろん、この温暖化という症状を生み出している根源的な問題──「有限な地球の上で無限の成長を続けようとすること」にしっかり向き合い、私たちの社会や経済をいかに変えていくかという本当の課題に向けて、さらなる気づきや変化につながる一助となることを、心から祈っている。
本書は、原書に忠実に翻訳を行った。翻訳協力チームの精鋭メンバー、コーディネータの佐藤千鶴子さん、全般にわたって質の確保を共働してくれた中小路佳代子さん、ランディ・ヘルテンさん、該当部分に目を通し、質問に答えを寄せてくれた専門家の方々、オフィスで温かく見守り支えてくれたスタッフ、ランダムハウス講談社の編集者大森春樹氏に、心からありがとう!
本書があらゆる「不都合な真実」を超え、正しい「私たちの選択」をスピーディに行い、実践していく日本と世界のために役立つことを祈って。

2009 年11月23日(『不都合な真実』のあとがきからちょうど3年後の誕生日の日に)

枝廣淳子

 

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