現在、日本を含め世界中で「幸福度など経済成長以外のものを指標として求める動き」などが起こっています。さまざまな意味で「このままではだめだ」「何か違う」という思いがわき起こっている時代なのでしょう。
本書はそういった問題意識をもとに、そもそもの「経済成長」の歴史的背景や経済成長を考え直す代替的な枠組みや指標、これから時代の見通しなどについて、この分野の世界的な第一人者であるアラン・アトキソンによるレポートをお伝えし、最後に、今後日本や世界がどこへ向かっていくべきかを考える上で重要だと思われるいくつかの問題提起をしています。
「何が何でも経済成長を」という経済成長至上主義から脱却し、経済成長の実態や構造、そこから生み出されているものについて、じっくり考え、代替案を考えていくために本書が少しでもお役に立てることを願っています。
おわりに
さまざまな意味で、「このままではだめだ」という状況が広がっている。その根本的な原因は、「有限の地球の上で、無限の経済成長を続けること」ではないか。
そういった問題意識から、日本を含め、世界のあちこちで、「脱成長」「反成長」「幸福度など経済成長以外のものを指標として求める動き」などが起こっている。
本書では、そもそもの「経済成長」の歴史的背景やパラダイム、そして経済成長のパラダイムに代わるもの、経済成長を考え直す代替的な枠組みや指標、今後の時代の中での意味合いと見通しなどについて、この分野の世界の第一人者であるアラン・アトキソンによるレポートをお伝えし、最後に、それを踏まえた上で、日本や世界がどこへ向かっていくべきかを考える上で重要だと思われるいくつかの視点を述べた。
「何が何でも、どんなものでも、経済成長が必須」という経済成長至上主義から脱却し、経済成長について、その実態や構造、そこから生み出されているものについて、じっくり考え、必要があれば代替案を考えていく作業は、世界でも日本でも、まだ緒についたばかりである。
経済成長が「手段」であるのと同様、「脱経済成長」「経済成長の代替」も手段である。目的は「だれもが(未来世代も含め)幸せに生きていける社会を創ること」ではないだろうか。その目的は変わらないが、時代が変わり、地球の状況と私たちとの関係性が明らかになるにつれ、手段は当然変わっていくだろう。
人類の共有ビジョンである「だれもが(未来世代も含め)幸せに生きていける社会を創ること」に向けて、どのように変化を創りだしていくことができるのか、その目的に向かって幸せ経済社会研究所の活動を展開していきたいと考えている。意見や思いの重なるところがあったら一緒に進めていけたら幸甚である。また本書がみなさんの胸の中にちいさな「!」や「?」を生み出せたとしたら、著者としてこれ以上うれしいことはない。
本書の刊行に際しては、すばらしいレポートを作成してくれたアラン・アトキソン、アランのチームメンバーであるハル・ケイン、キャサリン・ケイジー、ダイアナ・ライト、レポートの翻訳を担当してくれた小野寺春香、小林紀子、野村麻衣子、新津尚子、中小路佳代子、長澤あかね、佐藤千鶴子の各氏、武田ランダムハウスの編集者・大森春樹氏に深く感謝申し上げる。
枝廣淳子