『レジリエンスとは何か~何があっても折れないこころ、暮らし、地域、社会をつくる』の出版を記念し、日本で初めての「レジリエンス」シンポジウムを4月28日に開催しました。
シンポジウムでは心理・教育・防災・地域づくり・温暖化などさまざまな分野でレジリエンスに取り組んでいるご覧の研究者や実践家をお招きし、まず、ご担当の分野の取り組みとレジリエンスに関するお考えについてお話しいただきました。
(写真左から)
【教育の分野】 深谷 昌志 氏[東京成徳大学名誉教授]
【国土強靭化の分野】藤井 聡 氏[京都大学大学院工学研究科教授、京都大学レジリエンス研究ユニット長、
第2次安倍内閣・内閣官房参与]
【地域の分野】 榎本 英剛 氏[NPO法人トランジション・ジャパン共同創設者、トランジション藤野 発起人]
【温暖化の分野】 白井 信雄 氏[法政大学教授(サステイナビリティ研究所専任研究員)]
発表から共通点として考えられることとして、教育においても、地域においても、また国の防災や温暖化対策においても、現実に目を向けて、自分もしくは自分たちで主体性を持って考えることが求められている時代であることが挙げられました。
後半のパネルディスカッションでは、なぜこれまでレジリエンスが必要とされる状況ではなかったのか、また「自分の足で立つ」必要がなかったのはなぜなのか。そして今、その必要性が出てきたときにレジリエンスを高める、「自分の足で立つ」ためには何があればいいのかを考えていきました。
ゲストスピーカーの皆さんからは、あらゆる面で他者に依存してきたことへの代償、企業でも地域でも、短期的な仕組みでものごとを考えてしまう時間軸の捉え方など、いくつかの問題点が指摘されました。ひとつだけの価値観にとらわれたり、効率や利益を重視する傾向も要因の一つと考えられます。
また、記憶力重視型の学歴社会の時代から、問題解決型の能力が求められている時代に移行していることを踏まえ、各自が自分の人生の目標をもち、もしうまくいかなかったらゴールを変えたり再度トライしてみたりといったさまざまな可能性を感じられることが大切な時代になったという教育分野の事例が挙げられましたが、これは以前はよいと考えられていたシステムが、現代ではうまくいかなくなっているシステムの現れともいえるでしょう。
レジリエンスとはシステムがもつ特性のことを指します。人・組織・地域・地球など、複数の要素がつながったり、影響しあうことで一つの目的や機能を動かしていくシステムにおいて、レジリエンスを高めるにはどうしたらいいのでしょうか。
トランジションタウンを担う榎本氏は「自分の足で立つことは楽しいし、そのことを体験する場が必要」とその解決の糸口をコメントしてくださいましたが、自分でもできるという自己肯定感や創造力、地域や組織のネットワーク力、選択肢の多様性、長期的な視野での適応策の構築などが今後のキーワードになることを、あらためて確認しました。
約100名の方にご参加いただいた今回のシンポジウム。
レジリエンスを考えていく上で、大きな一歩を踏み出す機会となりました。
何かあってもポキッと折れてしまわないように、引き続き幸せ経済社会研究所では持続可能性と幸せにつながるレジリエンスについて考えていきます。
☆レジリエンス向上委員会のサイトではレジリエンスに関する情報発信を行っていきます。ぜひご注目ください。