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2023

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May
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調査とワークショップで「地域経済の漏れ穴」を塞ぐ! 宮城県気仙沼市での取り組み

2023年05月25日

イーズでは、産業連関表や買い物調査といった「地域経済の漏れ穴」を確認する調査と、その打ち手を地域の皆さんと考えるワークショップを、宮城県気仙沼市をはじめ、各地で実施しています。こうした地域を巻き込んだ取り組みについて、地域のご担当者はどのような感想を持っているのでしょうか? 今回、気仙沼市産業部産業戦略課主幹の社幸一さまにお話を伺いました。

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======================= <基本情報> =======================

気仙沼市について

  • 気仙沼市は、宮城県の北東端、三陸沿岸の中心に位置し、東京駅からは最短で3時間25分の距離(東京~一ノ関~気仙沼)。
  • 人口は58,753人(20232月末時点)
  • 世界三大漁場の三陸沖に近く、豊富な水産資源に恵まれていることから、水産業及び水産加工業が盛んな土地柄

イーズが気仙沼市で担当した事業について

  • 産業連関表の作成(2021年度)
  • 買い物調査(2021年度)
  • 事業者と消費者を対象としたワークショップ(2021年度・2022年度)

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まず「地域経済の漏れ穴」を把握するための調査をイーズに依頼することになった背景を教えてください。 

 以前から気仙沼市として、「人口減少や少子高齢化が進む中で、持続可能な地域を作るにはどうしたらよいのだろうか?」という問題意識を持っていました。その際、観光などによって地域外からお金を獲得することはもちろん、地域内での調達や消費を増やして域内循環を拡大する取り組みが重要であると考えていたのですが、そのために何をすれば良いかを検討する日々が続いていました。
 そうした中、2019年5月に、有限会社イーズ代表の枝廣淳子さんの講演(「域内の富を逃がさない経済循環の作り方」)が気仙沼市で行われました。その中で言及されていた「漏れバケツの穴を塞ぐこと(地域内で経済を循環させることで、お金が地域外にもれないようにすること)」が上記の課題の解決に繋がると考えました。そこで、「気仙沼市で調査を行いたい」とイーズに打診し、地域経済の把握を目的として、産業連関表の作成と買い物調査を行うことになりました。

産業連関表(事業者間のお金の流れを数値化するためのツール)を作成しての感想を教えてください

 気仙沼市の現状を把握するために、「詳細に調べてほしい」とお願いしたほか、作成後も「結果を分かりやすく示すためのツールを開発してほしい」「産業連関表の読み方を教えてほしい」といったリクエストに応じてもらいながら、産業連関表を作成することができました。
 宮城県の産業連関表からはわからない、気仙沼市の特徴を踏まえた産業連関表ができたことがよかったです。 

産業連関表の作成後に行った事業者とのワークショップについて教えてください。

 ワークショップは対象とする産業などを変えながら、計4回行いました。ファシリテーターは枝廣淳子さんです。
 ワークショップを行ったことによって、「産業からの地域外へのお金の漏れ穴」についての意識付けのきっかけをつくることが出来ました。ワークショップに参加するまで、「漏れ穴を塞ぐ」という切り口があることを知らなかった事業者がほとんどだと思います。産業連関表を作っただけで終わらせずに、問題意識を醸成させるきっかけを作ることが出来ました。
 また、産業連関表があることで「この産業は、市内でもっと大きな割合を占めると思っていたけれども、そうでもなかった」など、イメージと実際のデータとの答え合わせが出来ました。これは気仙沼市独自の産業連関表があるからこそわかったことです。
 ただ、産業連関表について事業者に理解してもらうことには、とても苦労しました。会社として事業の方向性を決めるのには時間がかかることもあり、全員そろってすぐに「産業連関表をベースに漏れ穴を議論していこう!」とアイデアを出して、実行するプロセスまでつなげるのは難しいようでした。まずは産業連関表を使って、「漏れ穴を塞ぐ」という考え方を理解してもらうところからスタートして、時間をかけてアクションにつなげていく必要があると考えています。

産業連関表の作成はゴールではなく、議論のきっかけということですね。今後は、事業者に「漏れ穴を塞ぐ」という考え方が広がることで、少しずつアクションが生まれることを楽しみにしています。

次に買い物調査について教えてください。買い物調査は、市民のみなさんが「市内で買い物をしているのか」「地元の商店で買い物をしているのか」などを調べることで、家計からのお金の漏れ穴を把握する調査ですが、調査と消費者を対象にしたワークショップを行って感じられたことはありますか?

 買い物調査後のワークショップもファシリテーターは枝廣淳子さんにお願いしました。対象は、商店街の方や、市内で活動されている団体の方、子育て中のお母さんです。ワークショップは買い物調査の結果を見て、意見交換をしてもらうところからスタートしました。
 買い物調査は、結果を見たときに「ああ、なるほど!」という反応が多く、その後の議論にスムーズにつながりました。毎日の「買い物」がテーマなので、市民のみなさんにも共感しやすく、色々なアイデアがでたことが鍵だと思います。ワークショップの後、お店のお客さんや知り合いなどに、「どこから買い物に来ているのか」などを、独自に調べてくれる方もいるなど、とても活発でした。
 議論を進める中で、「地元の商店街で買い物をしたいと思っても、商店街のお店のことを知らない」「じゃあ、どうしようか」と話が進み、子育て中のお母さんを中心に、地元の商店街をまわる「買い物フィールドワーク」が始まりました。これまでに、市内の3つの商店街で買い物フィールドワークを行っています。

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ワークショップからフィールドワークが始まったのはすごいですね!

 買い物フィールドワークという具体的なアクションにつながったのは、アイデアが出やすいことの他に、取り組みの規模が「自分の買い物の仕方を変える」という小さいこともあると思います。「スーパーで買い物をしている人が多い」という結果を見れば、みんな「そうだよね」と共感したうえで、「どうしてだろうね?」「どうしたら、もっと地元の商店で買う人が増やせるかな?」などのアイディア出しもできるので、議論もスムーズに先に進みました。

買い物という身近なテーマであるからこそ、「小さなアクション」につながりやすいんですね。馴染みのない商店に一人で買い物に行くのは難しいと思いますが、「フィールドワーク」としてだったら訪れやすいのもとても良いアイデアだと思います。実際にフィールドワークを行ってどうでしたか?

 商店街フィールドワークの後に、参加したお母さんたちに、商店街へのメッセージを出してもらいました。メッセージには「情報発信をもっとしてほしい」「子どもに優しいお店だということを、分かるようにするとよいのではないか」といったものがありました。
 今後の課題は、提案を1つでも、2つでも実行につなげていくことです。例えば、「SNSで情報発信してもらえると、情報が届きやすい」という意見がある場合も、商店街の方にとっては「SNSはどのように使うのか」から始めなくてはいけないこともあります。こういうケースも含めて、ワークショップで出たメッセージをどのように活かしていくのか、どうサポートしていけるのか考えていく必要があります。

調査結果はその後のアクションにつなげることで、より大きな意味を持ちます。気仙沼市は、調査を行うだけでは終わらせずに、ワークショップを行うことで、確実に歩みを進めていることを嬉しく思いました。

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今回お話を伺って、地域経済のあり方を将来的に大きく変える助けになる産業連関表、市民ベースの活動の一助になる買い物調査と、それぞれの調査に特徴があることがわかりました。特色が異なる2つの調査とワークショップを行うことで、「じっくりと時間をかけて変えていく必要がある事業者への働きかけ」と「比較的すぐにアクションに結びつく消費者への働きかけ」を同時にできることが、イーズの調査とワークショップの強みです。

社さん、お忙しいところ、ありがとうございました!

 

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