レスターとの2日間の短いランデブーが終わった。1日目はダブルヘッダーでシンポジウム。それぞれパネリストのお話も面白かった。
2日目は東大でのシンポジウムだった。1日目もそうだったけど、2日目も会場に知った顔が。「あら」って目で挨拶したら、あとで「通訳しながら余裕ですね~」と感心?されてしまった。(^^;
レスターの通訳は慣れているとはいえ、今回は知らない話がけっこう出てきたので、頭の中はフル回転!という感じで、しかし、それが外からは見えないよう、かえって落ち着いた口調で、言葉を出しながら組み立てていく瞬間芸を楽しむ。(急に出てきたルーメンの話のところが落ちてしまった。アーメン!である。^^;)
終了後、レスターのサイン会の後ろでぼーっと待っていたら、パネリストのおひとりをなさっていた東大の先生が「むちゃくちゃうまいね」と声をかけて下さった。レスターの通訳は慣れているので、もちろん大割引をすべきなのだけど、それでも通訳を「むちゃくちゃ」という形容詞で誉めてもらったのははじめてかもしれない。気恥ずかしさ80%と20%のうれしさだった。
ホテルへ戻るタクシーで喋っていたら、レスターが急に「見てご覧、満月だよ」と。あ、ほんとうだ、東京の空に大きな満月だ。
「レスター、あれは日本の月なんだけど、アメリカにもある?」と冗談を言うと、「おや、日本の月だったんだね。アメリカにも似たものがあるよ」と。
「アメリカの月には人がいるっていうけど、日本の月はどうだい?」と言うので、「人なんて、いないよ。2匹のうさぎがお餅をぺったんぺったんってついているんだよ」と言ったら、笑っていた。たわいのないこんな時間がきらきら輝いている。
ホテルに戻ってインタビューと打ち合わせ1件をすませ、20時近くから食事。高層階のイタリアンへ行く。窓側を予約していたのだけど、レスターは「月が見える側はどっちかな?」とたわいなくこだわっているのがかわいい。
(年長者に「かわいい」は失礼かもしれないけど、レスターは本当に「かわいい」んだもの。余談だが、通訳という立場で数千人の男性を見てきた経験から、「大人の男性のかわいさの要素」をいくつか挙げることができる。そのうち本に書こうかな。^^;)
レスターとは、年に1度か2度、こうして互いの近況を報告したり、いまいちばん大事だと思っていることを話したり、これからの計画を伝えたりしている。とても大事な時間。
11月にも「予告編」は話していたのだが、今回、始めようとしている新しいことの話を詳しくしたら、You are difficult to keep up with. (いろいろやるねぇ。ついていくのが大変なくらいだよ)と笑っていた。
多くを語ることはしなかったのだが、たった一言で、私の現在置かれている状況をわかってくれた。レスターがそれに手をさしのべるわけでもないし、それを望んで話したわけでもない。でもほんの少しの言葉で、言葉にできない思いを確認できて、よーし、がんばるぞー、という思いを新たにした。
私は目的志向性がとても強いし、よくそういわれるが、レスターの影響が大きいんだよなー、と改めて思った。アメリカから月へ届こうとしている人がいる。私は日本からやっていく。活動自体をいっしょにやるわけではないけど、でも同じ月を見つめ、残された時間の限り、近づこうとしている。ひとりだけど、ひとりじゃない。そのことに、私は温かい励ましに満たされている気持ちがする。