江ノ島の花火大会、なかなかよかった。演出もまえより良いし、何より、土砂降りでなく、夕焼け空が暗くなってからの花火はすがすがしいことであるよ。来年はフィニッシュを盛り上げてくれるともっといいんだけどー。
いつもは、終わったらすぐに歩き出し、歩道の通行規制が始まる前に駅に着くのだが、今年は余裕だったので、いつもより打ち上げ現場の近くで見て、ゆっくりと戻っていたら、地下道の途中で通行規制にひっかかった。
風もない地下道で止められているので、早く帰りたい、暑い、なんとかしろ、という人々の声にならない声がわんわんと聞こえてきそうな、一歩間違うと険悪になりそうな雰囲気。
と思ったら、列のまえで規制していたお巡りさんが、マイクを手にこちらをくるりと向くと、「もうじきみなさんの規制が解除されます。でも、けっして走り出さないと約束して下さいね」と、ちょっとのんびりした口調で言った。
「走って転んだりすると、せっかくの花火の思い出が台無しになってしまいます。走らないと約束して下さいね」という声に、場がふっとゆるんで、あちこちから笑い声と笑顔が立ち上った。
おお、やるなあ!と感心したのであった。
そのあと、ロープが上げられ、だれも走り出すことなく、和やかな雰囲気でみんな地下道を横断していったのであった。
駅に向かう途中、あまり食べるところがないので、最初に目に付いた食堂に入った。(おなかがぺこぺこだったのだ)
花火特需っていうのかな、とても混んでいる。バイト君が走り回っているが、あちこちからお客の苦情が聞こえてくる。でっぷりしたおかみさんは、「今日は一品料理はできないんですよ。定食から選んで下さい」ととても偉そうな感じ。定食は高いから、儲けが大きいんだろう、と思ってしまう態度である。
しかたないので、ビールに定食を頼んで待っていたら、通りから小学生の男の子が駆け込んできて「トイレ、貸して下さい!」と頼んだ。バイト君が「トイレはあの奥だよ……」と指さすのを押しとどめたおかみさんは、通りを指さして「あっちにあるローソンに行きな」と追い出したのであった。
もうここには絶対来ないぞ、と思ったのであった。(まあ、花火特需の場合は、次々新規のお客が来るから、痛くもかゆくもないだろうけど)
あのお巡りさんにしても、あのおかみさんにしても、こういう「非日常的な場面」で人となりが出るんだよなあ、と思ったことであった。(おかみさんはいつもトイレはローソン、なのかもしれないけど)
それから、海のオフィスへ行って初めての宿泊。親松寝具店さんのリサイクル布団にくるまって(海辺だけあって、けっこう涼しいのだ)、来年の花火大会は、食事の場所を先に決めておかなくちゃ、と思いながら、ふかふかと気持ちよく寝たのであった。
翌朝は日の出前の海を見ながら、翌日の通訳の準備。(結局、曇っていて、日の出はなかったのだけど……)