ときどき出しているイーズメールで、つれづれなるままに「つれづれノート」を書いたら、メールをたくさんいただいた。
(ちなみに、私のメールニュースもこのブログも、イーズメールも、ただ自分が書きたいことを書いているだけなので、読んでくれている人がいて、ときどき感想などをいただくのは、想定外のうれしい「おまけ」みたいなものである。おまけがほしくてやっているわけではないので、「おお、ぼたもち!」とびっくりうれしい感じ)
というわけで、「つれづれノート」をご紹介しようかなと。
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かつて、同時通訳という仕事をしていました。講演者の話を同時に、英語、または日本語にしていく同時通訳の仕事はとても緊張するもので、同時通訳ブースのなかは、だいたいぴりぴりしています。(そのうえ、コワイ先輩と組むようなことがあったら、縮み上がってもとに戻らなくなった心臓を抱えて帰路につくことになります。。。)
同時通訳の仕事はとても集中力が必要なので、だいたい3人ぐらいでチームとなり、15〜20分で交代しながら、順番にマイクを握ります。最初に「今日は何分で交代にする?」と相談します。「今日は資料もなくて大変そうだから、15分にしようよ」等決めておいて、あとは時間を見ながら、次の人にマイクを渡していきます。
ところが、ときどき、話がなかなか切れないことがあります。文の途中でマイクを渡すわけにもいかないし(時計を見て、時間ぴったりに文の途中でもマイクを渡すという通訳者もいるそうですが、私は幸い組んだことがありません!)、そういうときは大変です。こちらは全速力で駆けてきたので、もうへろへろになり
かかっているし、あまり時間を過ぎると他の人々にも迷惑を掛けるので、リレーのバトンのように気を遣います。
朝から仕事に入っていると、夕方には脳細胞もバタバタ倒れ始め、とてもつらくなってきます。お互いそうなってくると、早めに渡したい人と、遅めに受けとりたい人の間のバトンの受け渡しになってくるので、けっこう大変です。「そろそろ時間だ……早く受け取ってくれないかな……」と思いつつ、次の通訳者がまっ
たくそのそぶりもないと、「ひー……いつまでやればいいの……」てな感じで、息も絶え絶えに走り続けなくてはなりません。
そんなある日、初めて組んだ通訳者が私の次の順番になりました。びっくりしたことに、この方は、自分の時間が来ると、こちらを向いて、にっこりしながら、両手を重ねて差し出します。「ちょうだい」というときの合図です。
私の心はふわっと軽くなりました。「はい、お願いしますねー」と、こちらもポンとマイクをじょうずに渡せます。彼女は、朝だけではなく、夕方疲れが激しくなってきても同じように、自分から両手を差し出して、マイクを渡しやすくしてくれたのでした。
私も、その日から自分も同じようにするようにしました。先に「ちょうだい」といってしまえば、相手はとてもラクになることを、身をもって知ったからです。
そして、通訳に限らず、自分のまわりの仕事でも、同じような場面に出会い、救われることがあります。
私が共同代表を務めているNGOのジャパン・フォー・サステナビリティで、私は和文記事のチェックをする役割を担っています。私がチェックをしてはじめて、英訳チームが英訳を始められるしくみになっています。私が、仕事が詰まってしまって忙しくなると、どうしてもチェックが遅れてしまい、チームのお世話役さ
んに迷惑を掛けてしまいます。
自由にならない自分の時間にいらいらしながら「申し訳ないなあ」と思っていたそんなとき、「何かお手伝い等できることはありませんか?」とメールをくれたメンバーがいました。
私のようすをはらはらしながら見てくれていたのでしょう。「エダヒロさんが遅れるから、全体が遅れてしまう」という文句が来ても仕方がない状況なのですが、そうではなく、ちょうど両手を差し出すような言葉をかけてくれた。そのことがどんなに私を穏やかに励ましてくれたことでしょう。
また、私の翻訳関係をよく手伝ってくれているある仲間は、どうしても自分でやる時間がなくてお願いした仕事を快くやってくれただけではなく、そのあと、こんなメールをくれました。
> ひきつづき(?)、何かお手伝いできることがありますか?
> ございましたら、多少にかかわらず、お申し付けください〜(ちり紙交換みたいですね)。
こんなみんなに支えてもらっていることを本当にありがたく思いつつ、「はたして自分はいつも両手を差し出しているだろうか? できたらやらずにすむかも、と気づかないふりをして、手を隠してはいないだろうか?」と、わが身を振り返る晩秋のひとときでした。
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