芽が出てきたー、春が来たーと思っていたら、もう山は緑の色を濃くし、どの地面でもたくましく茎や葉がぐんぐんと育っている。(そういえば、ベランダのプランターの小松菜は大変な騒ぎである。。。タネを蒔き過ぎちゃったらしい。^^;)
翻訳者もぐんぐん育つ時期である(別に春でなくても育つけどね)。そう願って、最近、翻訳者を育てることに時間を割いている。だって、「翻訳して紹介したい情報や書籍>現状で翻訳できる量」のギャップは大きくなるばかりなんだもの。先日も翻訳書の依頼をいただいたのに、時間的に難しいため辞退せざるを得なかった。この方面の翻訳者として出版社に推薦できる人はまだあまりいないのが残念で......。早く仲間を増やしたい〜! 私が訳文のチェックをしなくても安心して頼める翻訳者を増やしたい〜!!
ところで、何であっても、じょうごで考えることができる(念のため、笑い上戸のじょうごではなく、漏斗のじょうごである)。
漏斗の細い先から「力のある翻訳者」をどんどん輩出するには、そもそも広い口にどんどん「翻訳に関心のある方々」が入ってこなくてはならない。でも、そのすべてが力のある翻訳者になるわけではなくて、そこから少しずつ細くなるところを、先へ先へと進んでいくプロセスがあるのである(このプロセスが長いわけで、ひょろながい漏斗になっている)。
というわけで、この春から夏にかけて、3段階の「翻訳者よ、育て!」をやっている。
1つは、広口の部分。昨年来準備を進めていた書籍、『あなたも翻訳者になれる!エダヒロ式 [英語→日本語] 力の磨き方』が書店に並んだところだ。翻訳に興味のある方も、トレーニング中の方も、ぜひどうぞ! 翻訳通訳エージェンシーの社長さんが読んで「これはプロの翻訳者も読むべき本だ」とブログで紹介してくれていた。そう、現時点でのすべてを書いたから、ぜひ。
テンナイン・コミュニケーションさんサイトの「プロはここが違う!通訳者・翻訳者インタビュー」でもそのあたりをしゃべっているので、よかったらごらん下さい。
そして、じょうごをもう少し先へ進むための機会として、翻訳や翻訳者という仕事に興味がある方々向けに、5月10日に翻訳セミナーを開催する。
翻訳とはどんな仕事なのか、どうやって翻訳力を身につけたらよいのかなど、自分自身の経験とこれまで700人以上をトレーニングしてきた経験から、翻訳の勉強法の効果をアップできるコツやヒントをお話しするほか、その場でも簡単な翻訳トレーニングをやってみて、自分のクセや改善の方向性を実感してもらおう、というセミナーである。(あと少し残席があるとのこと、よかったらぜひどうぞ!)
そして、実際に翻訳トレーニングをしている・しようと思っている方々向けに、どこかに通ったりしなくてもメールで翻訳トレーニングを受けることができる「翻訳力アップ自己トレ『メール講座 Next Stage1』」を開講した。毎週一本ずつトレーニング課題や解説、参考情報、エダヒロのコツなどが届く。「2ヶ月半、ちょっぴり自分の背中を押して、がんばってみませんか?」という講座だ。
開講してまだ2週間ほどだけど、すでに数十人がトレーニングを開始している。このメール講座Next Stage を1〜3まで終了すると、トライアルの機会や自己研鑽の場を提供している Next Stage Clubに入る資格が得られる。
そしていよいよ、じょうごの先から押し出す、つまり「もう一息」組の「翻訳者の卵さん」が孵って「翻訳者」として自分の足でスタスタと歩いていくところのお手伝いである。
私は数年前から翻訳者を育てるトレーニングをいろいろやってきたし、そういう場を作ってきたこともあって、ここにたまっている人が多い。「もう一息なんだけど!」と何度ため息をついたことか。ここまで来たんだから、もう一息がんばれ! 早く出ておいで!と、最近では産婆さん気分である。
産婆さんは時に、なかなか出てこようとしない赤ちゃんを「ほらほら!」と強く押し出さなくちゃいけないこともある。そんな場を作って、一人でもふたりでもでてきてもらおうと、「翻訳道場」を開催することにした。1日かけてトレーニングをしていくもので、これはけっこうハードである。
だいたい、このあたりまできたら、やはり「トレーニング量」が大事になってくるんだよね。もちろんトレーニングの質も大事だけど、質の高いトレーニングをちょっぴりずつやっていても、絶対に次にはいけない。質の高いトレーニングを大量にやらないと、抜けられないところなのだ。でも、そのトレーニング量をきちんと自分に課してやっている人は......残念ながらそれほど多くはないのも事実だ。だから1日かけてどんなものかやってみていただこう、という「道場」である。
この道場は、トライアルも兼ねていて、当日および持ち帰ってやっていただくトライアル課題の結果で、何人か合格してくれないかなあ!と思っている。合格者にはアル・ゴア氏の次の本の翻訳を手伝ってもらうほか、いろいろなプロジェクトで一緒にやりつつ、磨きをかけていってもらおうと思っている。けど、これまでの経験から、トライアルの合格率は極めて低いことがわかっているので、あまり期待を高くしないよう、自分に言い聞かせているところ。。。
道場は定員が少ないこともあり、5月上旬と7月上旬の回はすぐに埋まってしまったので、急遽3回目として7月12日にも開催することを決めた。今年の前半はそのための時間をとるという年間計画なので、私ももうひとがんばり、というわけだ(今年の後半や来年以降は、状況と自分の持ち時間を見ながら、ということになるので未定)。
こうして翻訳者を育てることに使っている時間で、自分で翻訳を進めたほうが早いんじゃないの?という声もあるのだけど、これはシステム思考でいう「Worse before better」だと思ってやっている。当面は自分の時間をそちらに割かなくてはならないので、その分自分が翻訳できる時間は減ってしまう。でも、育てる努力をいまやることで、のちにはきっとラクになるでしょう、ということである。
私の夢は、私は翻訳して紹介したいなー、という本を見つけてくるだけ、あとは翻訳者仲間が最初から最後まで、読みやすくて正確な翻訳書にしあげてくれて、日本に世界の知見や知識や情報が絶え間なく流れ込んでくる、という状況を作ること。あー、早くそんな左うちわ生活を送りたい〜。(^^;