むかしむかし、村へ下りてきては、夢を喰う山男がおった。
百万長者になった夢を喰われた男もおったし、
自分のやりたいと願ってきた夢を喰われて、ポカンとしている女もおった。
しかし、その山男ときたら、図体はでっけえくせに、すばしっこくて、
人の大事にしておる夢ばかり、気づかれないよう盗み取って、喰うのが好きだった。
村の衆はどうしようもなく、手を焼いておった。
ある日、山男は、村の娘の夢を喰ってやろうと思った。
娘は、川っぷちの岩に腰掛けて、足をぶらぶらさせながら、
一生懸命、自分の夢を考えておる。
山男は、気づかれないように、そっと娘の後ろへ回ると、
さっそく娘の夢を喰い始めた。
むしゃ、むしゃ、むしゃ、むしゃ
が、しかしだ、娘の夢は一向に減らんのじゃ。
山男は少しとまどって、喰うのをやめた。
これはどうしたことか、と考えている間にも、娘の夢はふくらんでゆく。
山男は、あわてて、また喰い始めた。
むしゃ、むしゃ、むしゃ、むしゃ
すると、どうだろう。
少しずつ、山男のからだがふくらんできた。
しかし、山男は、必死になって喰いつづける。
むしゃ、むしゃ、むしゃ、むしゃ
とうとう、山男のからだは、ぱんぱんになってしもうた。
その時、ふっと、娘が振り向いたのじゃ。
山男は、ぱんぱんにふくらんだからだを隠すことができなかった。
あわてた山男は、これまで喰った夢を全部、ふーっとはき出すと、
山にかけのぼってしもうた。
それ以来、山男はこりて、村に下りることはなくなったそうじゃ。
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中学生時代に詩を書いていたノートから。この娘、どっかのだれかみたいだなー。(^^;