渋沢栄一翁は66才の頃、「老人になると、とかく過去のみを顧みてその感想を語る弊が多い。例えば昔の力士は大きかったとか、以前の俳優は今の役者よりも上手であったということは、よく耳にする所である。これに反して若い人は過去が少いゆえ、未来ばかりを説く。その未来のあるのがすなわち若い人の生命で、勉めて止まなければ必ず名を成すものである。世の中の人が過去のみを顧み、後進を軽んじておっては、世の中の進歩に伴わぬ老措大となる」と言っている。高齢化社会の真の弊害は、医療費や社会保障費の増大ではなく、これではないかと思う。社会の中で、過去のみを顧みて未来を考えることの少ない人々の割合が増えてくることである。