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日本では、エネルギー基本計画が定まらないのでCO2削減の目標は出せないという経産省と、目標を持たずに世界と交渉できるか、という環境省の綱引きが続いていて、「COP19までに目標を打ち出す」とした安倍首相の約束はどうなるのだろう?
何よりもそんなことをしている間にも、どんどんCO2が排出されて、温暖化が進行してしまうのに、という状況です。。。
「先進国のなかで、過去5年間、全体的に二酸化炭素の排出が減っていないのは、ロシアと日本である」
温暖化に関するレスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からの新しいリリースを、実践和訳チームが訳してくれましたので、お届けします。
グラフなどはこちらからご覧下さい。
http://www.earth-policy.org/indicators/C52/carbon_emissions_2013
~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~
危険域に入る二酸化炭素の排出量――原因は化石燃料
エミリー・E・アダムス
www.earth-policy.org/indicators/C52/carbon_emissions_2013
アースポリシー研究所リリース
エコ・エコノミー指標
エコ・エコノミー指標とは、アースポリシー研究所が持続可能な経済の構築状況を測定するために追跡している12の指標のことである。その一つとして、当研究所では炭素排出を取り上げている。地球の気候を安定させるには、炭素排出の速やかな削減が鍵となるためである。
地球規模で排出される温室効果ガスの一つ二酸化炭素、その増加は世界を危険域に追いやり、その結果、氷の融解、海面の上昇などの気温上昇が引き起こす最悪の事態を回避する時間が、残り少なくなろうとしている。
産業革命の幕開け後、化石燃料の燃焼による二酸化炭素の排出は急激に増加した。政府間では排出制限の必要性が広く合意されたが、それでも1990年代には1%未満であった二酸化炭素の年間排出増加率は今世紀の最初の10年間で3%近くにまで上がっている。2009年の世界的な金融危機で一時的に減少したものの、2010年には再び増加に転じ、その後は毎年2.6%ずつ増加して2012年の排出量は過去最高となる97億トンであった。
【グラフ】化石燃料燃焼による地球上の二酸化炭素排出量(1751年~2012年)
【グラフ縦軸】炭素(単位:100万トン)
出典:BP、二酸化炭素情報分析センター(CDIAC)、アメリカ地質調査所(USGS)の資料を基にアースポリシー研究所で作成
米国、カナダ、欧州、ロシア、オーストラリア、ニュージーランド、日本などの先進国が2007年以降に化石燃料の使用を7%減らしていなければ、二酸化炭素の排出はさらに急速に進んでいただろう。
2006年に中国に抜かれるまで長い間世界最大の排出国であった米国は、過去5年間で二酸化炭素の排出量を11%減の14億トンにまで削減している。最も大きかったのは石炭からの排出だった。主に発電用に使われている石炭は、発電所がよりコストの低い天然ガスに切り替えたことや、二酸化炭素を発生しない風力エネルギーの利用が4倍以上にも膨らんだことで、使用量が減った。米国では交通運輸分野で多く消費されている石油からの排出量も減少している。(データ参照)
【グラフ】化石燃料燃焼による二酸化炭素排出量(上位5カ国、1950年~2012年)
【グラフ縦軸】炭素(単位:100万トン)
出典:二酸化炭素情報分析センター(CDIAC)、BPの資料を基にアースポリシー研究所で作成
化石燃料の燃焼による二酸化炭素排出量が地域全体で世界第3位の欧州は、2007年から2012年にかけてこれを9%削減した。イタリアとスペインの削減率はそれぞれ17%と18%、英国は11%の削減で排出量を1億2,600万トンにしている。ドイツは4%減で2億トンにまで減らした。いずれも風力または太陽エネルギー、あるいはその両方の分野で世界をリードしてきた国である。
先進国のなかで過去5年間、全体的に二酸化炭素の排出が減っていないのは、ロシアと日本である。ロシアでは石油の使用が増えたため排出量が2%増加、4億4,900万トンに達している。また日本では、福島で災害が発生した直後に原子力発電を中止したことでその分多く天然ガスと石油が使われ、2012年の排出量は3億3,600万トン、1%の増加となった。
【グラフ】先進諸国とその他の国の化石燃料燃焼による二酸化炭素排出量(1751年~2012年)
【グラフ縦軸】炭素(単位:100万トン)
出典:BP、二酸化炭素情報分析センター(CDIAC)の資料を基にアースポリシー研究所で作成
新興国の二酸化炭素排出量は2005年に先進国を上回り、その後増加の一途を辿っている。中国では2007年以降排出量が44%増え、2012年は24億トンに達した。米国と合わせると世界全体の4割以上を占める。10億以上の人口を抱えるインドは、2008年に初めてロシアの排出量を上回り、2012年は5億9,600万トン、2007年から43%増やしている。同じく経済成長が急速に進むインドネシアでも排出量が爆発的に増加し、2012年は52%増の1億4,600万トンであった。
現在、二酸化炭素は主に新興国が排出しているが、世界を地球温暖化へ追いやったのは、一世紀分以上もの二酸化炭素を大気中に蓄積してきた先進国である。
さらに付言すると、ここで述べている推定排出量は、国内で燃やした化石燃料だけが対象とされ、国際間の取引は考慮されていないということだ。例えば中国が米国向けの製品を生産する際に発生させる排出量は中国の勘定に加算されている。排出量を、製品の最終目的地を基準に計算すれば、先進国が負担すべき二酸化炭素のつけはさらに多くなる。
一人当たりで計算すると、米国人は中国人の2倍に相当する4.4トンの炭素を放出していることになる。一人当たりの炭素排出量が最も多いのは、石油やガスを産出している数カ国の小国だ。2012年、カタールは一人につき11トンの炭素を排出。続くトリニダード・トバゴは9トン、クウェートは7.5トンであった。
二酸化炭素を排出するのは化石燃料だけではない。たとえば森林焼失など土地の状態の変化によっても、全世界で毎年およそ10億トンの炭素が排出されている。現在、陸地からの炭素排出のかなりの部分は、森林破壊が著しいブラジルとインドネシアによるものだ。
化石燃料の燃焼や土地利用の変化によって排出された二酸化炭素のうち、約半分は大気中に留まり、残りの半分は海や植物に吸収される。世界の海に吸収される二酸化炭素の量が増えると、海水の酸性化が進む。この海中の化学変化はサンゴ礁の構成要素を破壊し、海洋食物連鎖の重要なつながりを弱める恐れがある。科学者たちは、やがて海中の二酸化炭素が飽和状態に達し、人類が排出する炭素を吸収しきれなくなり、その結果、地球の温度調節機能に深刻な影響が及ぶ可能性があると警告している。
およそ80万年の間、大気中の二酸化炭素量は300ppmを上回ることがなかった。しかし、産業革命が始まって250年間、二酸化炭素は蓄積し続け、2012年には年間平均濃度が394ppmに迫った。二酸化炭素濃度は年間を通して変動し、毎年春にピークを迎える。2013年5月には一時的に400ppmに達し、気候破綻へと続く道に新たに不吉な一里塚が立った。無色無臭ながら大きな破壊力を持つこの気体が、これほど大気中に存在したことは人類史上一度もない。
二酸化炭素には、温室のガラスのように熱を閉じ込める働きがある。人類が化石燃料を大々的に燃やし始めて以来、地球の平均気温は摂氏0.8度上昇した。そのほとんどは1970年以降の上昇だ。気温が上がると、海面上昇、北極海氷の消失、熱波の頻発、食用作物の収穫減などの影響が出る。
温暖化は今後も進行し続ける。気候システムは、二酸化炭素濃度の上昇に対してゆっくりと反応するためだ。国際エネルギー機関をはじめとする国際機関は、数千人の科学者の研究を基に作成した報告書の中で,「排出を削減して気候災害を回避するために残された時間はわずかしかない」と強調している。
また世界銀行は、何らかの政策変更が行なわれない限り、世界の平均気温は今世紀末までに摂氏12.8度上昇する恐れがあると指摘している。これは、人類がこれまでに経験してきた気温をはるかに上回るものだ。
しかし、それとは異なる--クリーンエネルギー経済を基盤とした--未来は、手を伸ばせば届くところまで来ている。たとえばドイツは、とりたてて日照条件に恵まれた国ではないが、太陽光を活用して約800万戸の家庭に電気を届けてきた。
米国には、1,500万世帯以上の電力をまかなうのに十分な風力タービンが設置されている。ケニアでは、電力の約1/4が地熱エネルギーで生産されている。これらはしかし、再生可能エネルギーが持つ膨大な潜在能力のごく一部にすぎない。問題は、私たちが炭素ゼロの経済を築けるかどうかではない。気候変動が手に負えない状況に陥ってしまう前にそれを実行できるかどうかである。
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地球の気候を安定させる計画については、『仮邦題:今こそプランBを』(TimeFor Plan B)を参照してください。データやその他の情報はwww.earthpolicy.orgに掲載されています。
この情報はご自由に友人、家族、同僚の方々に転送してください。
エコ・エコノミー指標とは、アースポリシー研究所が持続可能な経済の構築状況を測定するために追跡している12の指標のことである。その一つとして、当研究所では炭素排出を取り上げている。地球の気候を安定させるには、炭素排出の速やかな削減が鍵となるためである。
地球規模で排出される温室効果ガスの一つ二酸化炭素、その増加は世界を危険域に追いやり、その結果、氷の融解、海面の上昇などの気温上昇が引き起こす最悪の事態を回避する時間が、残り少なくなろうとしている。
産業革命の幕開け後、化石燃料の燃焼による二酸化炭素の排出は急激に増加した。政府間では排出制限の必要性が広く合意されたが、それでも1990年代には1%未満であった二酸化炭素の年間排出増加率は今世紀の最初の10年間で3%近くにまで上がっている。2009年の世界的な金融危機で一時的に減少したものの、2010年には再び増加に転じ、その後は毎年2.6%ずつ増加して2012年の排出量は過去最高となる97億トンであった。
【グラフ】化石燃料燃焼による地球上の二酸化炭素排出量(1751年~2012年)
【グラフ縦軸】炭素(単位:100万トン)
出典:BP、二酸化炭素情報分析センター(CDIAC)、アメリカ地質調査所(USGS)の資料を基にアースポリシー研究所で作成
米国、カナダ、欧州、ロシア、オーストラリア、ニュージーランド、日本などの先進国が2007年以降に化石燃料の使用を7%減らしていなければ、二酸化炭素の排出はさらに急速に進んでいただろう。
2006年に中国に抜かれるまで長い間世界最大の排出国であった米国は、過去5年間で二酸化炭素の排出量を11%減の14億トンにまで削減している。最も大きかったのは石炭からの排出だった。主に発電用に使われている石炭は、発電所がよりコストの低い天然ガスに切り替えたことや、二酸化炭素を発生しない風力エネルギーの利用が4倍以上にも膨らんだことで、使用量が減った。米国では交通運輸分野で多く消費されている石油からの排出量も減少している。(データ参照)
【グラフ】化石燃料燃焼による二酸化炭素排出量(上位5カ国、1950年~2012年)
【グラフ縦軸】炭素(単位:100万トン)
出典:二酸化炭素情報分析センター(CDIAC)、BPの資料を基にアースポリシー研究所で作成
化石燃料の燃焼による二酸化炭素排出量が地域全体で世界第3位の欧州は、2007年から2012年にかけてこれを9%削減した。イタリアとスペインの削減率はそれぞれ17%と18%、英国は11%の削減で排出量を1億2,600万トンにしている。ドイツは4%減で2億トンにまで減らした。いずれも風力または太陽エネルギー、あるいはその両方の分野で世界をリードしてきた国である。
先進国のなかで過去5年間、全体的に二酸化炭素の排出が減っていないのは、ロシアと日本である。ロシアでは石油の使用が増えたため排出量が2%増加、4億4,900万トンに達している。また日本では、福島で災害が発生した直後に原子力発電を中止したことでその分多く天然ガスと石油が使われ、2012年の排出量は3億3,600万トン、1%の増加となった。
【グラフ】先進諸国とその他の国の化石燃料燃焼による二酸化炭素排出量(1751年~2012年)
【グラフ縦軸】炭素(単位:100万トン)
出典:BP、二酸化炭素情報分析センター(CDIAC)の資料を基にアースポリシー研究所で作成
新興国の二酸化炭素排出量は2005年に先進国を上回り、その後増加の一途を辿っている。中国では2007年以降排出量が44%増え、2012年は24億トンに達した。米国と合わせると世界全体の4割以上を占める。10億以上の人口を抱えるインドは、2008年に初めてロシアの排出量を上回り、2012年は5億9,600万トン、2007年から43%増やしている。同じく経済成長が急速に進むインドネシアでも排出量が爆発的に増加し、2012年は52%増の1億4,600万トンであった。
現在、二酸化炭素は主に新興国が排出しているが、世界を地球温暖化へ追いやったのは、一世紀分以上もの二酸化炭素を大気中に蓄積してきた先進国である。
さらに付言すると、ここで述べている推定排出量は、国内で燃やした化石燃料だけが対象とされ、国際間の取引は考慮されていないということだ。例えば中国が米国向けの製品を生産する際に発生させる排出量は中国の勘定に加算されている。排出量を、製品の最終目的地を基準に計算すれば、先進国が負担すべき二酸化炭素のつけはさらに多くなる。
一人当たりで計算すると、米国人は中国人の2倍に相当する4.4トンの炭素を放出していることになる。一人当たりの炭素排出量が最も多いのは、石油やガスを産出している数カ国の小国だ。2012年、カタールは一人につき11トンの炭素を排出。続くトリニダード・トバゴは9トン、クウェートは7.5トンであった。
二酸化炭素を排出するのは化石燃料だけではない。たとえば森林焼失など土地の状態の変化によっても、全世界で毎年およそ10億トンの炭素が排出されている。現在、陸地からの炭素排出のかなりの部分は、森林破壊が著しいブラジルとインドネシアによるものだ。
化石燃料の燃焼や土地利用の変化によって排出された二酸化炭素のうち、約半分は大気中に留まり、残りの半分は海や植物に吸収される。世界の海に吸収される二酸化炭素の量が増えると、海水の酸性化が進む。この海中の化学変化はサンゴ礁の構成要素を破壊し、海洋食物連鎖の重要なつながりを弱める恐れがある。科学者たちは、やがて海中の二酸化炭素が飽和状態に達し、人類が排出する炭素を吸収しきれなくなり、その結果、地球の温度調節機能に深刻な影響が及ぶ可能性があると警告している。
およそ80万年の間、大気中の二酸化炭素量は300ppmを上回ることがなかった。しかし、産業革命が始まって250年間、二酸化炭素は蓄積し続け、2012年には年間平均濃度が394ppmに迫った。二酸化炭素濃度は年間を通して変動し、毎年春にピークを迎える。2013年5月には一時的に400ppmに達し、気候破綻へと続く道に新たに不吉な一里塚が立った。無色無臭ながら大きな破壊力を持つこの気体が、これほど大気中に存在したことは人類史上一度もない。
二酸化炭素には、温室のガラスのように熱を閉じ込める働きがある。人類が化石燃料を大々的に燃やし始めて以来、地球の平均気温は摂氏0.8度上昇した。そのほとんどは1970年以降の上昇だ。気温が上がると、海面上昇、北極海氷の消失、熱波の頻発、食用作物の収穫減などの影響が出る。
温暖化は今後も進行し続ける。気候システムは、二酸化炭素濃度の上昇に対してゆっくりと反応するためだ。国際エネルギー機関をはじめとする国際機関は、数千人の科学者の研究を基に作成した報告書の中で,「排出を削減して気候災害を回避するために残された時間はわずかしかない」と強調している。
また世界銀行は、何らかの政策変更が行なわれない限り、世界の平均気温は今世紀末までに摂氏12.8度上昇する恐れがあると指摘している。これは、人類がこれまでに経験してきた気温をはるかに上回るものだ。
しかし、それとは異なる--クリーンエネルギー経済を基盤とした--未来は、手を伸ばせば届くところまで来ている。たとえばドイツは、とりたてて日照条件に恵まれた国ではないが、太陽光を活用して約800万戸の家庭に電気を届けてきた。
米国には、1,500万世帯以上の電力をまかなうのに十分な風力タービンが設置されている。ケニアでは、電力の約1/4が地熱エネルギーで生産されている。これらはしかし、再生可能エネルギーが持つ膨大な潜在能力のごく一部にすぎない。問題は、私たちが炭素ゼロの経済を築けるかどうかではない。気候変動が手に負えない状況に陥ってしまう前にそれを実行できるかどうかである。
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地球の気候を安定させる計画については、『仮邦題:今こそプランBを』(TimeFor Plan B)を参照してください。データやその他の情報はwww.earthpolicy.orgに掲載されています。
この情報はご自由に友人、家族、同僚の方々に転送してください。
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アースポリシー研究所
1350 Connecticut Avenue NW, Suite 403, Washington, DC 20036
(翻訳:酒井、佐野)