ホーム > データを読む > 世界のレジ袋への取り組みは?

データを読む

24

世界のレジ袋への取り組みは?

2014年08月19日 作成
世界のレジ袋への取り組みは?

世界中ではどのくらいのレジ袋を使っているか、ご存じですか?

日本でも「レジ袋を辞退する運動」や「レジ袋の有料化」はかなり以前から取り組みを進めていますが、世界ではどうなのでしょうか?

レスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からのプレスリリースを、実践和訳チームが訳してくれましたので、お届けします。

~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~

レジ袋の減退:世界の現状

http://www.earth-policy.org/plan_b_updates/2014/update123
ジャネット・ラーセン、サヴィナ・ヴェンコヴァ

世界で毎年1兆枚、1分間で約200万枚のプラスチック製のレジ袋が使い捨てされている。レジ袋の使用量は国によって大きく異なり、東欧諸国では多くの人が年間400枚以上使っているが、デンマークやフィンランドでは年間わずか4枚である。

天然ガスや石油といった再生できない資源で作られるレジ袋が、せいぜい数分しか使われないこともしばしばだ。しかも、レジ袋は何百年も環境に留まり、かなり細かく裁断したところで完全に分解されることは決してない。

この1世紀の間に地球はプラスチックに支配されてしまった。医療器具から車の軽量化による燃費の向上まで、幅広く有効利用されているプラスチックは、一方では奇跡の素材のように思える。

他方、安上がりに思える大量生産された使い捨て商品が埋立地をいっぱいにし、海を濁らせ、野生動物を窒息させ、景観を損ねていることを考えれば、それは災いをもたらす。安全性について記録がない添加物が多く含まれていることから、プラスチックは特定のガンや不妊症など多くの健康問題に関連してきた。

しかも賢く利用してリサイクルできるのに、プラスチック製品の大半でそれが行われていない。一度しか使われないレジ袋ほど、使い捨て文化の問題を象徴するものはないだろう。

レジ袋に関連する多くの問題を考慮し、世界中で多くのコミュニティが、使用を禁止したり、有料化したりして、レジ袋への依存から抜け出そうとしてきた。世界で最も早くレジ袋税を導入し、現在も継続しているのがデンマークである。

1993年に成立したこの法律は、袋の重さに基づいて税を支払うレジ袋製造業者に影響を与えた。店はレジ袋を有料化するか、ほかの物の価格に上乗せするかのどちらかの方法で、コストを消費者に転嫁することを許された。この制度が施行された当初には、レジ袋の使用量が60%も減少するという驚くべき効果があった。

最もよく知られるレジ袋削減対策の一つが、アイルランド政府が2002年に採用したレジ袋税である。世界で初めて消費者に直接、税を課すもので、最初はレジ袋1枚につき15ユーロセント(約21円)であった。税導入後の5カ月間にレジ袋の使用量は90%以上減少し、ゴミのポイ捨ても大幅に減った。

しかし年月が経つにつれ、レジ袋の利用がじわじわ増え始めたため、2007年に22ユーロセント(約31円)に増額され、2011年には、レジ袋の使用枚数を一人当たり年間21枚以下に抑えることを目標に法律の改正が行われた。ダブリン大学のフランク・コンヴェリー教授は、アイルランドのレジ袋税を「欧州で最も人気を博す税金」と呼び、廃止すれば政治的なダメージにつながると考える。

実際、レジ袋の削減対策を検討する多くのコミュニティが、アイルランドの成功をお手本にしたいと考えている。欧州で、法律または自主的な取り組みのいずれかによって消費者がレジ袋にお金を出している国はほかにも、ベルギー、ブルガリア、フランス、ドイツ、ラトビア、オランダなどがある。欧州連合(EU)では、2019年までにレジ袋の使用量を80%削減する措置を講じるよう、すべての加盟国がまもなく要請されることになるだろう。

ist_20140820.jpg
(クリックするとライブマップが開きます)

欧州などのレジ袋規制の主な原動力となってきたのが、海洋環境でのプラスチック量の削減だ。欧州委員会がレジ袋削減策の提案で示したメモにはこう書かれている。「北海に生息する鳥類の94%の胃袋にプラスチックが入っている。レジ袋についてはアオウミガメやアカウミガメ、オサガメ、クロアシアホウドリ、ネズミイルカなどいくつかのの海洋性生物の絶滅危惧種の胃袋で見つかった」、また全体で、「少なくとも267種が絡まったり、飲み込んだりして海洋ゴミで傷ついていたことがわかっている」。

オーストラリアでは2003年に、タスマニア州沖にやってくるクジラを救いたいという願いが、国内初の地方自治体によるレジ袋使用禁止の導入につながった。今では同国の半数の州・準州でレジ袋の使用が禁止されている。

海に限らず、レジ袋対策が講じられるのにはさまざまな理由がある。ケニアではレジ袋にたまる水に起因してマラリアが大発生し、バングラデシュやカメルーン、フィリピンではレジ袋のせいで下水管が詰まり、洪水がひどくなっているからだ。

テキサス州の牧場地域や聖なる牛を心配するインドのコミュニティでは、レジ袋で牛がのどを詰まらせることから、レジ袋に対する規制に弾みがついた。モーリタニアの首都では、牛や羊の死因のおよそ70%はレジ袋を飲み込んだことだ。アラブ首長国連邦では、同じことがラクダで心配されている(レジ袋に反対する世界中の取り組みについて、その他の詳細はwww.earth-policy.org.に掲載)。

レジ袋に対して世界で最も厳しい対策を実施しているのは、ルワンダかもしれない。2008年に禁止令が施行されて以来、海外からくる飛行機の乗客たちは、到着時にレジ袋を強制的に取り上げられたと話している。ただし、この禁止令がレジ袋の全体的な使用量の削減にどれほど成果を挙げているのかは、はっきりしない。

比較的都市化の進んでいない地域では、レジ袋の闇取引が盛んなため、特にそのことが言える。南アフリカでは茂みや木々に引っかかったレジ袋があまりにも日常的に見られるようになったことから、こうしたレジ袋が「国花」と呼ばれていたが、2003年、生分解性がなく、簡単に破れて飛ばされやすい極薄のレジ袋の禁止令が施行された。それよりも厚めのレジ袋には税金が掛けられている。

ボツワナでは2007年に始まったレジ袋の有料化によって、大手小売店ではその使用量が半減するという成果が挙がっている。アフリカ全体では少なくとも16カ国が、効果の度合いに差こそあれ、一定の種類のレジ袋に禁止令を発表してきた。

中国ではレジ袋による汚染が拡大し、いくつかの市や省が1990年代にその使用量を制限する政策を導入してみたが、実施が行き届かなかったせいでその成果は限られたものとなった。2008年の北京オリンピック開催前には、極薄いレジ袋を禁止し、比較的厚めのレジ袋の有料化を店舗に求める国内法が施行された。

中国政府の報告によると、その法律に従う動きにはばらつきがあるものの、レジ袋の使用量は2/3以上減少しているという。東南アジアは世界のレジ袋の輸出の多くを占めているものの、たくさんの都市がレジ袋の使用量を減らす法律を策定してきた。

米国では、これまで133の市・郡で反レジ袋法令が可決されている。レジ袋の禁止令は、カリフォルニア住民の3人に1人、そしてハワイでは事実上すべての住民に及んでいる。シカゴ市の市議会は2014年4月にレジ袋禁止令を可決した。ダラス市とワシントンD.C.は、プラスチック製でも紙製でも、レジ袋1枚に対して5~10セント(約5~10円)課金している数少ない地域に含まれており、両市とも地元の川で目にする袋の数を減らすために料金の徴収を取り入れた。

カナダでは、反レジ袋運動の多くが自主的なもので、多数の小売店が参加している。オンタリオ州とケベック州では、再利用できる袋の利用促進策や、小売店による有料化などのさまざまな対策を通して、レジ袋の使用量をそれぞれ半分に減らしてきた。マニトバ州やケベック州、ノバスコシア州の酒店は今後いっさい、レジ袋を使用しないことにした。

南米でもレジ袋のごみを減らす数多くの取り組みが行われている。いくつか例を挙げれば、チリのプコン市やプンタアレナス市、アルゼンチンのブエノスアイレス州やメンドーサ州での禁止令だ。ブラジルのいくつかの州では、持ち帰り用の袋は生分解可能なことが義務付けられている。

サンパウロ州では2012年1月から無料の使い捨てレジ袋が禁止され、厚手で再利用できる、あるいは生分解性のレジ袋を10セント(約10円)で販売することが許されている。しかしこの法令は、スーパーマーケット事業者団体が支援していたにもかかわらず、プラスチック業界に支持された裁判所の差し止め命令によって排除された。

同様に、メキシコシティは2009年に買い物用のレジ袋を禁止したが、その法令はプラスチック製造業者からの圧力により、施行前にリサイクル政策に置き換えられてしまった。このリサイクル政策は、より厳しい禁止令や課金に反対する世界中の業界団体が持ち出す常套手段である。

レジ袋は明らかに社会のコストであり、そのコストはまだ完全に支払われていない。使い捨ての袋の使用量を減らすことは、使い捨て経済から資源の賢い利用を基盤とした経済――つまり、すぐに使えなくなるモノを作るのではなく、繰り返し利用する経済――に向かう小さな一歩である。

レジ袋の年表や、レジ袋に関する数々の国際的な取り組みなど追加情報はwww.earth-policy.org.で入手可能。


メディア関連の問い合わせ:
リア・ジャニス・カウフマン
電子メール:rjk[at]earthpolicy.org
電話:(202) 496-9290 内線 12

研究関連の問い合わせ:
ジャネット・ラーセン
電子メール:jlarsen[at]earthpolicy.org
電話:(202) 496-9290 内線14

アースポリシー研究所
1350 Connecticut Avenue, NW
Suite 403
Washington, DC 20036

(翻訳:佐々木、川嶋)

メールマガジン(不定期・無料)環境メールニュース 登録/解除はこちら
 

このページの先頭へ

このページの先頭へ