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「一億総中流」と言われたように、日本は「同質・平等な社会」というイメージが強かったように思いますが、近年では「格差」「二極分化」が広がっていると言われ、またそういった実感を伴う現象が多く見られるようになってきました。
「日本での所得格差は大きくなっているのか?」「それはいつ頃からか?」「他国に比べてどうなのか?」など、主観だけでなく統計的に議論するときによく用いられるのが「ジニ係数」です。
ジニ係数とは不平等さを表す係数で、主に社会における所得分布の格差を測る指標として用いられます。イタリアの統計学者・社会学者であるコラッド・ジニによって開発されました。ジニ係数は0から1の範囲で表され、0は完全な平等の状態を示します。つまり、0に近いほど格差が小さく、1に近いほど格差が大きくなります。また、0.4が争乱などが多発する社会不安定化の警戒ラインとされています。
日本では、厚生労働省の「所得再分配調査」や総務省統計局による「全国家計構造調査(旧全国消費実態調査)」などによりジニ係数が算出されています。所得再分配調査によると、1980年代初頭には約0.31だった再分配後所得(黄色の線)のジニ係数が徐々に上昇し、2019年には0.37。2000年くらいから0.35を超える値で推移していることがわかります。「昔に比べると格差が広がったのではないか」という私たちの実感を裏付けるすう勢となっています(図1)。
なお、図1の青い線は税金や社会保障が加味される前の「当初所得」のジニ係数を示しています。青いグラフの方は、ジニ係数がどんどんと大きくなっていますね。この格差を、税金や社会保障などの仕組みによって、黄色い線のところまで押さえていることがわかります。
それでは他の国と比べるとどうでしょうか? OECD諸国のデータを見ると、データが提供されている36カ国中、最もジニ係数の低いのはスロバキアで0.222、最も高いのはコスタリカで0.497でした(図2)。日本はジニ係数が高い方(格差が大きい方)から11番目で、OECD平均の0.316よりもやや高い0.334でした(※2)。グラフを見ると日本よりもジニ係数が低い国がたくさんあることがわかります。なお、米国は高い方から5番目で0.395となっており、格差の大きい社会であることがわかります。
※1 1978年までは私的給付(仕送りなど)が含まれています
※2 OECDと所得再分配調査では、元にしているデータが異なるため、ジニ係数の値は異なります
※2013.5.22初版公開
※2017.4.24 情報更新
※2022.3 情報更新
(新津 尚子)
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参考資料
厚生労働省 「所得再分配調査」
OECD (2022), Income inequality (indicator). doi: 10.1787/459aa7f1-en (Accessed on 01 February 2022)
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