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ニュースなどで「非正規雇用者の割合が増加している」という話をよく耳にします。非正規雇用者とは、「正規の職員・従業員」以外の「パート」「アルバイト」,「労働者派遣事業所の派遣社員」、「契約社員」「嘱託」などです。実際、日本の非正規労働者の割合はどれくらい増えているのでしょうか。
図1は、役員を除いた雇用者のうちの非正規雇用者の割合をグラフにしたものです。1992年には、全体で21.7%だった非正規雇用者の割合は、2012年には38.2%まで増加しています。これは10人働いている人がいたら、そのうちの約4人が非正規雇用者であることを示しています。
、女性では非正規雇用者の割合が高く、雇用者のうちの約6割(57.7%)が非正規雇用者です。男性は女性に比べると割合が低いものの1992年の9.9%から2012年の22.2%へとその割合は倍増しています。
非正規雇用者が増加した背景には、派遣法の改正の影響があると言われています。1985年に派遣法が制定され、派遣労働が可能になりました。しかし、その時点では、派遣労働は翻訳者や秘書など専門的な業種にしか認められていませんでした。
しかし、1999年に派遣業種が原則自由化され、港湾運送、建設、警備などを除くほとんどの業種で派遣労働が可能になりました。また、2004年の改正では、製造関係の業務の派遣労働も認められるようになりました。
図2は、初職(学校を卒業してから初めて就いた所得を伴う仕事)が非正規雇用だった人の割合を示したものです。1992年10月から1997年9月までの間は、初職に就いた人のうち、非正規雇用者は13.4%しかいなかったのですが、2007年10月から2012年9月までの間に初職に就いた人をみると、その割合は39.8%となっています。「初職が非正規雇用である人」の割合は15年で3倍になっているのです。
もちろん、時間などに縛られない働き方として、「非正規雇用」を主体的に選んでいる人もたくさんいます。ただし、総務省統計局が2015年に発表した「最近の正規・非正規雇用の特徴」によると、非正規の職についた理由として「正規の職員・従業員の仕事がないから」をあげた人たちが、非正規雇用者の中に2割ほどいました。初職者の場合は、この割合はもっと高いことが予測されます。
日本では、「新卒一括採用」といって、4月に一斉にその春の卒業生を新卒者として雇用するスタイルが一般的です(ちなみに、欧米では「新卒一括採用」はないそうです)。この日本型のスタイルでは、「大学を卒業するとすぐに就職する」ことが当たり前とみなされるため、1度しかない「新卒」の機会に正規雇用の職に就けないと、その後に正規雇用の職をみつけることはより困難になります。こうした慣行も含め、初職時に非正規雇用である人の割合が増えている状況について考えていく必要があります。
参考資料
総務省統計局, 2015, 「最近の正規・非正規雇用の特徴」, 統計Today No.97
http://www.stat.go.jp/info/today/097.htm
「農業が温暖化を解決するとは? リジェネラティブな農業とは?」