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新型コロナウイルスの感染拡大により、今後も経済に深刻な影響が及ぶことが懸念されています。それでは、こうした経済への影響を大きく被るのは、豊かな人々でしょうか? それとも一般の人々でしょうか? 2020年5月に発表されたIMF(国際通貨基金)のDavide Furceri氏らの研究が、この問題を考える助けとなりますので紹介します。
この研究では、2003年のSARS 、2009年の新型インフルエンザ(H1N1)、2012年のMERS、2014年のエボラ出血熱、2016年のジカウイルス感染症の5つの流行(パンデミック)について、影響を受けた国々でジニ係数がどのように変化しているのかを明らかにしています。
上のグラフが示しているのは、パンデミックが生じてから5年間の再分配所得のジニ係数の変化です。流行後の5年間、ジニ係数の上昇傾向が続いていることがわかります。ジニ係数の値は大きいほど、不平等が大きいことを示します。つまり過去の感染症では流行後に、貧富の差が拡大しているのです。
またこの研究からは、こうした影響が、当初所得のジニ係数よりも、再分配所得のジニ係数で、より大きいことも明らかになりました。これは、感染症流行の打ち手として取られた経済政策が、不平等の拡大につながった可能性を示唆しています。
現在、新型コロナウイルスの経済政策が数多く打ち出されていますが、そうした対策によって、貧富の差がさらに広がることがないよう、注意することが求められます。
(新津尚子)
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