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次世代を担う子供たち。精神的な幸福や、健康、友人関係など、日本の子どもたちの幸福を巡る状況は、どうなっているのでしょうか。
国連児童基金(ユニセフ)は2020年9月、『子どもたちに影響する世界:先進国の子どもの幸福を形作るものを理解する』を発表しました。この報告書では、EUとOECDの加盟国を対象に、新型コロナウイルスの感染拡大前のデータを用いて、子どもの精神的幸福度、身体的健康、学業・社会的スキルなどについての「成績」を公開しています。
今回の「データを読む」では、この報告書をもとに、日本の子どもたちの幸福にみられる特徴について解説します。
まず、総合成績を見てみましょう。子どもの精神的幸福度、身体的健康、学業・社会的スキルを総合した成績のトップ3は、オランダ、デンマーク、ノルウェー。日本は38カ国中20位でした。
精神的幸福度、身体的健康、スキルについて、具体的に何を指標にしているのかを一覧にしたのが表1です。表には、 各指標での日本の順位も記しましたが、指標によって順位に大きな差があることがわかります。
日本で順位が高いのは身体的健康(子どもの死亡率と体重過多)で、38カ国中1位でした。
逆に、順位が低いのが精神的幸福度です。内訳を見ると生活満足度が33カ国中下から2番目と、特に低いことがわかります。このスコアは、15歳時点での生活満足度が高い子どもの割合(生活全体に対する満足度について、10点満点中6点以上を獲得した子どもの割合)から出されたもので、最も高いオランダは90%の子どもたちの生活満足度が6点以上だったのに対して、日本では62%。言い換えると、日本では、10人に4人くらいは、生活満足度が10点満点中5点以下でした。
もう一つ、日本の順位が低かったのが、スキルの中の「社会的スキル」で40カ国中39番目という成績でした。このスコアは、15歳時点で「学校で友達ができやすい」と回答した子供の割合から出されたものです。スコアが最も高いルーマニアの83%に対して、日本は69%でした。
学校で友達が作りにくければ、生活満足度も下がってしまうことでしょう。「心身の健康」という言葉がありますが、日本の場合、身体の健康については申し分ない一方で、心の健康については課題があることが読み取れます。
(新津 尚子)