51
「欧米に比べて、日本には寄付の文化が根づいていない」、そんな話を耳にしたことはありませんか? 実際はどうなのでしょうか。今回の「データを読む」では、個人による寄付の動向を紹介します。
日本ファンドレイジング協会の『寄付白書2021』によると、個人の寄付総額は、2009年 の5,455億円から2020年1兆2126億円と倍以上増加しています(図1)。2020年は多くの寄付を集めた東日本大震災時(2011年)の1兆182億円を上回る金額でした。東日本大震災や新型コロナウイルスの流行といった大きな出来事を経ながら、個人の寄付額が増加している状況が伺えます。
※『寄付白書』の寄付は、「自分自身や家族のためではなく、募金活動や社会貢献などを行っている人や団体に対して、金銭や金銭以外の物品を自発的に提供する行為」を指す
※金額は、全国寄付実態調査と共同募金会や日本赤十字社、ふるさと納税のデータを用いて推計したもの
英国・米国との比較
それでは外国と比べるとどうでしょうか、同白書に英国と米国のデータが掲載されていたので紹介します。
図2は日本(2020年)、英国(2018年)、米国(2020年)の個人寄付の総額を比べたものですが、日本の1兆2,126億円、英国の1兆4,878億円に対して、米国は34兆5,948億円と圧倒的に米国の寄付総額が高いことがわかります。米国では有名人が多額の寄付を行ったことがよくニュースになっています。こうした文化も米国の寄付額の高さの背景にはありそうです。
ただし、この3国では経済や人口の規模が異なるので、GDPと人口あたりの割合や金額もみてみましょう。
日本の2020年の個人寄付額(1兆2126億円)が名目GDPに占める割合は0.23%です。それに対して英国の個人寄付額が名目GDPに占める割合は0.47%、米国は1.55%です。英国、米国と比較すると日本の寄付額は少ないことがわかります。
2020年の人口一人あたりの寄付金額を計算しても、日本は約9,600円、英国は約2万2,000円、米国は約10万5,000円という結果でした。人口あたりで計算すると、日本の寄付額が英国の2分の1以下、米国の10分の1程度と少ないことがわかります。
※人口あたりの寄付金額の算出はe'sによるもの
ふるさと納税と寄付
日本の寄付について、少し深堀りしてみます。日本の個人寄付額の中で大きな割合を占めているのが「ふるさと納税」です。ふるさと納税とは、自分が暮らしている自治体以外の自治体へ納税する形で寄付を行う制度です。2020年の個人寄付額では、半分以上の6,725億円をふるさと納税が占めています。
ふるさと納税は、返礼品が目当てのことも多いため、「寄付」と呼ぶことについては議論があるのも事実です。ただし、ふるさと納税による寄付額を差し引いた個人の寄付額をみても、2016年の4,912億円に対して、2020年は5,401億円と増加しています。また、災害地支援など、返礼品がないふるさと納税を行う人も増えています。
災害支援やふるさと納税が一般的になる中で、日本にも寄付文化が根付きつつあるけれども、米国や英国と比較するとまだまだ少ないというのが、日本の寄付をめぐる状況と言えるでしょう。
参考文献
日本ファンドレイジング協会, 2021『寄付白書2021』
Image by craftbeermania.
「農業が温暖化を解決するとは? リジェネラティブな農業とは?」