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現在、気候変動や原油価格の高騰などにより、再生可能エネルギーの重要性が増しています。以前のデータを読む「日本の再生可能エネルギーの取り組みは世界と比べて進んでいる?」では、各国のエネルギー総消費量に対する再生可能エネルギーの発電量を紹介しました。この記事で注目したのは、「各国が消費するエネルギーのどの程度の割合が、再生可能エネルギーによって賄われているのか」でした。
それに対して、今回は「発電容量」に注目します。発電容量とは、「ある発電システムからどれだけ発電できるのか」を示す数字です。つまり、今回は消費量を考慮せず、「発電できる量」から再生可能エネルギーの取り組み状況をみていきます。
表は国際再生可能エネルギー機関(IRENA)による、2021年の再生可能エネルギー(水力・太陽・風力・バイオマス・地熱・海洋エネルギー)の発電容量トップ5の国および、世界と日本の発電容量をまとめたものです。IRENAは再生可能エネルギの普及と持続可能な利用の促進を目的として2011年4月に設立された国際機関です。
発電容量が大きい再生可能エネルギーは?
表の左から2列目の「世界」を見ると、発電容量が最も大きい再生可能エネルギーは、水力の1360.1GWであることがわかります。そして太陽光・太陽熱の849.5GW、風力発電の824.9GWが続きます。4位のバイオマス発電容量は143.4GWですから、3位の風力までと、4位以降では現段階では発電容量にかなりの差があることがわかります。
表の一番下の海洋エネルギー発電は、現段階ではまだ実験段階のため0.5GWと発電容量は小さいですが、新たな再生可能エネルギー源として注目を集めています。海洋エネルギー発電には、波のエネルギーを利用する波力発電の他、潮力発電、塩分濃度差や海洋温度差を用いる発電などがあります。
発電容量トップ5の国々とその人口
次に、発電容量が大きい国々に注目してみましょう。表を見ると、中国、米国、インド、ドイツの名前が目立ちます。特に中国は水力、風力、太陽光・太陽熱、バイオマスでトップ、世界の発電容量の20%から40%を占めている計算になり、再生可能エネルギーに力を入れていることがわかります。日本がトップ5に入っているのは太陽光・太陽熱の3位のみですが、水力発電もトップクラスの発電容量を持っています。
発電容量が大きい国々の特徴に、人口規模が大きいことがあります。総務省統計局「世界の統計2022」のデータをみると、2020年の世界人口の1位は中国の14億3900万人、2位はインドの13億8000万人、3位は米国の3億3100万人です。発電容量に着眼した場合、人口が多く、必要なエネルギー量が大きいことが再生可能エネルギーの取り組みが進む要因の1つとなっていますが、ドイツ(8400万人)のように人口規模がそれほど大きくなくても、政策をしっかりと打ち出し実行していくことで、再生可能エネルギーの取り組みは進むこともわかります。
(新津 尚子)
参考文献
Renewable Capacity Statistics 2022
https://www.irena.org/publications/2022/Apr/Renewable-Capacity-Statistics-2022
総務省統計局「世界の統計2022」
https://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2022al.pdf
「農業が温暖化を解決するとは? リジェネラティブな農業とは?」