3.11のあと、節電の必要性が高まり、あちこちで節電のかけ声と取り組みが広がるのをみて、ある電力会社の方が「節電はもちろんありがたいんだけど、あまりしてもらっても困るんだよね......」とつぶやいていました。
電気代やガス代など、通常のエネルギー料金システムでは、エネルギー事業者の収入は、「どれだけの量、売れたか」によって決まりますよね?
いうまでもなく、このような料金制度では、エネルギー事業者はエネルギーの節約や効率化対策を嫌います。なぜならエネルギー販売量の低下は、収入の低下につながり、結局のところ利益が減ってしまうからです。
もちろん、個人でがんばって省エネはできるけど、本当に大きく社会の省エネを進めるには、「お客さんが省エネしても、電力会社やガス会社が困らないしくみ」が必要ですよね。
この米国の地図を見て下さい。「お客さんが省エネしても、電力会社やガス会社が困らないしくみ」を取り入れている州がこんなにあります。
このしくみは「デカップリング制度」と呼ばれるもので、収入と売上との関係を切り離し、事業者はエネルギー販売量が増減しても公正な報酬を受け取れるというものです。
ちはみに、「カップル」(couple)とは「対にする」「くっつける」という意味で、「デカップル」(decouple)とは、その逆に「切り離す」という意味です。
これまでは「販売電力量」と「収入」が"カップル"でしたが、それを"デカップル"(切り離す)することで、「販売電力量」が増えれば「収入」が増える、「販売電力量」が減れば「収入」も減る、という関係をなくすのです。
こうして、「販売量が減ると収入が減る」という関係がなくなれば、「エネルギーを出来るだけたくさん売らなくては」というエネルギー事業者への圧力が取り除かれます。
デカップリングについての説明は、たとえば
こちらをどうぞ。(英語)
先ほどの地図で見ていただいたように、米国では、デカップリング政策はカリフォルニア州など20の州で導入されています(2012年7月現在、ガスのみ10州、電気のみ3州、ガス・電気両方6州)。例えばカリフォルニア州では、初めてデカップリングが実地されたのは1978年です。
米国のデカップリング制度では、各州の規制当局が「テスト年」の実績を元に収入額を定め、エネルギー事業者は、実際の販売量に関係なく、その収入を得ることができます。定期的に収入額は見直されます。
デカップリング制度では、エネルギー事業者は販売量に関係なく、一定の収入を得られることから、「たくさん売らなくては」という必要性がなくなるうえ、顧客の省エネ・エネルギー効率化を手伝うことで、利益を増やすことができます。
通常、デカップリング制度にはパフォーマンスの目標や効率化のインセンティブが含まれているので、エネルギー事業者には自社のインフラの効率改善やデマンド・サイド・マネジメントをおこなうインセンティブが生じるようになっています。
このようなしくみで、デカップリング制度は、エネルギーの需要と供給を増大させ続けてきた原動力の1つをなくし、「省エネはお客さんにとってもエネルギー事業者にとってもうれしい」ものにするのです。こうしたら、無理やりでなく、自然に(というより、自分たちののためにも)省エネを推進するようになるでしょ
う。
デカップリングのしくみ、日本でも導入できませんか?