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自然エネルギー普及が変えていく企業の役割

2013年07月21日
自然エネルギー普及が変えていく企業の役割

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自然エネルギーの普及・広がりは私たちも日々実感するところですが、それが日本の電源構成を変えていくだけではなく、企業の役割も変えていくことになるとしたら? それに早く気づいて動く企業とそうではない企業には大きな差が出てくることでしょう。「世界自然エネルギー未来白書 2013」の主筆兼研究ディレクターを務められたエリック・マーティノーさん(環境エネルギー政策研究所)への取材からエリックさんの見立てをご紹介します。

なお、世界自然エネルギー未来白書 2013」の日本語版はこちらにあります。http://www.isep.or.jp/gfr

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さまざまな種類の企業の役割が変化する可能性がありますね。まず、電力会社の役割が変化します。

電力供給だけでなく、多くの供給源、配電、区分、さまざまな形態の消費者や、分刻みで制御可能な異なる種類の需要、電気自動車の充電の統合が含まれる、電力システムの管理者になるということです。

電力システムは複合的になります。複数のレベルでの蓄電、電気自動車、エネルギー自立住宅、スマートグリッドがすべて機能して、バランスが取れるようにしなければなりません。電力会社にはそれができます。そうした新しい役割を受け入れなければなりません。

報告書には、このシステム全体のバランスをとるための多くの選択肢が示されています。エネルギー貯蔵だけではありません。日本では誰もが、再生可能エネルギーは変動的だから、エネルギー貯蔵が必要だと考えているようです。しかし、報告書の第2章では、エネルギー貯蔵以外に変動性を緩和するための12の選択肢が示されています。世界各地の電力会社はこれらの12の選択肢のすべてを採用し、取り組んでいます。

ですから、これらをすべて利用する電力会社の役割は変わってきます。需要と供給が顧客負荷を制御します。これはすでにテキサス州で大規模に実施されています。バランスをとるためにはガスのタービンが、エネルギー貯蔵のためには送電網の容量、石炭火力発電所のサイクルを調整するなどの必要があります。

電力会社はこうした選択肢のすべてを採用しなければなりません。バランスをとるという問題に取り組むことが彼らの役割なのです。そうした役割を積極的に受け入れた企業が成功するのだと思います。受け入れずに拒み続ける企業はうまくいかなくなるでしょう。

やり方を変えるときなのです。デンマークでは、電力会社がすでにそうした役割を引き受けています。スペインでも長い間行われています。ドイツはこれから本格的にそうしていかなければなりません。このように、電力会社の役割が変化します。

また、石油会社にも変化が起こります。石油会社はこれまで油田を掘って一つの製品である原油を売るというやり方をしてきており、それを得意としてきました。しかし、石油会社はバイオ燃料の販売を検討し始めています。バイオ燃料の生産と販売で、すでに取り組んでいる企業があります。そして、石油会社の興味深い役割の一つは、沖合風力発電です。

多くのタービンが陸から離れた沖合にあります。沖合風力発電で費用がかかるのはタービンではありません。タービンのコストは全体のわずか3分の1程度です。実は物流のコストが高いのです。長期にわたる運転とメンテナンスにコストがかかります。石油会社が得意とする分野のはずです。なぜなら、すでに沖合での物流の能力を持っているからです。

しかし、石油会社はまだしていません。多くの財源や専門知識を生かすことができます。専門家の多くは、「なぜ石油会社は関与していないんだろう」といいます。

また、日本の専門家から、浮体式沖合風力発電について聞きました。これは他の国にはまだない技術です。日本でも初めての試みであり、本物のイノベーションです。日本の沖合風力発電の成功に欠かせない技術です。日本で沖合の物流の能力をどの企業が持っているのか私にはわからないのですが、 世界では、特に欧州で話題になっており、石油会社の関与を促す声があります。

また、石油会社は自由に使える多額の財源があります。掘削作業に何十億ドルもの費用をかけてきたことからも明らかです。ですから、地熱などの再生可能エネルギーに投資ができるでしょう。資本やキャッシュフローはあるのですから、銀行や債権投資家などの支援を受けなくても、こうした大きなプロジェクトに携わることができるのです。

沖合、金融、バイオ燃料の分野で石油会社が大きな役割を担うことができます。しかし、現時点では特に興味を示していないようです

「私たちはこれをしたい」「これをしている」という発言を見かけるかもしれません。確かに、石油会社は投資しています。フランスのトタル社は、再生可能エネルギーに8年間で20億ドル投資すると発表しています。20億ドルは大した額です。しかし、2,600億ドルと比較すれば、実は大きくありません。しかし、フランスは石油探査に多額の投資をしています。石油会社による再生可能エネルギーへの出資を増やすことです。

他にも2、3種類の企業が関与することができます。たとえば、自動車メーカーです。いま、ほぼすべての自動車メーカーが電気自動車の生産を計画しています。すでに6社以上が生産中です。

電気自動車をどのようにして電力網に統合するかに関心を持つ自動車メーカーもいます。自動車を家とつなげる、いわゆるV2H(ビークル・トゥ・ホーム)のシステムがあります。自動車を電力網のエネルギー貯蔵として活用するのです。数十億台の自動車があるわけですから、充電を管理すれば、風力や太陽光の変動性を補うことができます。統合させるための設計は、電力会社だけでなく、自動車メーカーの仕事でもあるのです。

ですから、自動車メーカーができること、これからするであろうことがたくさんあります。新しいタイプの自動車を生み出すことです。例えば、いま、中国では一般的な電気二輪車があります。米国でも確かオレゴン州にも電気二輪車を生産している企業があるはずです。

また、小型の一人乗り自動車など、電気やバイオ燃料を使ったさまざまなタイプの乗り物が誕生しています。インドには、バッテリーがなく、電気を使ってエアを圧縮させて走る安価な自動車もあります。効率はあまり優れていませんが、バッテリーがいらないので、安上がりです。インドの条件に合っているのです。

可能性といえば、種類、大きさ、形態、燃料、バッテリーなどの技術面で、さまざまなタイプの乗り物が出てくるでしょう。自動車メーカーはもちろんリーダーとしてこうした多様性に対応しなければなりません。この大きな変化の一部になることができるのです。

アウディは、天然ガス自動車を生産しています。天然ガスで走る自動車は、同社のビジネス戦略です。そのガスを作るために再生可能エネルギーを利用したいと考えています。バイオマスから作られる合成天然ガスです。バイオマスのプラントで、廃棄物からの二酸化炭素を利用して合成天然ガスを作ります。

少なくとも2年前に同社は、こうした約束をしました。同社が生産する自動車が使うガソリンと同等の量の合成天然ガスを再生可能エネルギーを使って作り、送電網に供給するということです。そうすることで、同社の自動車は「ゼロ・エネルギー」または「ゼロ化石燃料」になると考えました。直接的ではないが、環境会計の考え方ですね。とても興味深いコンセプトです。

これはアウディのやり方ですが、ほかにもさまざまな方法があります。第2章の輸送での統合では、自動車会社がどのようなことをしているか、多くの例を取り上げています 。

4番目はIT企業です。私はまったく予想していなかったのですが、再生可能エネルギーの未来において、IT企業が果たす役割はかなり大きく、驚くばかりです。ソフトバンク社はすでに参入していますね。同社の孫氏はご存知だったのでしょう。

しかし私は、以前はITについてまったく考えていませんでした。もちろん、スマートグリッドなどのすべての通信、スマートメーターは自動車を送電網につなぐことができます。充電や需要反応などもすべてITを必要とします。そう考えれば、いわば当然だと思えます。

風力発電会社のCEOと話したとき、風力発電業界は現在、世界最大のスーパーコンピューター利用者だと聞きました。スーパーコンピューターの設計は非常に洗練されていて、自動車だけでなく航空機にも採用されているほどです。風力発電所に多数の風力タービンを設置する際は、風速を計り、ここで風力が下がり、ここで風力が上がっているなど、異なる場所にタービンを設置した場合の反相関を求めて、トータルとして均一になるようにします。

出力が均一になるように、タービンの設置場所を厳密に決めるためには、かなり洗練された計算とモデリングを使う必要があります。また、タービンすべてに関するデータ地点が数百あり、故障する前に検知して、点検に出して修理することで、メンテナンスのコストを削減しています。洗練されたモニタリングのおかげです 。メンテナンスコストの削減は大きな課題です。ですから、IT分野から多くの人材を雇用しています。私はそうしたことをまったく予想していませんでした。

また、大きなビル向けの建築ガラスや、屋根ふき材などの建築資材製造者は、再生可能エネルギーをビジネスの中に取り入れなければなりません。太陽光発電装置付き建築ガラスを通常の太陽光発電装置なしの建築ガラスと同じ価格で売らなければなりません。

太陽光発電装置は実質的にタダです。ガラスそのものが高価だからです。ガラスはもともとは装飾用に作られました。太陽光発電用ガラスが、装飾としても通常のガラスと同等の美しさを提供できるならば、人々は装飾としての価値にお金を払うのですから、太陽光発電は基本的にタダになります。

そのためには、そうした製造業者が考え方ややり方や生産などを見直す必要があります。しかし、私が話した太陽光発電の専門家の多くは、こうした動きが今後出てくるだろうと話していました。

5年後、10年後には、建築ガラスのパンフレットで太陽光発電用ガラスが標準仕様になるだろうと言っていました。しかし、建築ガラスは世界各地へ輸送すると非常に高くつくため、建築資材の製造業者の地元で流通されることが多いです。そうなると、世界各地で地域の市場向けに生産している、多数の地元の中小企業に影響を及ぼさなければなりません。それは難しく時間がかかるかもしれません。

しかしながら、誰かが始めれば、みんなが右に倣うでしょう。また、建築家も、太陽光発電ガラスは同じガラスで、コストも同じだから使えるというように、設計を変えたり、配線などの特徴を学んだりしなければなりません。ですから、これが実現するためには、大きな学びのプロセスを経なければなりません。建築資材業者はこのプロセスの中心的存在なのです。

このように、電力会社、自動車メーカー、IT企業、建築資材業者は、どれもがビジネスを変えていけるということです。何をするか、どうするか、製品のタイプ、考え方を変えていきます。最初に取り組む企業が勝ち、そうしない企業は最終的に負けるでしょう。

私が思うに、中国の企業が勝つでしょうね。中国はこのことがわかっていて、長年考えてきましたから。中国にとって再生可能エネルギーは環境とは無関係で、産業の発展や競争力のためという位置づけです。「世界の産業市場で勝つ」「このテクノロジーのリーダー」になるという意気込みがあります。風力発電技術は、ミサイル技術のように、中国の戦略的技術になりました。ですから、私は中国が勝つと思うのです。問題は、日本の業界がどうなるか、ということです。

日本はこれから何が起きるかわかっているのでしょうか? リーダーになり、急いで進めて、まわりについていき、合わせるつもりはあるのでしょうか? そうしなければ、取り残されるだけです。

 

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