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英国と日本の削減目標~IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書の政策決定者向け要約より

2013年11月03日
英国と日本の削減目標~IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書の政策決定者向け要約より

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イギリスのエネルギー・気候変動省は10月10日、「2020年に34%削減」という目標達成にむけて着実に進んでいることを発表しました。日本では「2020年度までの温暖化ガス排出量を05年度比で3.8%削減」という新たな目標?という報道が。これでは1990年度比3%ほどの増加です。9月末のIPCC第5次報告のメッセージは知らんぷり? IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書の政策決定者向け要約よりポイントをお伝えしましょう。

イギリスのエネルギー・気候変動省は10月10日、「2020年に34%削減」という目標達成にむけて、着実に進んでいることを発表しました。

日本は?

今月のCOP19に提示する目標が未だに決まらない日本ですが、「2020年度までの温暖化ガス排出量を05年度比で3.8%削減」という新たな目標を打ち出す方向で調整に入った、という報道がありました。

1990年から2005年の間に排出量は増えていますから、1990年度比では3%ほど増えることになります。9月末に出されたIPCC第5次報告でも「大きな排出削減が必要」と強く訴えられているタイミングで、これまでも全く十分ではないと言われていた「90年比6%削減」よりも後退する目標というのは......。


IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書の政策決定者向け要約の日本語訳は
ちらにあります。


大事だと思うポイントをいくつかお伝えしましょう。

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IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書の政策決定者向け要約より

●観測事実

気候システムの温暖化には疑う余地がない。

1950 年代以降、観測された変化の多くは数十年~数千年間で前例のないもの。大気と海洋は温暖化し、雪氷の量は減少し、海面水位は上昇し、温室効果ガス濃度は上昇している。

具体的には、1880~2012年において、世界平均地上気温は0.85℃上昇しており、
最近30年の各10年間の世界平均地上気温は、1850年以降のどの10年間よりも高温。

1950 年頃以降、多くの極端な気象および気候現象の変化が観測されている。

世界規模で、寒い日や夜の日数が減少し、暑い日や夜の日数が増加、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアの大部分で熱波の頻度が増加、特に北米とヨーロッパで強い降水現象の頻度・強度が増加している可能性が高い。

●温暖化の要因

気候システムに対する人間の影響は明白。

人間活動が20世紀半ば以降に観測された温暖化の主な要因であった可能性が極めて高い(その確率は前回の90%から95%以上へ)。

●将来予測

1986~2005年を基準としたとき、今世紀末における世界平均地上気温の変化は最
大4.8℃。世界平均海面水位の上昇は最大0.82m。

ほとんどの陸上で極端な高温の頻度が増加することはほぼ確実。中緯度の大陸のほとんどと湿潤な熱帯域において、今世紀末までに極端な降水がより強く、頻繁となる可能性が非常に高い。

●メッセージ

温室効果ガスの継続的な排出は、更なる温暖化と気候システム全ての要素の変化をもたらす。気候変動を抑制するには、温室効果ガス排出量の大幅かつ持続的な削減が必要。

二酸化炭素の累積排出量が温暖化の大部分を決定づけるため、気候変動の大部分は、たとえ二酸化炭素の排出が停止したとしても、何世紀にもわたって持続する。

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先日京都でのシンポジウムでご一緒した温暖化科学者の江守さんが「1兆トン」というサイトを教えてくれました。
http://trillionthtonne.org/

「2℃を超える温暖化を避けるためには、累積排出量を1兆トン以下に抑えなくてはならない」

今までの累積排出量の現在の値を見て下さい。そして、今のペースが続くと、1兆トンをいつ超えてしまうかも......。

 

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