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あなたの地域は漏れバケツ? お金は地域にとどまっていますか?

2014年03月31日
あなたの地域は漏れバケツ? お金は地域にとどまっていますか?

Image by Rick Chung. Some rights reserved.

http://www.flickr.com/photos/rickchungattw/7738234724/

秋田県知事が平成25年度の「職員に対する年度初めの挨拶」で、「"工場誘致"という言葉はもう死語であります」とおっしゃっていました。工場やショッピングモールなどを誘致して、給与や売上げという形で一時的にお金が入ってきても、すぐに地域から出て行ってしまうお金ばかりだとしたら、じゃじゃ漏れのバケツに懸命になって水を注ぐようなものです。そうではなく、どうやって地域でお金を循環させるのか? お金の"地域滞留時間"をどう伸ばすことができるのか? が大事ではないでしょうか。そのために役立つ考え方をご紹介します。

秋田県知事が平成25年度の「職員に対する年度初めの挨拶」で、「"工場誘致"という言葉はもう死語であります」とおっしゃっていました。以下のような趣旨です。

・今までは雇用というと市町村も県もどこへ行っても「工場誘致」だったが、 「工場誘致」という言葉はもう死語だ。

・産業・経済・雇用も、よそを頼らず、まずは自分のところで興していく。

・そういう意味で、中小企業、地場産業、あるいは秋田の農業資源、林業資源、 水産資源、あるいは人材、空気、水、文化・スポーツも、全て資源だ。

工場やショッピングモールなどを誘致して、給与や売上げという形で、一時的にお金が入ってきても、そのお金がその地域に残るのか、すぐに出て行ってしまうのかこそが、地域にとっては大事なのだと思います。

ちなみに、米国で「ウォールマートが町にあると、たくさんの人が買い物に来て、お金を落としていくけれど、そのお金はその夜のうちに、ウォールマート本社の口座のあるニューヨークへ送金されてしまうから、町には何も残らない」と聞いたことがあります。

地域にお金を「落とす」「持ってくる」ことをがんばっても、すぐに地域から出て行ってしまうお金ばかりだとしたら、じゃじゃ漏れのバケツに懸命になって水を注ぐようなものです。

そうではなく、どうやって地域でお金を循環させるのか? お金の"地域滞留時間"をどう伸ばすことができるのか? が大事ではないでしょうか。

JFSの「地域の経済と幸せ」プロジェクトでは、そういった観点を重視し、いろいろな理論や事例を探し、発信していますが、そのなかから「漏れバケツ」の考え方と、地域でお金が循環するとはどういうことなのかを示す「地域内乗数効果」の考え方をご紹介します。

JFS 「地域の経済と幸せ」プロジェクト

漏れバケツ理論~Plugging the Leaks
(内容は以下と同じですが、図などはこちらのスライドをご覧下さい)
http://www.japanfs.org/ja/files/wbg_131205_02.pdf

~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~

お金が多くの人の手に渡りながら地域内を循環することは、地域経済にとって大きな意味を持っています。ここではこの効果について、英国のシンクタンクnefが提唱する「漏れバケツ」という考え方を、nefの許可を得てご紹介します

英国のロンドンに本部があるNew Economics Foundation 〔通称 nef〕 が提唱している考え方に、「漏れバケツ」と「地域内乗数効果」があります。この考えは「地域内でお金が多くの人の手に渡り、循環することの重要性」をわかりやすく私たちに伝えてくれるものです。

●「漏れバケツ」とは何か

当たり前ですが、スイミング・プールに水がはられていなければプールとしての意味がありません。プールに水が入るように、地域の中にもお金が入ってきます。地域に入るお金は、投資や観光収入など様々な形態があります。

普通は、地域にお金さえ投入すれば、地域経済は良くなると考えられています。でも実際には、かなりの金額を投資しても地域は貧しいままということがあります。なぜでしょうか? その一因は、先程のプールの話に例えれば、まるでプールから水が漏れているかのように、地域からお金が漏れていることにあります。これが「漏れバケツ」です。

それでは、どうして地域からお金が漏れてしまうのでしょうか? 「漏れバケツ」の原因を考える際、押さえておくポイントが2つあります。

1つめは「実際に地域に入ったお金は幾らか」ということです。これは逆に考えた方が分かりやすいかもしれません。つまりどの程度の金額が、すぐに地域外の企業や業者に渡ってしまったのかということです。これが地域内に留まることなくすぐに漏れ出してしまったお金です。

2つめは、地域内に留まっているお金が、その地域から出ていく前に何回その地域内で使われたかです。地域内で何回も使われるお金は、それだけ多くの人や企業、お店の収入になります。

例えば、地元のパン屋でパンを買った場合、それは地元のパン屋の収入になります。そしてそのパン屋がパンの材料を購入するために、地元のお店で小麦粉などを買ったならば、そのお金はさらに地元のお店の収入になるのです。

●「漏れを防ぐこと」と「小水路をつくること」

この地域内にお金を留まらせることと、お金を循環させることをnefは「漏れを防ぐこと」と「小水路をつくること」に例えて説明をしています。

まず、「漏れを防ぐこと」ですが、これは地域内からお金を出さないようにするということです。観光や投資によって地域にお金が入っても、それが遠くにあるデイケアセンターや、建設業者の支払いに使われてしまった場合には、いわば「だだ漏れ」で、すぐに地域外に出ていってしまいます。

事例を紹介すると、英国のあるトヨタの工場では部品を調達している会社が240社ある中で、地元の業者はたったの5社だけだそうです。

またスコットランドのある電気メーカーでは、使われている金属部品のうち、スコットランド製のものは12%だけだったそうです。つまり他はすべて外部から調達していることになります。いくら地元に企業があっても、部品などを買うために使われるお金が地域外に出て行ってしまえば、地域の経済にはあまり寄与していないことになります。

このように地域内でものを買うことは地域の経済に貢献することであり、地域外から調達される場合はその貢献度が低くなるのです。そして、地域内から調達していることは少ないのです。これが漏れを防ぐことの重要性です。

次は「小水路をつくること」です。十分に雨が降らない場合、対策として大規模な灌漑用水路を引くことができます。これを地域のお金の話に戻すと、地域への大規模な資金投入は、この大規模灌漑にあたります。

ただし大規模灌漑では、水が行き渡るのは水路の周辺だけで、他の地域には水は行き渡りません。これはお金でも同じで、大規模な資金投入をしても、利益を受ける人はそれほど多くない可能があります。

それをより多くの人に行き渡らせるためには、小さな水路を分岐させていくことが重要です。この小水路によってお金を循環させることで、地域の隅々まで地域に入ったお金を行き渡らせることができます。また小水路をつくることにより、次に説明する地域内乗数効果が働きます。

●地域内乗数効果

地域内乗数効果は地域に入ったお金が地域から漏れ出さずに人々の手に渡る場合、どの程度の効果があるのかを理解するときに役立つものです。

わかりやすくするために、ここでは、AさんとBさん二人のお金の使い方のパターンで比べてみましょう。

まず、Aさんは、よく地域の外で買い物します。それに対して、Bさんは、地域内で買い物するパターンが多いです。この2つのパターンが続いた場合、AさんとBさんの同じ10,000円という収入が、地域の経済に及ぼす影響はどれほど違うのでしょうか。

ます?、Aさんのパターンは、10,000円のうち8,000円を地域外のスーパーで使い、2,000円を地域の八百屋やクリーニング屋で使うとします。この場合、地域に残るお金は20%です。

Bさんの場合は、10,000円のうち8,000円を地域のパン屋や八百屋で使っているとします。この場合、地域に残るお金は80%です。そして、もしパン屋の従業員が地域の人だったら、Bさんのパン屋への支払いは従業員の給与として、さらに地域に留まることになります。

少し極端なパターンですが、このAさんのパターンとBさんのパターンがずっとくり返されるとどのような違いが生じるでしょうか。

まず、Aさんの20%しか地域に留まらない場合ですが、一巡目では10,000円のうち 2,000円だけが地域に残ります。その2,000円のうち、同じように20%が地域内に残った場合、地域に残るのは400円です。三巡目では地域に残るお金はたった80円です。これらの金額を一巡目から足していくと、10,000 円、2,000円、400円、80円、全部で12,480円。12,480円分地域内で使われたことになります。

20%が地域にとどまる場合
1巡目:10000円→2000円
2巡目:2000円→400円
3巡目:400円→100円
4巡目:100円
地域内で使われるお金は
10000円+2000円+400円+80円→12,480円

それに対して、80%が地域に留まるBさんのパターンの場合、 一巡目では10,000円のうち8,000円、二巡目では8,000 円のうち6,400円、三巡目では6,400円のうち約5,100円が地域に残ります。Aさんのパターンに比べてたくさんの金額が地域内を循環していることがわかります。

このパターンの場合、地域内に残るお金が100円以下になるのはなんと21巡目です。計算はここでは省きますが、一巡目の10,000円、二巡目の8,000円と足していくと、最終的には約50,000円になります。

80%が地域にとどまる場合
1巡目:10000円→8000円
2巡目:8000円→6400円
3巡目:6400円→約5100円
4巡目:5100円→約4100円
5巡目以降・・・・

地域内で使われるお金は10000円+8000円+6400円+・・・(100円以下になるのは21巡目)→最終的には約50,000円

Aさんの場合は12,500円だったのが、Bさんのパターンの場合は最終的には50,000円になるのです。つまり同じ10,000円でも、地域内でお金が循環することよってこれだけの差が生じてくるのです。

これが1億円、2億円といった単位のお金の場合には、もっと大きな効果があることになります。小水路を巡らせてはじめて様々な人に、投資されたお金が行き渡り、元の金額以上の影響を地域に与えます。

この地域内乗数効果も、そもそもお金がなければ機能しません。そのために水源としてのお金は必要です。地域への再生財政支援はその水源の役割をしています。

ただ多くの場合、残念なことに、投資しても地域がお金をはじく「傘」をさしてしまっているかのように、お金は近隣の豊かな地域に出ていってしまいます。それは、本部が大都市にある大型スーパーマーケットでの買い物や、外部の建設会社に仕事を依頼することによって生じるのです。

「地域でお金を使う」ということは、私たちが普段思っている以上に大きな意味があるということを、「漏れバケツ」と「地域内乗数効果」の考え方は、わかりやすく教えてくれます。そして、私たちは毎日の買い物を地域のお店ですることで、地域の経済にいつでも貢献することができるのです。

この漏れバケツと地域内乗数効果についてはnefの許可を得て、JFS 「地域の経済と幸せ」プロジェクトのウェブサイト(http://www.japanfs.org/ja/projects/local_wellbeing/index.html)の中でスライド付きで紹介していますので、興味がある方は是非ご覧下さい。


参考資料
nef, 2002, "Plugging the Leaks"
http://www.pluggingtheleaks.org/downloads/ptl_handbook.pdf
nef, 2002, "The Money Trail"
http://dnwssx4l7gl7s.cloudfront.net/nefoundation/default/page/-/files/The_Money_Trail.pdf

 

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