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レスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からのリリースを、実践翻訳チームが訳してくれましたので、お届けします。米国でのレジ袋をめぐる動向です。
日本ではずいぶん前からマイバック運動やレジ袋の有料化が進められてきましたが、国が違うと状況もずいぶん違うんだなあと思います。
米国で広がるレジ袋の禁止
ジャネット・ラーセン、サヴィナ・ヴェンコヴァ
http://www.earth-policy.org/plan_b_updates/2014/update122
ロサンゼルス市は2014年の幕開けとともに、大型小売店でレジ袋を渡すことを禁止した。これは、全米132の市や郡が実施に踏み切る中、最大規模のものだ。こうした動きはカリフォルニア州で弾みがつき、今や全国に波及している。レジ袋の使用を禁止あるいは有料にする自治体に住む米国人は2,000万人を超えているのだ。
現在、毎年1,000億枚ものレジ袋が――1日当たり一人につきほぼ一枚――消費者の手に渡っている。横に並べると、地球を1,330周する長さになる。しかし、その数も、近いうちに減るだろう。ニューヨークやシカゴなどの大都市を含む多くの自治体が、景観を損ね、下水や川の流れを堰止めるプラスチックごみの削減に取り組んでいるためだ。
今ではどこでも手に入るレジ袋だが、その歴史は比較的新しい。発明されたのは1962年、スウェーデンである。使い捨てできる買い物袋として初めて市場に登場したのは1970年代、モービルオイル社が石油化学誘導品であるポリエチレンの市場拡大を図ろうとしたことによる。
1976年に米国でレジ袋が市場に出回ったときは多くの買い物客が敬遠した。袋を棚から取り出すときにレジ担当者が指をなめるのが嫌だったし、袋に食料品を詰め込むと、破れたり溢れたりして腹が立ったからだ。それでも、レジ袋は紙より安上がりで場所も取らなかったから、小売店は積極的に採用を続けた。今の世代の人たちにとっては、レジ袋をもらえない買い物は、およそ考えられないことだ。
レジ袋の人気は、その軽さと、誰が見ても分かるその値段の安さにある。しかし、まさにこの特質がレジ袋の管理を不快で難しくするとともに、多額の費用がかかるものにしている。
全プラスチック製品の1/3以上が短期間の利用を意図した包装用のものだ。レジ袋は何百万年もかけて生成された天然ガスか石油から作られるが、利用されるのは多くの場合ほんの数分間だけ、後はゴミ捨て場や焼却場に運ばれ、そこで処分されてしまう。途中風に吹き飛ばされ、ゴミになるのでなければ、の話だが。レジ袋を12枚作るのに必要なエネルギーで、車なら1マイル(約1.6キロメートル)走らせることが可能だろう。
埋め立て地や水路にあるプラスチックは分解し難く、何百年も残り続ける。年がたつにつれて細かな破片に壊れ、化学成分が染み出てくるが、完全に消えてなくなることはない。レジ袋を餌と勘違いする動物は、レジ袋に絡まるか、身体を壊すかして、死んでしまう。
最近の研究では、廃棄したレジ袋から出たプラスチックが、実際、海中に流出した農薬や産業廃棄物のような汚染物質を新たに吸収し、海洋生物のもとに大量に運ばれていることが判明している。この有害物質は、その後食物連鎖の階段を上り、人間の口に入る可能性がある。プラスチックやそれが含む様々な添加物は、内分泌系や生殖器系の障害、不妊、さらにはある種のガンにつながる可能性など、人間の多くの健康問題に大きく関係している。
長い海岸線が走り、多くの浜辺があるカリフォルニア、浜辺に散乱するプラスチックのごみは、ここではごくありふれた風景だ。カリフォルニアは米国のレジ袋反対運動の発祥地である。この国で最初にレジ袋の使用を規制した市はサンフランシスコだった。
同市は2007年にまず、大型のスーパーマーケットや薬局チェーン店を対象に堆肥化できないレジ袋の使用を禁止した。2020年までに「ゴミをゼロに」する総合戦略の一環として(現在ゴミの8割が埋立地には行かず、リサイクル業者やコンポスターに回っている)、2012年から2013年にかけてその適用範囲を他の店舗やレストランにまで拡大している。
ここではリサイクルされた紙袋や堆肥化される袋の欲しい人は最低でも10セント(約10円)支払わなければならない。しかし、レジ袋を禁止しているほかの市と同様に、野菜や果物、量り売りの商品を入れる袋は今でも無料である。サンフランシスコはカリフォルニア州でポリスチレン(普通は発泡スチロールと呼ばれている)製の食品容器の使用を禁止しているいくつかの市の一つでもある。市は、公用地でペットボトルの飲料水を販売することも禁じており、使い捨てプラスチック容器の禁止にさらに一歩踏み出した形だ。
全体では、カリフォルニアのレジ袋禁止は同州の人口の1/3をカバーする地域にまで及んでいる。小売店が購入するレジ袋は、2008年の4万8,500トンから2012年には2万8,100トンにまで減少したと報じられており、レジ袋の生産者やプラスチックの製造業者にとっては看過できない事態だ。
ほとんどの条例に、米国化学工業協会(ACC)のようなプラスチック業界の団体から、訴訟が起こされている。裁判所は条例を強く支持しているが、サンフランシスコに続いて条例を通した他の自治体は、訴訟を恐れてレジ袋の禁止に踏み切れず、また、ほかの自治体も条例案そのものの提出を見送っている。
皮肉なことに、そもそもプラスチック業界の反対がなければ、カリフォルニア州でレジ袋を禁止するところまで思い切った規制をするような自治体は、はるかに数が減っていただろう。その代わり、自治体の多くはレジ袋に料金を課すことを選択したかもしれない。しかし、2006年には、業界側の支持する現地法が成立し、同州の小売店に対してレジ袋のリサイクル導入計画の立案を求めていたから、これは許される選択ではなかった。
同州は最初、2010年にレジ袋の禁止を決め、その時からこの運動を全州に広めようとしてきた。しかし、資金の豊富な業界側のロビイストは今もこれに反対を続けている。新条例案は、前回反対した州議員だけでなく、カリフォルニア食料品業者協会の協力を得て、2014年に議会で賛否が問われることになりそうだ。
ワシントン州のシアトルでも同じ動きがある。2008年に市議会は食料品店やコンビニ、薬局などに対しレジで手渡される使い捨ての買い物袋を20セント(約20円)の有料にする法案を通過させた。これに対し、米国化学工業協会が先頭に立ち、140万ドル(約1億 4,000万円)の費用をかけて反対運動を展開、条例が施行される前に「住民投票」(バロット・イニシアティブ)を行い、その動きを阻止した結果、2009年8月、条例は撤回された。
しかし、シアトル市側はあきらめなかった。2012年にプラスチック製のレジ袋は禁止、紙袋は5セント(約5円)の有料となった。この条例の撤回を求める署名集めは失敗に終わっている。このほか、ワシントン州では州都オリンピアをはじめ、11の司法管轄区も、レジ袋を禁止している。(米国におけるレジ袋廃止への取り組みと年表をご覧ください)
http://www.earth-policy.org/plan_b_updates/2014/update122
たくさんの州政府が反レジ袋法案の提出に前向きであるが、州全域におよぶレジ袋の有料化や使用禁止が適用された例は一つとしてない。事実上全州で禁止しているのはハワイだけだ。人口の集中する4つの郡では食料品店のレジからレジ袋を一掃しており、2015年7月には最後の島で施行が始まる。
浜辺で有名なもう一つの州、フロリダ州では、各自治体の反レジ袋法案の成立を合法的に阻止している。最近、そうした州の障壁を排除する動きがあったが、2014年4月に否決されている。しかし州議会議員の話では、この件は年の後半には再燃しそうだ。
テキサスは米国のプラスチック市場の44%を占め、米国最大の製袋業者の一つ、スーパーバッグ社をはじめ大手レジ袋メーカー数社の本社があるにもかかわらず、この地で反レジ袋運動が起こっている。
同州でレジ袋の禁止に積極的なのは8つの市と町だ。ほかにサン・アントニオのように、そうした動きに追随するか否かを検討中の自治体もある。オースチンは、一日当たり2,300ドル(約24万円)を超える費用がかかっていたレジ袋の処理費用削減を狙い、2013年にレジ袋の使用を禁止、比較的小さなフォート・ストックトン市やカーミット市も牧場主から家畜の牛がレジ袋を食べて死んだとの苦情を受け、それぞれ2011年と2013年に禁止した。
レジ袋は綿畑を汚染することでも知られている。収穫用の農機具がレジ袋を巻き込み、綿の品質が下がるのだ。またテキサス州ダラスでは、州の半分以上に水を供給しているトリニティ川流域が、プラスチックで汚染されているというやむを得ない理由で、5セント(約5円)のレジ袋有料化法案が可決され、2015年から施行される。
ワシントンD.C.は、米国の自治体として初めて、食料品店や酒店に対して、プラスチック製や紙製の買い物袋一枚につき5セント(約5円)の料金を買い物客から徴収することを求めた。この収益の一部は徴収に係る経費として店側に支払われ、またその他一部はアナコスティア川の浄化活動に充てられる。今ではワシントンD.C.の買い物客のほとんどは、外出時には大抵マイバッグを持参している。ある調査によると80%の消費者がレジ袋の使用量が減ったと回答し、90%以上の企業はこの法律を肯定的あるいは中立的に受け止めているという。
メリーランド州モンゴメリー郡はワシントンの例に倣い2011年にレジ袋を有料化し、5セント(約5円)にする法案を可決した。この郡の買い物客と、反レジ袋法案が成立しなかった近隣のプリンスジョージズ郡の買い物客を比較した最近の調査では、モンゴメリー郡の店では再利用できる買い物袋が7倍も多く使われていることが分かった。ただでもらえていたレジ袋がお金を払って買わなければならない商品になって、買い物客たちはその商品に5セント硬貨を余計に支払う価値があるかないかを考え、すぐに、マイバッグを持ち歩くことを習慣にしたのだ。
プラスチック製品の需要低下を懸念して、業界が考えている一つの戦略がある。リサイクルを推進することでレジ袋に関する人々の見方を変えてしまおうというのだ。もっともリサイクルも長い目で見ればよい問題解決法であるとは言えない。
大量のレジ袋(地域によっては97%以上)が、リサイクルできないままだからだ。たとえ利用者が良かれと思ってやっていても、食料品店の店先の回収箱から風で吹き飛ばされてしまったり、リサイクル収集車から吹き飛ばされていったりしている。
リサイクル施設に届けられたとしても、 レジ袋は厄介者だ。ほかのリサイクル品と一緒になると、選別機に引っ掛かり、機械を傷めてしまう。そうなると、機械の修理には多額の費用がかかる。カリフォルニア州サンノゼ市はレジ袋のリサイクル率は4%にも満たないが、2012年にレジ袋禁止法が施行される前は、レジ袋で壊れた機械の修理に年間約100万ドル(約1億円)もの費用がかかっていた。
ニューヨーク市、フィラデルフィア市、シカゴ市などレジ袋のリサイクル計画に賛成の多くの自治体では、レジ袋規制案は棚上げされてきた。しかしニューヨーク市は2014年3月に法案を提出し、市内全域で使い捨て袋を10セント(約10円)の有料にする方向に動きそうだ。シカゴ市もプラスチック製レジ袋の禁止に傾いている。
レジ袋は登場してから60年とたたないうちに、その影響は広範囲に及ぶようになった。そうした中で、レジ袋の使用を制限する法案を施行することは、エネルギーが人為的に安く設定された世界にまん延する使い捨て消費主義への挑戦である。
米国の天然ガス生産が急上昇し価格が下がるにつれて、プラスチック業界は国内向け生産に力を入れようとしている。しかし、ごく短い期間しか使われず、しかもほんの少しの風にさえ吹きとばされて、永遠に汚染の原因となり続けるようなものを作るために、化石燃料という恵みを消費するのは筋の通らない話である。それも、レジ袋に取って代わる、再利用可能な袋がすぐにも手に入るというときにである。
次号のアースポリシー研究所リリースは、レジ袋に対する国際的な対策を扱う予定である。詳細な情報については www.earth-policy.org. を参照のこと。
メディア関連の問い合わせ:
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電話:(202) 496-9290 内線14
アースポリシー研究所
1350 Connecticut Avenue, NW Suite 403 Washington, DC 20036
換算レート: 1ドル=103円(2014年7月31日)
(翻訳:酒井、山口)