Image by hiroshi ataka Some rights reserved.
ここ数年、「シェア」が日本でもブーム&ビジネスになってきましたね。カーシェアリング、サイクルシェアリング、シェアオフィスなどなど。海外と比べても面白い展開だなーと見ているのが「ユニークなシェアハウス」が次々と登場していること。少し前にJFSのニュースレターで世界に発信した記事をお送りします~。
シェアルームがふつうに根付いている米国などとは異なり、日本では「家や部屋を他人とシェアする」ことはあまり行われてきませんでした。ところが近年、シェアハウスが急速に広がりつつあります。「家をシェアして住む」ことが、住まい・暮らしのあり方として受け入れられるようになり、ビジネスとしても熱い注目が集まっています。今回は、日本におけるシェアハウスの動向とひろがりについてお伝えしましょう。
シェア住居を専門とするひつじ不動産による「シェア住居市場 統計データ」を見ると、日本でのシェアハウスの物件数と住戸数は、2013年の3月末時点で1,378物件、19,208戸。この数年は年率30%ほどで増加しており、3年間で約2倍となりました。ここ1、2年のあいだに増えてきた印象を持つ人が多いかもしれませんが、以前からコンスタントに増え続けていることがわかります。
http://www.hituji.jp/comret/survey/20130418-100000-thanks-report
同統計データの入居者の年代を見ると、2010年まで増え続けていたのは20代前半でしたが、2010年からの3年間で最も拡大したのは30代で、40代も増加傾向にあります。これにともない、平均年齢は、2007年の27.7歳から、2012年には28.9歳となり、5年間で1.2歳上昇しています。
男女共用の物件に限って男女比を見ると、およそ4対6で安定しています。入居者の雇用形態や職業については、2012年の入居問合せ数全体に占める正社員の割合が5年前に比べておよそ16%拡大、非正規雇用と正社員の割合は2010年には逆転しています。学生は20%に達した2009年をピークに一貫して縮小し続け、約12%。社会人の就業先業種分布に大きな偏りは見られず、多種多様なバックグラウンドを持つ人々が暮らしているといえるでしょう。
このように、広い層から人気を集めているシェアハウスですが、近ごろ共通の趣味や課題を持った仲間が集う「コンセプト型シェアハウス」の開設が相次いでいます。寝起きを共にしながらランニング、英会話、ダイエット、子育てに起業など、明確なコンセプトを掲げることでプラスアルファの価値をアピールするシェアハウスも登場しています。いくつかご紹介しましょう。
「早朝、トレーニングウェア姿の女性がさっそうと走り出す。ランニングの後は広いキッチンを囲んでみんなで朝食――」。シェアハウスを20軒近く運営するフレッシュルームは、こんなイメージで東京・神宮前の住宅街に「フレッシュ シェア神宮前」を開設しました。近隣は明治神宮外苑や代々木公園などランニングの人気スポットが多いことから、活動的で走ることが好きな女性にターゲットを絞り、内装や設備は女性のマラソン大会を運営する一般社団法人ランガールの助言を受け、ヨガができるようにと屋上には木製のデッキを敷き詰め、疲れが取れるようにバスタブも設置しています。
http://www.fresh-share.jp/
暮らしながらスキルアップができるシェアハウスも登場しています。彩ファクトリーが都内に開いた「クロスワールド大森」は、英語が学べることが特徴。2人のネイティブスピーカーが住み込み、共用の居間では英語で話すルールです。30部屋を用意した個室は「続々と入居が決まり、順調な滑り出し」とのこと。事業者にとっては「入居者が同じ趣味や境遇の人を誘うため、目的が明確な人が集まる。だから宣伝費が抑えられる」ことが利点とのこと。
http://crossworld-residence.com/
「1kg減量で家賃が1000円安くなる!」株式会社ブロードエンタープライズが運営する「Beauty & Diet」は、ダイエットをホンキで達成するための女性専用シェアハウス。同じ気持ちを持った仲間と一緒に、トコトン美を追求したい、美しく引き締まった身体になりたいという女性の願望をシビアにかなえるための仕掛けがたくさんあります。体重の増減によって家賃が決まる制度のほか、プロのエステティシャンが食事・睡眠・入浴・排泄等のアドバイスを行う無料サービス、エクササイズルームもあります。
http://www.beautydiet-house.jp/concept/
また、社会的課題への視点を持ったシェアハウスも登場しています。ストーンズ・アフィットが神奈川県に展開するシングルマザー専用のシェアハウス「ペアレンティングホーム高津」では、週2回のチャイルドケアや、お母さん同士・子ども同士のコミュニケーションを通して、充実した生活を提案しています。東急電鉄プロデュースの「ひとり親で子育てをしているシングルペアレント」のためのシェアハウスも2014年に都内にオープンする予定です。
http://s-affitto.co.jp/ph_takatsu/http://stylio.jp/daikanyama/
起業家育成を掲げるシェアハウスも登場しています。コネクトハウスが展開する「起業家・プロ育成シェアハウス」は、「様々な分野でプロや起業を目指す仲間との暮らしで切磋琢磨」する狙いで、ベンチャーキャピタルと著名人がプロデュースしました。目的意識を持った仲間や各分野のプロフェッショナルが集い、生活を通して起業家精神を育んでいくシェアハウスです。ビジネスアドバイザーを招待した交流会やレクチャーも行っており、経営戦略、マーケティング、会計、人事管理などのスキルを身に付ける機会を提供。定期的に開催されるビジネスコンペティションに認められれば創業資金が得られ、独立のチャンスも拡がります。
http://www.connect-house.com/sharehouse/
起業家教育を手がけるウィルフが展開する、起業家をめざす学生向けのシェアハウスもあります。学生たちが共同生活で刺激しあえるよう、共有スペースにオフィス機能を持たせ、月に1度、先輩経営者からフィードバックが受けられる場も提供しています。
http://willfu.jp/startup_village
ほかにも、コンセプト型シェアハウスのポータルサイト「コリッシュ」(http://colish.net/)が手がける、リビングを図書館にした「ココハウス方南町」や、異業種クリエイターが集まるものづくり系シェアハウス「渋谷モクモクハブ」、半農半Xライフを実現できるコミュニティシェアハウスなどユニークな住まいも誕生しています。
http://colish.net/concepts/359
http://colish.net/concepts/179
http://colish.net/concepts/276
また、多彩な人が触れ合うことをコンセプトにした大型物件もあります。株式会社リビタが東京・原宿で運営する「ザ・シェア」では、シェアハウスとシェアオフィスを合体させ、200人超の人々が日常的に出入りしています。居住者用のラウンジやキッチン、ダイニング、シアタールーム、ライブラリーなどの共用スペースは、「人と生活、情報、カルチャーが豊かに交流する場」としてオフィス契約者にも一部開放されています。建物内に内包された様々なコンテンツやモノ・コトをシェアし、「集う・暮らす・創造する」時間を楽しく、魅力的に過ごせる空間を目指しています。
https://www.the-share.jp/
アブラハム・マズローの「欲求の5段階」でいえば、もともとは「安全欲求」を満たすことが主要な目的だった「住まい」が、ほかの人と暮らしの時空をシェアすることで、「帰属欲求」や「承認欲求」を満たす機能も持つようになり、ここで紹介したように「自己実現欲求」にも応える場としての役割も担うようになってきたと、近年の展開を興味深く見つめています。
これまで日本にはなじみのなかったシェアハウスがこれほどさまざまな展開をしつつあること、この新しい住まい方や他人との距離感が、これからの日本人や日本社会にどのような影響を与えていくのか、今後も関心を持って見つめていきたいと思います。
あなたのまわりでも「シェアハウス」や「シェアリング」の取り組みがありますか? シェア経済は広がっていると思いますか? シェア経済は持続可能な社会に向けてどのような役割や位置づけを持っているのでしょうか? JFSではディスカションのコーナーを設けましたので、ぜひご意見をお聞かせ下さい。
http://www.japanfs.org/ja/news/archives/news_id034638.html
<JFS関連記事>名古屋市 高齢者向けシェアハウス「ナゴヤ家ホーム」を展開
http://www.japanfs.org/ja/news/archives/news_id034213.html
(スタッフライター 飯島和子、枝廣淳子)