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いくつかの電力会社が再生可能エネルギーの接続申し込みへの回答を保留するとしたことから、接続するつもりで事業計画を進めてきた事業者に混乱が広がっているほか、「これで固定価格買取制度(FIT)は崩壊する」「もう再エネはやらないつもりか」という声が上がるなど、再エネ普及に水を差しかねない大きな問題となっています。
経産省資源エネ庁では専門家によるワーキンググループを立ち上げ、検討を始めました。この検討過程をどのように見ればよいのか、詳しい方にお聞きしました。
論点
<提案>
<経緯の詳細>
総合資源エネルギー調査会新エネルギー小委員会第四回(2014年9月30日)において議題とされた、九州電力、北海道電力、東北電力、四国電力における新規の系統接続申し込みへの「保留」対応問題について、一定のルールのもと試算したらどれだけ再エネは接続できるのかを検証するために、新エネルギー小委員会の下に「系統ワーキンググループ」(座長:荻本和彦(東京大学生産技術研究所特任教授))が設置され、2014年10月16日に第一回会合が開催されました。
系統ワーキンググループでは、10月16日を含む合計3回の会合にて、各電力会社にどれだけ再生可能エネルギーを系統に接続することが可能かを統一した方法で計算してもらい、かつ接続量を拡大する方策について定量的に示すことを目的としています。
配布資料、議事録、会合の様子もUstream中継されており、公開で議論をするという姿勢は評価に値すると思います。
一方で、第一回会合で示された計算方法については、このままでは問題だと思われる提案が、資源エネルギー庁から出されました。
現在問題となっているのは、短期の周波数といった問題ではなく、「需要と供給のギャップ」だそうです(資源エネルギー庁口頭説明による)。電力需要より発電量が多くなったら困る、ということが接続保留の一番の原因となっているとのことでした。
そのような状況において、事務局から示された計算方法の案では、「需要は震災後の2013年」を用い、ベース電源であり国産・準国産エネルギーである「一般水力・地熱・原子力の供給は震災前の30年間の平均の設備利用率と現在保有する設備容量を用いる」とのことでした。つまり、これから再稼働するのかについて議論がされている原子力については、①保有設備が、②震災前の30年間平均の稼働率で、計上されるということです。
これでは、現実的にありうると予想される供給量より、計算によって出てくる供給量が多くなるのは目に見えています。
その上で、供給が余るから接続可能量は少ない、または出力抑制(再エネで作った電気を捨てること)量はこんなに多くなる、という試算になってくることが予想されます。
需要は"震災後"を使うので、節電済みで小さくなり、供給は"震災後"の原子力が多かった時代のものを使うというのが、資源エネルギー庁が示した計算方法の案です。
第二回では、これを受けて各電力会社が、「自社ではこう計算します」という案を出してきます。世論・メディアはこの動向をしっかりとチェックし、意見を言っていく必要があります。
<参考資料>
総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会
http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/19.html
第一回系統ワーキンググループ配布資料
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/shin_ene/keitou_wg/001_haifu.html