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日本の子どもたちの放課後を守れ!「アフタースクール」の活動

2014年11月12日
日本の子どもたちの放課後を守れ!「アフタースクール」の活動

子どもたちが安心して自分自身でいられる、成長できる「居場所」があることは、本人にとってはもちろんのことですが、社会にとっても本当に大事なことではないでしょうか? 私もアドバイザーの1人になっている「放課後NPOアフタースクール」の活動を、JFSのニュースレターからご紹介します。

JFS ニュースレター No.141

日本の子どもたちの放課後を守れ!「アフタースクール」の活動

「アフタースクール」とは

「アフタースクール」という活動をご存知でしょうか? アメリカでは1980年代から行われているもので、放課後の時間帯に、子供たちに向けた様々なプログラムを提供するものです。放課後に勉強を見てもらったり、友達と一緒にいろいろな経験をしたりできる「子供たちの居場所」を作り、自己肯定感やチャレンジ精神を育てることを目的としています。

アメリカの「アフタースクール」は市が設置し、税金などの公的資金を活用して、NPOが運営しています。利用料は基本的に無料で、子供達は学校という安全な場所で、様々な活動を行う事ができます。

日本でも重視され始めた背景

現在この「アフタースクール」のニーズが、日本国内で高まっています。「共働き家庭の増加」「児童を狙った犯罪の増加」「児童の預かり機関の不足」などがその主な背景です。かつての日本の家庭では、母親が専業主婦で家におり、祖父母も共に暮らすスタイルが一般的でした。家族の目が子どもに向いていることが当たり前だったので、働くために子供を預ける施設が十分に発達せず、現在に至っています。

また、母親が仕事をせず子育てをしている家庭でも、「友達と一緒に放課後遊ぶ」ということ自体が以前と比べ減っているため、子どもは「自分の居場所」を見いだせる機会が少なくなっています。ユニセフによる世界の子どもを対象とした幸福度調査の「孤独を感じるときはありますか」という問いに、日本では約30%の子どもが「孤独を感じる」と答えています。残念ながら世界で最も高いものでした。

ほんの少し前の日本では、学校が終わると子供たちは連れだって外へ遊びに行き、夕方まで一緒に過ごしていました。日本の治安は他の先進国と比べても良いため、子供だけで遊んでいても安全だったのです。しかし近年は日本でも「連れ去り事件」などの子供を標的とした凶悪な犯罪が発生し、親たちも「外で遊んできなさい」と簡単には言えなくなってきているのです。

現在の状況

では、いまの子供たちは放課後に何をしているのでしょうか? 学校に付属の学童保育に通う子は、そこで遊んでいます。それ以外では民間の学童保育へ通ったり、家で携帯・テレビゲームをしたり、習い事へ通ったり。小学校1年から学習塾に通う子もいます。外で子供だけで遊ぶことの少なくなった子供は、昔と比べて圧倒的に経験不足だと言われています。

「子供たちが多様な体験をすることで、自分の居場所と思える場所を見つけてほしい。安全で安価な場所を提供し、働く母親を支援したい! そのために一番よい方法は、アメリカの「アフタースクール」を日本でも行うことだ」という強い思い持った二人、代表の平岩国泰(ひらいわくにやす)さんと副代表の織畑研(おりはたけん)さんが中心となって立ち上げ、運営しているのが「特別非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール」(以下、放課後NPO)です。

放課後NPOアフタースクールとは

放課後NPOでは、「市民×学校×NPO」の掛け算を大事にして活動しています。この3つがそろって初めて子供たちに安価で安心、そして多様なプログラムを提供することが可能になるからです。料理人や棟梁、ミュージシャンなど、様々な特技を持った市民が「先生」となり、子供たちとプログラムを行います。放課後NPOはこの「学校」と「市民」を繋ぐ役割を果たしています。

放課後NPOの主な活動には、「アフタースクールの運営」「公立小学校等へのプログラムの提供」「企業と提携したプログラムの運営」があり、この他に特別支援児の放課後支援や長期休暇中の預かり、親子参加型の遠足プログラムの企画・運営も行っています。総プログラム数は300種類以上あり、子どもは自分に合ったものを選ぶことができます。

設立してからの苦労

代表の平岩国泰さんは、副代表の織畑研さんと共に、会社員の仕事と並行して、2005年に「アフタースクール」の活動をスタートしました。活動の初期には何の実績もなかったため、小学校で「アフタースクール」の活動をしたいと相談しに行っても、相手にされなかったそうです。そこで、会社勤めをしながら週に1度、公民館等で市民先生と一緒にプログラムを行う活動を2年間ほど行いました。参加した子供たちの評判もよく、保護者の方の推薦もあり、その後は区の小学校でプログラムを行えるようになりました。

現在では、学童保育のニーズは高まっており、民間学童を経営する企業も増えています。民間学童ではマンションの一室で、多くの子供を夜まで過ごさせているケースが多いのが実情です。学校という広くて充実した施設を使うことができれば、子供達にとってより望ましいでしょう。学校と組むことは非常に重要なのです。

2007年から学校内での活動をスタートしましたが、当時はまだ2人とも会社勤めと並行しての活動だったため、週に1度のボランティア活動でした。活動を重ねるたびに、「子供に元気がないなあ」「お母さんたちが働くのは、本当に大変そう」といった現状が見えてきました。「アフタースクール」が楽しみで元気になる子供たちの姿にも後押しされ、もっと活動を広げたいとの思いから、2009年にNPO法人化に踏み切りました。

法人化後も、平岩さんは仕事と代表を両立していましたが、2011年に新渡戸文化小学校と提携し「新渡戸文化アフタースクール」が開校することをきっかけに、勤めていた会社を退職。現在は私立小学校と提携し、5校の「アフタースクール」の運営をしています。

放課後NPOを取り巻く人々

放課後NPOには、常勤の職員が12名います。彼らを中心として、学生インターン、学生・社会人・シニアのボランティア、そして市民先生をする市民の方々と、プログラムのコーディネーターという組織です。市民先生をしてくれた方には、少額の謝礼を支払っています。

「アフタースクール」の利用料は保護者の負担ですが、公立の小学校などにプログラムを出前する際は、行政の委託を受けることもあります。企業が資金を提供する場合もあります。助成金や賛助会員からの寄付など、さまざまなところから運営資金を得ています。

現状と目標

アメリカで「アフタースクール」が普及しているのは、市民がその必要性を理解し、行政が資金を提供しているからです。日本で放課後の問題意識が広がり始めたのはここ数年で、一部の自治体の首長が理解を示してはいますが、まだ本格的な資金提供には至っていません。

現在開校されている「アフタースクール」の費用は、全て保護者が負担しています。将来的には、行政の支援のもと参加者は無料、という形で「アフタースクール」を行いたいのですが、そこまでの仕組みを作るには時間がかかりそうです。まずは、現在の学童保育にかかる費用(月額5000~1万円)程度に利用料を抑え、残りを税金で賄って公立の小学校でも「アフタースクール」を行うことが、平岩さんの当面の目標です。

放課後NPOでは、「アフタースクール」の運営の他に、公立小学校に出張してプログラムを行ったり、企業と提携して公募制のプログラム運営を行ったりしています。毎日「アフタースクール」を行うことも重要ですが、対象の学校以外に通っている子供たちも参加できるようにとの思いから、こうした企画も行っているのです。

フリーで参加できるプログラムを行うことで、より多くの人に認知してもらえますし、提携する企業も、一つの学校だけではなく様々な人に知ってもらえる方がより放課後NPOとの提携の意義があると考えます。放課後NPOはWin-Winの関係を築くことで、企業との関わりを円滑に保っています。このような活動に協力的な企業とのつながりを作ることも、重要な活動の一環です。

市民先生になった方々の多くは、「また子供たちのところに来たい」と言います。引退した大工の棟梁に市民先生を依頼したプログラムがありました。子供たちと一緒に作業をした棟梁は、全くさびついていない技術を子供達に披露し、「棟梁!」と呼ばれ、子供から元気をもらったそうです。自分が活躍できる場が得られるというのも、市民先生をやることで得られる喜びの一つなのでしょう。

社会を見渡せば子供のために何かしたいという人は多く、現に「市民先生」を探す際に候補者が見つからなくて困る、引き受けてくれない、という問題はほとんど起こらないそうです。資金面の課題を解決することで、「アフタースクール」の活動を公立小学校にも広げ、市民力を上手く活かすことで、"放課後先進国"を目指したい――平岩さんたちの挑戦は続きます。

(スタッフライター 佐藤美里、枝廣淳子)

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こういった活動が社会全体の理解や支援を得て広がっていくことを願っています。

 

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