幸せ経済社会研究所が行った世論調査から「3人に1人は"GDP成長のジレンマ"(必要だが不可能)を感じている」ことがわかりました。衆院選をめがけて、各党が「どうすれば経済成長するか」の議論を戦わせていますが、経済成長そのものを問い直す時期ではないでしょうか? 一般の人々は経済成長についてどう考えているか、感じているのか、ぜひ立候補者や各政党にも知っていただきたい、考えていただきたいと思います。
グラフやpdf版はこちらをどうぞ。
http://ishes.org/news/2014/inws_id001453.html
3人に1人は「GDP成長のジレンマ」(必要だが不可能)を感じている ―経済成長についての世論調査より―
平成26年12月 5日
有限会社イーズ
幸せ経済社会研究所(東京都世田谷区、有限会社イーズ内、所長:枝廣淳子)は、本日「経済についての世論調査」の結果を発表しました。この調査は、経済成長と経済の規模を測る指標であるGDP成長の望ましさや必要性などについて、人々がどのように考えているのかを知るために行ったものです。主要な結果は以下の通りです。
○「経済成長」について8割以上の人が「望ましい」と回答
「経済成長は望ましいことだと思いますか」という質問に対しては、「望ましい/どちらかといえば望ましい」と回答した人が8割以上にのぼりました(図1参照)。
それぞれの理由を尋ねたところ、「望ましい」理由としては、「生活が豊かになるから」など個人の生活に言及するものや、「国が豊かになる」など大きな経済に言及する意見が多く見られました。
また「望ましくない」理由としては、「格差の広がりを避けられないと思う」など経済成長が個人の生活を豊かにしていないことを指摘する意見のほか、「円安誘導は破綻する」など経済的・政策的な観点から成長を望ましくないとする意見もありました。
○GDP成長 : 「必要」は8割程度、しかし「可能」は4割程度
続いて、GDPが成長し続けることの必要性について尋ねたところ、約8割が、GDPが成長し続けることは日本の社会にとって「必要だと思う/どちらかといえば必要だと思う」と回答しました。「経済成長が望ましい」と考える人と同様、「GDP成長が必要」と考える人が圧倒的に多いことがわかります(図2)。
次に、「GDPが成長し続けることは可能か」を尋ねたところ、「可能だと思う/どちらかといえば可能だと思う」と回答した人は約4割、「必要」と回答した人の半分程度の数でした(図3)。両問をあわせると、「GDPが伸び続けることは必要」だが「可能ではない」と思っている人は500人中158人と、3分の1近くの人々が「GDPが成長し続けることは必要だが、それは可能ではない」と思っていることがわかりました。
その理由を自由回答形式で尋ねたところ、GDPが成長し続けることは「必要」だが「不可能/どちらかといえば不可能」との回答で多かったのは、「人口減少」「地球の限界」「グローバル化の影響」などの指摘でした。一方、GDPが成長し続けることは「可能/どちらかといえば可能」との回答者の挙げる理由には、政策や技術、国民の努力に期待する声が多くありました。
○GDP成長はさまざまな社会問題を解決する万能薬か : 失業、賃金、格差、 幸福、環境
「GDPが成長すれば、失業者は減る」、「GDPが成長すれば、多くの人々の賃金が上がる」については6割以上の人が「そう思う/どちらかといえばそう思う」と回答しており、過半数の人がGDP成長によって失業と賃金の問題が解決すると考えていることがわかります。
それに対して、「GDPが成長すれば、人々の間の経済的格差が縮小する」「GDPが成長すれば、環境問題は改善される」については、「そう思う/どちらかといえばそう思う」と回答する人は2割未満、「GDPが成長すれば、多くの人々が幸福になる」については、「そう思う/どちらかといえばそう思う」と回答した人は4割程度でした(図4)。
こうした「GDP成長によって様々な問題が解決する」という考えは「GDP成長神話」とも呼ばれています。政府や国連の統計データを見ると、この30~40年間の日本では、GDPが成長する一方、完全失業率、ジニ係数、生活満足度は悪化しています。
以上、本調査結果から、経済成長について8割以上の人が「望ましい」と考えているものの、3分の1近くの人が経済の規模を測る指標であるGDPが成長し続けることは「必要だが可能ではない」という"GDP成長のジレンマ"を感じていることがわかりました。また、実際の統計データはそうではないことを示しているのですが、過半数の人が「GDP成長によって失業の問題が解決する」と考えていることがわかりました。
*本調査は2014年10月25-26日にインターネット調査法を用い、株式会社マクロ ミルのモニタ500人を対象に行いました(年代、性別および大都市/中小都市 ・地方の割合は国勢調査の日本人口比に合わせています)。
*本世論調査は旭硝子財団の協力を得て行われました。
※当研究所では、経済成長を前提としない「定常経済」をテーマとした懸賞論文 を募集中です(2015年1月5日締め切り)。 詳しくは下記サイトをご覧ください。
http://ishes.org/project/sse/news/2014/nws_id001343.html
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