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毎年この時期に、ダボス会議(世界経済フォーラム)が、多くの専門家に調査する形で、世界の直面しているリスクをあぶりだし、その結果を「グローバルリスク報告書」を出しています。
この9年間の「グローバルリスク報告書」を振り返ったコラムがよくまとまっていたので、その一部を抜粋してお伝えします。年の初めに、一歩引いて、少し長い時間軸で大きな全体像を見るつもりで、お読み下さい。
オリバー・カン2015年1月6日
2006年に初めて『グローバルリスク報告書』が発行されたとき、世界は各国の経済と社会に広く影響を及ぼすことになる金融危機に突入する直前でした。最初の報告書の狙いは、差し迫った短期的なリスクを指摘するというより、政策立案者に対し、10年単位の先行き不透明な将来に取り組む上で必要な見識を与えることでした。
それでも、この9年間に報告書で強調された脅威には、世界を揺るがし、指導者たちに新しい形の協力を呼び掛けた出来事がうかがえます。
投資銀行ベアー・スターンズ破綻の1年前に当たる2007年には、資産価格の崩壊が発生の可能性と影響力の点のいずれでも、グローバルリスクの上位5位に入っていました。広範囲に及ぶ景気悪化の影響も、報告書に携わった専門家が懸念していたことでした。財政危機がグローバル経済に及ぼすさらなるリスクは、2007年以降、毎年警告されていたのです。
より最近では、グローバル経済が直面する最も重大なリスクは「失業」と「不完全雇用」だと考えられるようになっています。これに伴う「極端な所得格差」は、ここ3年続けて発生の可能性が最も高いグローバルリスクに挙げられています。
グローバル経済を別にすると、『グローバルリスク報告書』で何年にも渡って繰り返し現れていた傾向は、世界が最大の課題と認識するものをある程度浮き彫りにしていました。
例えば、大部分の国が不況から抜け出そうとなおもがいていた2011年、発生の可能性が高い上位5位のリスクのうち4つを環境問題が占めていました。同年、「気候変動」は影響力の点で第2位のリスクとされています。問題に対応する、または問題を緩和する効果的な措置を講ずるための行動が取られないことに対し、懸念が高まっていたからです。
社会に関するリスクも、過去9年の『グローバルリスク報告書』で大きく取り上げられてきました。所得格差とともに常に指摘されてきたもう一つのリスクは「水供給危機」です。このリスクは、2015年版では初めて社会に関するリスクに分類される予定です。水供給危機は2012年と2013年に影響力の点で第2位のリスク、2014年には同第3位に挙げられました。
「パンデミック」も『グローバルリスク報告書』の展望図に頻繁に現れるリスクです。2007年には、鳥インフルエンザ(H5N1)が病原性の高いインフルエンザウイルスの恐怖を呼び起こしたため、パンデミックが影響力の点で第4位のリスクに挙がり、翌年も上位5位に留まりました。
2006年以降、「地政学」は、『グローバルリスク報告書』で断続的にしかリストの上位に挙がっていません。2007年と2008年にグローバル化の抑制が影響力の点で第2位のリスクに挙がっているものの、地政学的紛争が影響力の点で上位5位に入ったのは一度だけでした。第3位に挙がった2011年のことです。ベルリンの壁崩壊から25年、成長を続ける国々の間で戦略的な競争が繰り広げられる中、これが2015年にグローバルリスクとして目立った位置を占めるかどうかは注目に値するでしょう。
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全体的な趨勢として、挙げられているのは、以下の点です。
・2006年からの4年間は、経済に関するリスクが優勢だった。
・2011年から2014年を見ると、発生の可能性では、環境に関するリスクと社会に 関するリスクに対する懸念が大きくなっている。
・他のリスクも次第に頻繁に上位に食い込む兆しを見せるようになっている。
・たとえば、2011年の二つの地政学リスク(「不正行為」と「地政学的紛争」) と、2013年の「大量破壊兵器の拡大」。
・また、「重要情報インフラの崩壊」「サイバー攻撃が」といったテクノロジー のリスクが入ってくるようになった。
今年の「グローバルリスク2015」はちょうど発表されている頃です。メディアでの報道などでも出ると思うので、ぜひご注目下さい!