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島根県は、人口減少・高齢化の先進県であることから、早くからさまざまな研究を進めると共に、その問題意識をさまざまな取り組みに展開しています。
ロハス・ビジネス・アライアンス共同代表の大和田順子さんが、「食、農、福祉の小さな経済循環」として島根県の小さな地区の素敵な取り組みをデジタル農業情報誌「Agrio」に書いていらっしゃいます。許可を得てご紹介します。
農と食のコラム「食、農、福祉の小さな経済循環」
ロハス・ビジネス・アライアンス共同代表 大和田順子 「食育をテーマに、地域経済の小さなエンジンが回っています」 昨年10月、三重県で開催された「第26回 全国過疎問題シンポジウム」で総務大臣表彰を受けた地域の一つ、島根県益田市真砂地区の報告者によって語られたものだ。同地区は2011年から、食育"をテーマに、「公民館と学校と地域商社との協働のトライアングルによる地域運営の仕組みづくり」に取り組んできた。
同地区は益田市内から車で約30分の中山間地域で、面積29.72平方キロメートル、人口は180世帯397人(2014年9月末現在。)、高齢化率50.5%。子供の数は保育園(15人)、小学校(16人)、中学校(11人)である。
食育活動は公民館長の大庭完さんが、岩井賢朗さん(地域商社である有限会社「真砂」の代表取締役)や小学校の先生と一緒に始めたものだ。「島根県醸成プログラム」を活用し、11~13年度の3年間、公民館活動として取り組んだ。安心安全な野菜作りや土作りでは専門家を招へいし、指導を受けた。地元の小中学校ではおコメや野菜作りや販売活動の体験も行った。
そして、地元の真砂保育園をはじめ、市街地の吉田保育所(園児100人)と益田ひかり保育所(150人)におコメ、野菜などの食材を週に2回提供することになった。大きさや形は問わず、一定価格で購入してくれる。小さいエンジンではあるが、日々地域の経済が動く仕組みが確立された。
さらに昨年からは「キヌヤ」という地元のスーパーにも真砂コーナーができた。このスーパーは農産物や加工品の2割を地元産にするという方針を打ち出し、地産地消を推進している。真砂の野菜はすぐに売り切れてしまう人気だ。その理由は真砂のブランド力にある。
地域商社の真砂は、2003年に地域住民24人が出資して設立された会社である。主力商品は豆腐と味噌。また豆腐の加工品も多種類手がけ、年商は2000万円超、6人を雇用している。主力の豆腐は1丁170円(400グラム)と高めであるが、支持を得ている。これまで10年間の成果として「真砂+(まさごプラス)」の品質の良さが市内で認知と評価を獲得しているのだ。
保育所やスーパーに野菜を提供しているのは50軒(主に15軒)の農家。シニアの女性が多く、無理せず、のんびりとやっているという。また、バスを利用して野菜を届けているが、農家のシニア女性も週1回、月4回このバスを利用して買い物に行くことができる。そして、市内の保育圏の子供たちは年に数回、真砂にやってくる。農業体験を通じた多世代交流。シニアは園児の笑顔を見るのが生きがい、やりがいになっているという。
そして、真砂の食材を活用した和食の給食を採用した2011年以降、市内の保育園児の年間の病気欠席率は低下し、コメの消費量は増え、しかも食材のコストは1食当たり188円と抑えられた。
小さな集落の小さなエンジンがゆっくりと回りながら、都市部と農村部の交流が生まれ、心も身体も健康になっていくという好循環がここにはある。
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「Agrio」とはイタリア語の農業「Agricoltura」と活発、元気を意味する「brio」を組み合わせた造語です。
日本でも農業をめぐってはその立場により思いや意見は大きく異なり、長年さまざまな議論が戦わされてきました。バブル崩壊を経て、日本の経済・社会が成熟期に入り、都市住民の価値観、農業・農村に対する見方も徐々に変わりつつあります。 政府は2013年にコメ制度改革・農地集積対策を打ち出し、さらに農協改革に取り組んでいます。
Agrioは農林水産業の構造変革を見据えながら、地域や人々、企業をつなぎ、ささやかながら農村、そして社会全体を元気にするお手伝いができないかと考えています。(Agrioトライアル1号編集後記より)
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島根の各地をはじめ、全国のあちこちで「自立・挑戦」の動きが盛んになっています。そこにしか未来はないのではないか、と思っています(国の役割はできるだけその邪魔をしないこと)
そういった動きをあちこちから発信し、交流し、学び合い、刺激しあって、さらに進んでいくお手伝いを少しでもできたら、と思っています。