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気候変動に取り組むオバマ米大統領

2016年10月25日
気候変動に取り組むオバマ米大統領

Image by janeb13

http://bit.ly/2dEypUL

前号で、「気候変動に取り組む大統領」としてのレガシーを残したいオバマ米大統領が、代替フロン規制の協定を大きく進めた、という話を書きました。

ニューヨークタイムズ紙が9月8日に、オバマ大統領へのインタビューを掲載しています。かいつまんでご紹介しましょう。一国のリーダーのあり方を考えさせられます。

「 」内はオバマ大統領の発言、地の文は解説です。元の記事はこちらです。

~~~~~~~~~~~~~ここから紹介~~~~~~~~~~~~~~~~~

「気候問題が難しいのは、一瞬の壊滅的な出来事ではない点だ。ゆっくりと起こる問題なので、人々はそれを感じ取ることも見ることもできない」

医療問題や経済問題よりも、地球温暖化を遅らせる取り組みが重要なレバシー(遺産)になると大統領は考えている。

7年半に及ぶ在任期間中に、多くの米国人が「気候変動は実際に起きていて、何かしら対策を取る必要がある」と考えるようになった。国内では、自動車から石炭発電所まで規制を設け、国外ではパリ気候変動会議で中心的な調停役を果たした。

気候変動問題はオバマ氏の理想を発揮するものであった一方で、合意を築くことができないという彼の弱点をさらすものでもあった。国内では反対者から権力の乱用、経済への過剰な負荷だと批判され、国外での成功と国内での敗北という矛盾を生むこととなった。

オバマ氏自身はこの矛盾を、政治問題のせい、あるいは気候問題の脅威が目に見えないせいだとしている。

「『この問題はもう少し先延ばしできる』かのようだ」

「もし温暖化する地球で現在の傾向や予測が続くならば、世界中でとてつもなく破壊的になるのは確実だ」

8年前に大統領選に出馬したときは、オバマ氏もジョン・マケイン氏も基本的に同じ立場で、温暖化は人間が引き起こしたもので、温室効果ガスを制限し、汚染者には排出枠の取引をさせる必要がある、と考えていた。

しかし2010年、オバマ氏はキャップ・アンド・トレード(排出権取引)を制度化しようとして失敗した。2009年のコペンハーゲンでの気候変動条約の成立に失敗したことも、この失敗に輪を掛けた。キャップ・アンド・トレードはティーパーティー、スーパーPACsに攻撃され、彼らの政治的武器とされてしまった。

「共和党員に気候変動を否定させないことが何かできたかもしれないと思っている。仮定だが、彼らに魔法をかけて考え直させる秘策が何かあったのかもしれない」

オバマ氏は最後にはかろうじて発電所を対象にした排出規制を成立させることになる。

こうした敗北の結果、オバマ氏は2012年のロムニー氏との選挙戦ではほとんど気候変動について触れなかった。

ところが選挙のすぐあと、突然主張を始めた。「もし気候変動に関して何もしなければ、すべて白紙に戻ってしまう」

法律の制定が実を結ばないと認識したオバマ氏は、議会を通さずにより大きな排出量削減を制度化する方法を模索した。そこで見つけ出したのが、1970年の大気浄化法が環境保護庁の管轄下になっていることだった。

2014年に、オバマ氏は、後に数百の石炭火力発電所閉鎖につながるClean PowerPlanの最初の草稿を公表した。

このことは様々な批判を巻き起こした。特に石炭に大きく依存している州の議員や大手石炭会社に関係する人々からの批判は大きかった。

「石炭を掘って生計を立てている人々への、私たちの義務は、彼らに正直に話すことだ。彼らに、『経済はシフトしている』と言うことだ。私たちのエネルギーの使い方はシフトしている。それはここ(米国)でも真実だし、世界的に見ても真実だ」

2008年にオバマ氏が選挙に出たとき、彼を気候の伝道師だと言う人はいなかった。アル・ゴア氏やジョン・ケリー氏のように長年活動してきたわけではないからだ。

オバマ氏の気候に関する展開は基本的に理知的なものだった。オバマ氏は科学文学に熱中したが、その中で地球が加速度をつけて温暖化していることは疑う余地がなかった。

「私の科学アドバイザー、John Holdren氏が、朝の会議で定期的にチャート・レポート・グラフを出すことになったが、それらは非常に恐ろしいグラフなのだ」

オバマ氏は、2014年のNational Climate Assessmentなどのレポートも詳細に研究している。

オバマ氏が太平洋にルーツを持つことも関係している。ホノルルでは太平洋島嶼国のリーダーに、「地球上で島嶼国の住民ほど気候変動の危険性を分かっている人々はいない。マーシャル諸島の穀物は枯れ、キリバス共和国はいつか自分たちの土地が海に沈んだ時のためにほかの国の土地を買っているのだ」と述べている。

インタビューでは次のように述べた。「南アジアではモンスーンのパターンが変化し、低地での農業に頼る10万もの人々に影響を及ぼすかもしれない」

「もし移動を余儀なくされたこれら10億人の一部でも自国に受け入れることになれば、今でさえ、ある種の難民危機であるのに、これまで目にしたこともないような争いを目の当たりにするかもしれない」

「そうなれば、我々の子どもや孫にとっては、生きるのがはるかに難しくなるのは確かだ」

2009年のコペンハーゲンでの経験から、オバマ氏は気候に関する協定は、単に先進国間の協定にはなりえないということを学んだ。特に、どのような合意も米国と中国という最大の排出国2国がリードしなければならない、と。

オバマ氏は炭素排出量に関してもっと野心ある削減目標を設定するよう習主席を説得しているが、中国のハッキング問題や南シナ海への進出など両者の緊張は高まっている。

2013年6月の非公式の2国間サミットでは、関係悪化の改善に失敗した。しかし、この会議ではヒドロフルオロカーボン(HFC)の排出量削減方法を探ることで合意した。

米国政府は中国との困難な交渉を開始している。中国はこうした環境面での国際合意にはずっと抵抗してきたが、中国国内の大気汚染はあまりにひどい。

オバマ氏は、「中国でもっとも訪問者数の多いツイッターページは北京にある米国大使館が管理する毎日の大気汚染モニターだ」と指摘する。「中国が以前よりもより踏み込もうとしている理由のひとつは、彼らの最優先事項が政治的安定であるためだろう」

2014年の石炭火力発電所に関する排出量規制の発表で中国もまた、影響を受けた。その規制を強みに、米国の気候チームは中国との会談に臨み、2014年11月に習主席とオバマ大統領は協定を結んだ。

「中国を押さえることで、インドや南アフリカ、ブラジルなどに対しても、『貧困率が高く一人当たりの炭素排出量の比較的低い国に米国や、ドイツなど先進国と同じことを期待してはいない。しかし、あなた方も何かしなければならない』と言うことができる」

それから1年余りのち、米国はパリで、195ヵ国の交渉をリードし、歴史上、最も重要な気候変動協定に導いた。そして、米国と中国は早々にパリ協定を正式に批准した。

「米国が単独でできることも何かしらある。しかし、本当に問題を解決しようとするなら、米国の最も重要な役割はリーダーとして、ビジョンの作り手として、会議の招集者としての役割だ」

オバマ氏は新たな排出量に関する規制や、温室効果ガスの80パーセント削減宣言など、野心的かつ対立を生むような遺産を後継者に残そうとしている。

「もしドナルド・トランプ氏が当選したら、環境保護庁のやり方はかなり大きく変化するだろう」

ヒラリー・クリントン氏は、オバマ氏の独自の路線を採用している。クリントン氏もまた、オバマ氏が直面した党派の試練に直面するだろう。

オバマ氏は大統領任期終了後の人生でも、気候変動との闘いに積極的にかかわっていくつもりだと言っている。

「元大統領として、これまで科学に抵抗していた共和党の友人たちにもう少し影響力を及ぼせるのではないかと願っている」。

~~~~~~~~~~~~~紹介ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~

「石炭を掘って生計を立てている人々への、私たちの義務は、彼らに正直に話すことだ。彼らに、『経済はシフトしている』と言うことだ」。

リーダーの役割はそういうことなのだと思います。

かたや、40基を超える石炭火力発電所の建設・計画が進んでいる日本。国のリーダーたるもの、その義務は、短期的な経済性の追求ではないと思うのです。

「気候変動に取り組む大統領」としてのレガシーを残そうと努力するオバマ氏。安倍総理のレガシーは何になるのでしょうか・・・?

 

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