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最近、メディアの方からの「トランプ政権になって、世界の環境への取り組みや温暖化はどうなるのか?」という取材や問い合わせが増えています。トランプ氏は「パリ協定から離脱する」と選挙期間中繰り返しており、実際に温暖化懐疑論者を環境行政のトップに据える、石油パイプラインの開発を推進するなど、温暖化対策にとって逆行する動きが目立っていて、心配というかがっかりというか......という方も多いことでしょう。
ガスエネルギー新聞で連載させてもらっているコラム「オピニオン」で、トランプ政権の環境政策について書きましたので、ご紹介します。
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トランプ政権の環境政策
米国がトランプ政権になって、環境政策の遅れや逆行が心配されています。私はトランプ政権が、気候変動など持続可能性に対して、三つの面で大きな影響を及ぼすと考えています。
一つは環境政策そのものです。環境保護庁(EPA)長官に就任するスコット・プルイット氏は、温暖化懐疑論者であり、これまでEPAに対して数多くの訴訟を起こしてきた人物です。
発電所からの危険物の流出やスモッグ、温暖化を引き起こすメタンの排出などを規制しようとする連邦政府の取り組みを「やめさせるための訴訟」を起こしてきた人が、環境行政のトップに就くことになります。シエラ・クラブの事務局長が「放火犯に消防責任者を命ずるようなものだ」と述べているように、EPAの権限縮小や、さまざまな環境規制の弱化・廃止が心配されています。
気候変動についても、トランプ氏は選挙運動期間中「人間の活動によって気候変動が引き起こされたというのはペテンでありでっち上げだ」と述べ、パリ協定からの撤退を主張していました。米国はパリ協定で「2025年までに温室効果ガス排出量を05年比で26~28%削減」という目標を掲げていますが、パリ協定は目標が未達でも罰則がないため、撤退しなくても単に無視するのではないかと心配する向きもあります。
実際、米国の目標達成の大きな原動力であるクリーン・パワー・プラン(30年までに発電所のCO2排出量の32%削減を義務付け)を廃止し、自動車の燃費基準・排出ガス基準を緩和するとしています。
二つめの側面はエネルギー政策です。石油パイプラインやシェールガスの推進など、エネルギーの環境側面は考慮せず、自国のエネルギー安全保障や産業界の意向を最優先する動きが相次いでいます。米国のある調査会社は、クリントン氏が政権に就いた場合に比べ、米国のCO2排出量は16%増えると試算しており、世界に与える影響は多大なものになりそうです。
そして三つめの側面は、多くの人々への心理的な影響です。「せっかく世界が一丸となって取り組もうとパリ協定が成立したのに...」という失望感が広がり、環境対策の手綱を緩める企業が増えるなどが懸念されています。
世界としては、今や環境への取り組みは経済的な競争力に直結していることを示し、「温暖化は信じていなくても経済政策として温暖化対策を行うことが得策」という状況を作り出す必要があります。
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環境問題に取り組む米国人の仲間や、米国に関係を持っている仲間たちの様子を見ていると、「米国の人々のストレスや苛立ちは増し、幸福度は間違いなく下がっているんだろうなあ、、、」と思います。
ある時代の終焉なのか、新しい時代の始まりなのか。いずれにしても、その一挙手一投足に振り回されずに、こういうときだからこそ、根源的な時代の流れや本質を見抜き、しかるべき対応をしっかり整えていきたいものだと思います。
そのために、自分は何をすべきか、何ができるのか、、、うちにはテレビがないせいか、ストレスはそれほどありませんが、考えることはいっぱいあります。