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日本には今でも「再エネはあくまでも傍流」という見方が根強くありますが、実際、日本の電力のうちどのくらいが再エネで発電されているか、ご存じですか?
「永続地帯 2016年版」「自然エネルギー白書 2016」などから、日本の再エネの現状をご紹介しましょう。きっとびっくりされますよ!
http://sustainable-zone.org/wordpress/wp-content/uploads/sustainablezone-2016FY-report.pdf
http://www.isep.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/03/JSR2016_all.pdf
電力会社エリア毎の電力需給の実績データ(電源種別、1時間値) によると、2016 年度の前期(4 月~9 月)の日本全体の電力需要に対する再生可能エネルギーの割合の平均値は15.7%でした。思っていたより高かった、という方も多いのではないでしょうか。
月単位で見ると、2016 年5 月に20%以上に達しています。さらに、1 時間値での最大値では2016 年5 月4 日に46%に達していて、「この1時間は日本の電力の半分近くは再エネでまかなわれていた!」状況です。この5月4日の1 日間の平均を見ても27.5%と、3割近くになっています。
これは日本全体の平均値ですが、電力会社エリア別に見ると、もっとスゴイ!状況がわかります。
2016 年度前期(4 月~9 月)の再生可能エネルギー比率の平均値を見ると、北陸電力が32%、北海道電力も32%近くに達しています。6ヶ月の平均で見ても、3分の1近くを再エネで発電しているのです。
もっとも北陸電力は豊富な水力が貢献している割合が大きく、太陽光や風力などの変動する再生可能エネルギーは3%程度に過ぎません。この点で見ると、四国電力や九州電力では変動する再生可能エネルギーの割合が高く、平均で9%以上。常時電力の1割近くは変動する再エネでまかなわれているのです。
2016 年5 月4 日のピーク時(1 時間値)に四国電力の再生可能エネルギー比率はなんと79%!8割近くが再エネ電力だったのです。九州電力でも最大77%、北海道電力で71%近く、東北電力も62%近い比率でした。
それでも停電になったとか、問題が起こったと言うことは聞いていません。
よく「風力や太陽光発電は、お天気次第で発電量が変動する。電力は瞬間瞬間に需要と供給を一致させないと周波数や電圧が乱れ、電気を使っている機械に影響が出たり、最悪の場合は停電が起きる。常時変動している電力需要に変動する再エネの供給を合わせるのは無理だから、再エネはある程度以上には増やせない」と言われていたのですが、なぜこれほど高い再エネ率が実現するようになったのでしょう?
その大きな要因の1つは、気象予測や過去のデータに基づく電力需要予測と再エネ出力予測を精緻化し、不足分は天然ガス火力などを追従運転することで、変動する需要に供給を合わせる技術です。先進的なスペインやドイツではその予測誤差は3~5%以下と言われています。
日本の目標は「2030年に再エネ電力を22~24%に」というものですが、すでにほぼ毎日それを超えている電力会社もあり、日本全体でも2030年を待たずして目標を達成できることでしょう。
そう、日本もようやく「ベースロード電源の上に再エネがちらちらしている」状態から「再エネが主力で、その変動にあわせて火力を炊く」状況になってきたのです!
企業の再エネの取り組みも紹介しましょう。
「RE100」というグループを聞いたことがありますか? 「RE100」は、2014年に設立された、100%再エネを使うことを目指すグローバル企業の集まりです。
「全世界のエネルギー消費の半分は民間業務部門が占めている」という認識のもと、「世界のエネルギー市場への転換を加速し、低炭素経済への移行を支援するために、再エネ100%を実現するための取り組みを公開し、先導・推進していく」ことをミッションとしています。
RE100には現在87社が参加しており、うち18社が再エネ100%の目標を達成しています。米国のマイクロソフトやドイツのSAPなどは、すでに再エネ100%企業となっています。グーグルも、全世界での使用電力を、2017年中に再エネ100%に切り替えることになっています。
昨年秋には、アップルもRE100に参加しました(2016年9月)。同社は、すでに米国、中国などの21カ国で再エネ100%の事業運営を実現しており、2015年の数字では「全世界で93%の再エネ活用率」です。
自社の再エネ率をさらに引きあげていくだけではなく、製造パートナーや主要取引先にも、支援などを通じ、再エネ100%活用のコミットメント求めるようになりました。アップルへの部品供給事業者は、大口の顧客を失っては大変ですから、懸命に取り組みを進めています。「アップル製品に関する生産活動において、2018年末までに15億kWh(キロワット時)の電力消費を全て再エネへシフト」することをめざしているのです。
しかし、大きく再エネにシフト済みの企業だけが参加しているわけではありません。現状は、再エネの割合が0%、1桁のパーセントの企業も参加し、これから再エネを100%に向けて増やしていくと約束しているのです。
RE100のおこなった参加企業への調査によると、「参加の動機」は、1.電力コストの低減、2.自社の経費節減、3.持続可能性目標の達成、4.企業価値の向上となっていました。コスト削減の例として挙がっていた米General Motorsでは、「再エネ利用で年間500万ドル(5.7億円)の電力コスト削減に成功」とのことです。
RE100のアニュアルレポート2016によると、現在、世界全体の電力需要の約23%が再エネによって賄われています。再エネのコストは下落し続けており、2040年までに新規の電源開発に投下される投資額の約3分の2(8兆ドル)は再エネへの投資となります。その結果、2030年には、ほとんどの国で、石炭・石油よりも太陽光・風力の発電コストが安くなるということです。
さて、BMW、コカコーラ、グーグル、H&M、イケア、ネスレ、ナイキ、スターバックス、ウォールマートなどが参加するRE100の87社、どこの国の企業が多いでしょう?
地域別の内訳は、欧州が50社、米国は32社、アジアが5社となっています。日本の企業は、つい先週まで、1社も含まれていませんでした。
先週、リコーが「2030年までに少なくとも電力の30%を再生可能エネルギーに切替え、2050年までに100%を目指す」として、日本初のRE100企業となりました!
「脱石炭、再エネへ」が社会の要請になってきている現在、リコーにつづく日本企業がゾクゾクと出てくることを待っています。