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欧州や中国を中心に、世界的に「サーキュラー・エコノミー」への大きな動きが出てきています。残念ながら日本では、「最初に循環型社会への取り組みを始めたのは日本だ」という"過去の栄光"にひっぱられているのか、現在動いている大きな動きから取り残されているような感じも受けています。今後の大きなテーマの1つです。いろいろ勉強して、伝えていきたいと思います。
中央環境審議会の委員となりました。
http://www.env.go.jp/council/01chuo/meibo01.html
中央環境審議会 循環型社会部会の委員でもあります。
http://www.env.go.jp/council/03recycle/meibo03.html
環境省ではこれまでは、温暖化関係の委員会に属することが多かったのですが、今回は資源循環を扱う部会に入れていただき、リサイクルの現状や課題など、新たに勉強することも増えました。本質的な意味での循環型社会(サーキュラーエコノミー)を考えていけたらと思います。
中国も「サーキュラー・エコノミー先進国」と位置づけれています。特に動きが顕著なのは欧州です。「サーキュラー・エコノミー専門のコンサルティング会社」も誕生しているそうです。
国家レベルでも、たとえばオランダは、「2050年までにオランダをサーキュラーエコノミーにしていくためのロードマップ」を発表しています。
A circular economy in the Netherlands by 2050
フィンランドもロードマップを発表しています。
Leading Cycle ー Finnish road map to a circular economy 2016-2025
例として、このフィンランドの「サーキュラー・エコノミーへのロードマップ」をご紹介しましょう。「循環型経済」への動きは、単なる環境政策ではなく、産業政策であり、雇用政策であり、社会政策でもあり、国家的政策として位置づけられていることがわかると思います。
~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~
フィンランドのサーキュラー・エコノミーに向けてのロードマップ(2016~2025)
○はじめに
サーキュラー・エコノミーは、製品、部品、原料と、それらに結びつく価値が経済の中で最大限に循環するよう努めるものである。サーキュラー・エコノミーでは、生産や消費から生じる損失や廃棄は最少となる。
原料の有効利用は環境面の恩恵をもたらす。それは、過剰消費から距離を置こうと奮闘する世界にとって、確実に持続可能な開発を行う上で必要なものである。
また、サーキュラー・エコノミーは経済的、社会的な恩恵ももたらす。知性に基づいたサービスとデジタルソリューションによって、製品の付加価値が頻繁に生み出される。つまりサーキュラー・エコノミーは、消費者行動の重大な変化を意味する。サーキュラー・エコノミーのロードマップを動かす原動力とは、サーキュラー・エコノミーをフィンランドの成長、投資、輸出の原動力に変えるということなのだ。
いくつかの推計で「サーキュラー・エコノミーによってフィンランドの雇用は大幅に増えるだろう」と示されている。ローマクラブによれば、特に再製造業やリサイクル業、技術およびサービス部門の中小企業で、2030年までに7万5000人を超える雇用が創造されるだろう。こうした仕事はレベルの高い能力を必要とし、他の国へのアウトソースが難しい。
社会にとっての恩恵については議論の余地がない。だからこそ、今行動することが非常に重要だ。フィンランドのイノベーションファンド「Sitra」は、環境省、農林省、雇用経済省、企業などの主要な関係機関と協働し、フィンランドにおけるサーキュラー・エコノミーのロードマップを作成してきた。この大規模なプロセスには何百もの組織が参加した。ロードマップでは、フィンランドがサーキュラー・エコノミーへ向かうための活動や実験的プロジェクトについて述べている。
世界的なリーダーの地位を得るには、ロードマップとそれを補完する分野の活動を実施することが必要だ。私たちは、幅広く拡張可能な解決策と具体的な試行プロジェクトを必要とし、また同時に社会のシステムレベルの変化にも注目し続けていく。
○システムの変化に向けて
サーキュラー・エコノミーへの移行は、システムの変化を意味する。そのために、ロードマップのプロジェクトに対して定期的に評価し、活動を更新していくことが必要だ。変化には、高度な政治行動と、試行プロジェクトの迅速な開始が求められる。さらに私たちに必要なのは、2025年までにフィンランドがサーキュラー・エコノミーにおいてリーダーとなるために、サーキュラー・エコノミーと持続可能な社会を推進する新しい取り組みだ。
サーキュラー・エコノミーは、一つの考え方として世界中に力強く広がりつつある。新しいイノベーションの源と見なされており、フィンランド人がそのリーダーとなるためには、国際的にサーキュラー・エコノミーがいかに実施されているか、最新の状況を理解する必要がある。サーキュラー・エコノミーへの転換にとって何より欠かせないのは、開かれた新しい形での協力、政治的経済的リスクをとる意欲、そしてその成功を世界に向けて輸出する大胆であろう。
○目標と考え方:ロードマップの出発点
ロードマップによって、フィンランドは2025年までにサーキュラー・エコノミーのリーダーとなるだろう。こうした変化によって強調されるのは、まとめ役や支援者としての国の役割、研究開発、イノベーション活動や、勢いのある企業、輸出や技術の方向性と、この価値の連鎖全体を網羅する、包括的な解決策および協力の追求との結びつきである。
○基本理念がロードマップの方向性を決める
ロードマップの実施過程で社会を正しい方向へ確実に発展させるため、ロードマップには基本理念が設定されている、この基本理念と関連づけて活動が評価され、またあらゆる活動に応用される。ロードマップは、経済、社会、環境面の価値を考慮する。基本理念は、背景説明レポートで詳しく説明する。
○ロードマップの注力分野、活動、そして試行プロジェクト
フィンランドは、以下の5つの主要分野に集中し、先駆けとしての地位を追求していく。
(1)持続可能な食料システム、
(2)森林を基本とするループ、
(3)技術的ループ、
(4)交通と物流、
(5)国際的な共同行動、である。
この主要分野で考慮されているは、フィンランドの強みと専門知識、これら主要分野の経済における重要性、全体としてサーキュラー・エコノミーを実現する意義である。
ロードマップの活動は以下のように分けられる:
・行政上の要件と政治行動に関連する活動
・鍵となる主要分野のプロジェクト
・主要分野の試行プロジェクト
このプロセスでは、フィンランドが活発に行動するべきであるにもかかわらず、必要な取り組みが明確化されていない、もしくは責任を持って行う主体が未だ見つかっていない分野についても特定した。システムの変化を達成するためには、幅広い分野での行動と多くの社会的変化が必要となる。
○システムの変化の継続的モニタリング
変化の内容は、変化プロセスの間モニタリングされ、更新されるだろう。目的や活動を効果的に実現するために予定されているのは、ロードマップの主要参加者による積極的な取り組みと、結果に集中したモデルの実施である。
○フィンランドのサーキュラー・エコノミーの目標
世界のリーダーになるための努力は、何を意味するのか?
ステークホルダーの参加によって、ロードマップのための考え方が生まれた。またその参加によって、国の先導的役割、増えつつある企業や様々な関係機関の協力、そして力強い輸出の成長の追求と共に迅速な試行の舞台としての国内市場の活用につながりが生まれた。
目指す状態は、都市化、気候への関心、人口増加、中産階級化など、世界規模のすう勢や課題から生じる機会に基づいている。また、フィンランドの技術とデジタル化の専門知識と、小規模国の持つ潜在能力との部門の垣根を超えた協働も土台としている。
私たちは、以下を実行することで2025年までにフィンランドをサーキュラー・エコノミーのリーダーにしたいと考えている:
・企業と輸出の成長を目的とするサーキュラー・エコノミーの包括的な解決策を創造する:部門の垣根を超えて活動するフィンランドの企業によって、世界規模でのサーキュラー・エコノミーの実現が可能になるだろう。この目的によって、地球規模の課題と基本的ニーズの充足が、大規模な成長中のマーケットへと変化する。
・国内市場の機能性を確保する:私たちは、サーキュラー・エコノミーの実施を促進するような、野心的で役に立つ活動環境を創出する。そのための方法は、原料の有効活用と低炭素という解決策である。国はそれを実現する主体として、また考え方を決定し継続性を確保することを通じて重要な役割を果たすが、どの手法を選択するかは他の活動主体に任されるだろう。
迅速な行動と具体的な試行、そしてサーキュラー・エコノミーの主流化によって、素早いスタートを切る:私たちは、フィンランドが強みを持つ分野において、また実践的な試行プロジェクトの開始によって、サーキュラー・エコノミーの推進を始める。それと同時に、より幅広い分野で長期的な変化を起こす政策を実施するための基盤と熱意を創出していく。
○2025年までに何を達成したいか?
サーキュラー・エコノミーのロードマップの実施という目標は、フィンランドの競争力を強化し、新しい雇用と持続可能な成長を生み出す。これによって、少なくとも同国の経済には新たに30億ユーロ分の価値が生まれ、これまで切り離せないと考えられていた、「幸福や経済成長」と「温室効果ガス排出や自然資源の消費増加」とを切り離すことに貢献できる。経済、環境、社会の観点から、上位目標を次のようにまとめることができる。
○経済:サーキュラー・エコノミーはフィンランド経済にとって新たな基盤となる
・サーキュラー・エコノミーによって、フィンランドとフィンランド企業の競争力は向上する。新たな企業、新たなビジネスにとってもそれは明らかであり、売り上げや新しいイノベーションが増加するだろう。
・サーキュラー・エコノミーの解決策はフィンランドにとって輸出上の利点となり、国際化を望む企業の数が増えるだろう。
・資金調達モデルの改革は、サーキュラー・エコノミーの成長を支える:政府調達や、インパクト投資に協同組合など新しい官民協力や資金調達が利用されるだろう。
・環境面の恩恵や、環境の改善によって、新しい成長とビジネスが生まれるだろう。
○環境:フィンランドを資源枯渇の課題解決のモデル国に
・資源効率は大幅に向上するだろう
・資源サイクルはより効率的になり、再生可能資源が再生不可能なものに取って代わり、よりカーボンニュートラルで廃棄物のない社会へと向かうだろう。
・サーキュラー・エコノミーはフィンランドの生態学的な持続可能性を向上させるだろう。
・CO2排出量や汚染の負荷といった環境への影響を、より効果的に抑制できるだ
ろう。
○社会:適応者から先駆者へ
・社会的行動のための政策手段を決定する際に、サーキュラー・エコノミーが考慮されるようになるだろう。公共部門が、幅広い方法でサーキュラー・エコノミーの飛躍に関わってくるだろう。官庁、民間、第三セクター間のいわゆる官民パートナーシップ(PPP)が重要な役割を果たすだろう。有効な実験指向のアプローチや、教育への投資についても同様である。
・サーキュラー・エコノミーはフィンランドで幸福を生み出し、サービスと分かち合いによる経済への移行を促すだろう。
・人々のサーキュラー・エコノミーに対する認識は向上し、国内市場の需要の刷新につながり、サーキュラー・エコノミーの製品やサービスに注目が集まるだろう。
・消費者は新しい消費モデルを採り入れるだろう。そうしたモデルは、誰の目にも見えるものになるだろう。提供とリサイクルのサービスを提供する「分かち合いサービス」の成長がその一例である。
(以上)