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先月末に世界にも発信したJFSニュースレター記事をご紹介します。イーズの主宰する異業種勉強会のメンバーでもある日本海ガスの「サーキュラー・エコノミー」の取り組みと実績です。
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「製品ではなくサービスを売る」~日本海ガスの15年にわたる取り組みと実績
●「製品ではなく、サービスを売る」
資源のひっ迫や廃棄物・二酸化炭素の排出削減の必要性を背景に、世界中でサーキュラー・エコノミー(循環型経済)への取り組みが加速しています。
サーキュラー・エコノミーには様々なアプローチがありますが、そのうちの一つがPaaS(Product as a Service)と呼ばれる「製品ではなく、サービスを売る」というビジネスモデルです。
たとえば、米国には、DIY(Do it yourself)用に穴開けドリルを持っている家庭が多くあります。ある調査によると、一台のドリルがその生涯に使われる時間は30分ほどだそうです。ほしいのはドリルでしょうか? それとも穴を開けることでしょうか? ドリルのコレクターでなければ、おそらく、答えは「穴を開けること」でしょう。そうであれば、ドリルを売るのではなく、「穴を開ける」というサービスを売るというビジネスモデルが考えられます。近年世界中で盛んになっているカーシェアリングも同じビジネスモデルです。クルマを売るのではなく、クルマが提供する「移動性」を売るという考え方です。
このような「製品を売るのではなく、サービスを売る」というビジネスモデルを、今から16年前に採用してずっと続けてきた会社が日本にあります。その実績や効果をお伝えしましょう。
●2001年、「モノは売らない」新しいビジネスモデルの事業を立ち上げ
富山県富山市に本社を置く日本海ガス株式会社は、富山県・石川県に都市ガス・LPガスを供給しているエネルギー事業者です。創立は1942年、資本金は6億7950万円、年商は161億7089万円(2016年12月期)、従業員数は273名(2017年4月現在)です。
主力のガス事業(液化天然ガス、液化石油ガス及びその他高圧ガスの製造、供給、販売)のほか、ガス機器の製作、販売及び賃貸、建築工事、土木工事、管工事の設計、施工、及び監理、空調、冷暖房、厨房、浴槽、衛生等の設備機器の制作、販売、修理及び賃貸などの事業を展開しています。ガス機器の販売の一環として、ガスファンヒーターも販売しています。
2000年頃に、知り合いだった同社の新田八朗社長に、「米国のインターフェイスという会社は、カーペットを売るのではなく、"カーペットの提供している快適さやくつろぎ"を提供する、とビジネスモデルを大きく転換し、リース契約でカーペットを提供する一方、回収したカーペットを徹底的にリサイクルし、環境負荷低減とビジネス成長を両立している」という話をしたところ、しばらくして、「お客様がほしいのは、ガスファンヒーターではなくて、暖かさのはずだ。夏の間はじゃまになるファンヒーターそのものを売るのではなくて、冬の間だけレンタルして使ってもらう」という新しい試みを始めました。
JFSでも2002年9月に、この取り組みについてこのように紹介しています。
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ガスファンヒーターではなく、暖かさを売る
富山県の日本海ガス株式会社は、ガスとともにガスレンジやガスファンヒーターなどのガス器具も販売している。同社では、昨年の冬から、「お客様がほしいのは、ガスファンヒーターではなくて、暖かさのはず」と冬の間だけレンタルして使ってもらうサービスを始めた。
料金は一冬3000円。サービスを開始した初年度は、用意した150台があっという間に予約でいっぱいになり、追加の要望が大きかったため、合計で200台以上をレンタルした。今年の春、引き取り時に「次の冬の予約」を取ったところ、90%以上の顧客が継続予約したという。
同社では、暖かくなって不要になると、ファンヒーターを引き取り、専門家がメンテナンスを行ったあと、倉庫に保管。一般家庭に置いておくよりも、メンテナンスが行き届くため、長く使えるという。そのため、3000円のレンタル料金でも十分に採算が合う。「お客様にも喜んでもらえるし、長く使うことで資源使用量や廃棄物を減らすことができる」。モノではなく機能に注目することで、顧客、会社、地球の3者がすべて勝者になれる取り組みだ。
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●「製品ではなくサービスを売る」ビジネスモデルの実績、付加価値
それから、16年が経ちました。改めて、この事業の目的や実績、成果について新田社長にお聞きしました。
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ガスファンヒーターレンタル事業を始めたのは、2001年9月です。大きな目的は、多様化するお客さまのニーズに対応することでした。この事業には3つの目的があります。
1つは、日本海ガスで「モノを売る」から「サービスを売る」へ発想の転換をはかることです。お客様が集合住宅にお住まいの場合、季節品の収納場所がないという悩みがあります。それに対しては、保管場所を提供することになります。また、転勤族の方は、ガス暖房の良さは理解しているが、買うと荷物が増えるという悩みをお持ちです。そこで、レンタルしていただくことで、モノを増やさずに、ガス暖房の良さを得ていただくことができます。
また、特に高齢者の方など、ファンヒーターの手入れが面倒だという悩みもあります。ガス器具もきちんと手入れをしないと寿命が短くなって、環境的にもよくありません。そこで、レンタル事業によって、器具のメンテナンスはわれわれのほうで行うことができます。顧客満足にもつながり、資源の有効活用もはかれます。
2つめの目的は、ガスのファン作りです。レンタルであれば、購入するまえにお試し的に使ってみることができます。「ガスのファンヒーターを使ってみたいがガス代が高いのでは?」と心配する方々も、まずは使ってもらって、その効果とガス代がどのくらいになるかを実感していただくことができます。
3つめの目的は、ガス暖房の普及促進です。都市ガス普及地区を除けば、富山県は、給湯の7割、暖房の9割近くが灯油を使用している土地柄で、機器も灯油も安いのが現状です。CO2の多く出る灯油に換えて、ガス暖房を使っていただけるよう、レンタルを入り口として位置づけています。
ガスファンヒーターのレンタル期間は、暖房需要期である10月から翌年4月末までです。9月に募集を開始し、利用者宅まで10月上旬より順次配達し、翌年5月に回収に回る。定額でガスファンヒーター機器を貸し出し、使わない時期に回収・清掃して保管するというサービスです。
料金は、1シーズンあたり、8~10畳用で3,000円(税込)、10~12畳用で4,500円(税込)ですから、大変手軽にレンタルしていただくことができます。
利用いただいているお客様からは、「収納場所がいらない」「初期投資が不要」「配達・取り付け・回収をガス事業者が行うので手間がかからない」「故障時に機器を無償代替してもらえる」「ガス事業者によるメンテナンスで常に安心して使用できる」などの利点があるとの声をいただいています。
利用者の多くが、単身赴任者、転勤族、官舎・集合住宅入居者、高齢者などの方々です。15年間続けてきましたが、レンタルファンヒーターの利用者は、配達回収・清掃・保管サービスに魅力を感じておられるので、リピート率はかなり高いです。
この図にあるように、利用台数はどんどん増えてきており、初年度の10倍にもなっています。
レンタルファンヒーター配達台数推移(出典:日本海ガス株式会社)
http://japanfs.org/ja/files/nl_170715.jpg
先に説明した想定していた目的に役立っているだけではなく、15年間やってみてこそのメリットも明らかになってきました。
1つは、回収してきた機器のメンテナンス業務でシニア世代の雇用を生み出すことができたことです。
2つめは、機器の設置と回収時には、お客様から望まれて顧客宅を訪問することになります。そのため、雰囲気の良い顧客接点機会となり、リフォームの受注など新たな収益につながることもよくあります。
3つめは、台数の増加に伴って、設置と回収は全社員で対応するようになったため、間接部門の社員も顧客の生の声を聴ける良い機会となっているということです。
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●最後に
レンタル制度によって、きちんと専門家が手入れをすることで、ガスファンヒーターの長寿命化がはかられ、ファンヒーターの製造に必要な資源やエネルギーを減らすことができています。同時に、「冬の間の暖かさがほしい」という顧客のニーズに、初期費用やメンテナンスの手間、シーズンオフの間の保管場所がいらないなどのメリットを追加しつつ応えています。また、それが社内的にも、社内外の関係性にもプラスになり、ビジネスにもつながっているという、好事例だと思います。
日本にもサーキュラー・エコノミーに位置づけられる素晴らしい取り組みがたくさんあります。これからも紹介していきたいと思っていますので、どうぞお楽しみに!
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単なる「環境政策」ではなく、「産業・雇用政策」でもあるサーキュラー・エコノミーの動き、とても注目しています。先月の読書会でも、『サーキュラー・エコノミー デジタル時代の成長戦略』を、取り上げてみなで学びました。
遠方や日程があわないなど参加できなかった方も、ご自分で読書会の音声を聞きながら学んでいただけます。これからにとって重要な動きの1つです。よろしければぜひどうぞ。
http://ishes.org/news/2017/inws_id002215.html