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「アセスメント・見える化業務支援」スタートしました!

2018年06月18日

このイーズのウェブサイトに、「アセスメント・見える化業務支援」という新しいコーナーが立ち上がりました。「見える化」は、ここ数年力を入れてきて、今後大事になっていくと考えているお手伝いの柱の1つです。どのようなことなのか、なぜ大事だと考えているのか、どのようなお手伝いをしているのか、今後の新しいお手伝いメニューはどのようなものなのかを、お伝えします。

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「アセスメント・見える化業務支援」

○なぜ、「測り、見える化すること」が重要なのか

環境負荷削減でも、社会価値の創造でも、地域経済の活性化でも、社員や住民の幸福度の向上でも、どのような取り組みにも大事なことが2つあります。

1つは「現時点の状況」、つまり「スタートライン」を知ること。「スタート前の状態」を測らずにダイエットや運動を始めても、取り組みの効果があったかどうかのフィードバックが効きませんから、効果的な取り組みを進めることは難しいでしょう。同様に、どのような取り組みでも「現時点の状況」をきちんととらえることは必須です。

もう1つの大事なことは、「取り組みの影響や成果を測り続けること」です。取り組みを計画したあとは、実施→効果測定→次の取り組みの計画→実施→効果測定......と続けていく、つまり、PDCA(計画→実行→振り返り→計画)サイクルを回していくことで、着実に目標に向かって進んでいくことができます。

「測定して見える化する」ことの重要性を認識した上で、2つ大事なポイントをお伝えしたいと思います。

1つめは、「目的によって何を測るかが決まる」ということです。ダイエットや運動の例にしても、体重を落としたいのなら体重をはかりますし、脂肪を絞りたいなら体脂肪率をはかるでしょう。同じダイエットや運動でも、目的によってはかるものが異なるはずです。「何を変えたいのか?」が測るもの(指標)を決めます。

もう1つの大事なポイントは、「私たちは、測りやすいものを測りがち」ということです。体重や体脂肪率は測りやすいですが、ダイエットや運動によって、もっと幸せになりたい、自己肯定感を向上したい、と思っていた場合、幸福度や自己肯定感はより主観的なものですし、測定方法も決まっていません。

往々にして、本当に大事なものは簡単には測れないのです。品質管理の大家エドワード・デミングは、「測らなければ管理することはできない」と述べる一方、「経営で大事なことのうち、実際に測れるのは3%しかない」とも言っています。

「測る必要があるが、測りにくい・測り方がわからない」場合、測りやすいものを測って代理指標にしようとすることがよくあります。本当は社会や人々の幸福度を測るべきですが、それが難しいため、GDP(国内総生産)を測って、国の進歩の指標としているのも、その一例かもしれません。「測りやすいものを測りがちだが、それでよいのか?」と自問すること、測り方をくふうして、できるだけ本当に測りたいものを測れるようにしていくことを忘れてはなりません。

○持続可能性の3本柱に関わる指標について

持続可能性の3本柱は、「トリプル・ボトムライン」と言われる「環境」「社会」「経済」です。それぞれの「測定・見える化」について考えてみましょう。

●「環境」の分野
環境問題が大きくなってきたこの数十年間に大きく進展しました。企業でも「CO2排出量」「水の消費量」「森林資源の消費量」「廃棄物の排出量」などを測定し、CSRレポートなどに掲載して、見える化することはふつうに行われるようになっています。

●「社会」の分野
今まさに発展中です。企業がSDGs(国連の持続可能な開発目標)の取り組みの一環として、何かのプロジェクトを行った場合、その「社会的なインパクト」をどう測るのか? 働き方改革を行うことで、社員の幸福度がどのくらい向上したかをどう測るのか? 環境分野の測定のように、定まった測定方法があるものは少なく、現在、さまざまな測り方が提案され、試され、研究されています。

●「経済」の分野
企業でいえば、これまで使われてきた売上や利益、ROI(投資回収率)などに加えて、「その企業がどのくらいその地元の経済に貢献しているのか」への関心が高まっています。

また、自治体や地域では、「地元経済の黒字部門は何でどのくらいか? 赤字部門は何でどのくらいか?」を測り、見える化することで、「現在、域外に流出してしまっているお金を地域の中で循環することで、外からのお金の流れが減っても、豊かな地域経済が回り続けるようにしたい」という要請が高まっています。このような「地元経済への貢献度」や「地元経済の現状」を測って見える化する動きも、始まっています。

※最新刊である『地元経済を創りなおす――分析・診断・対策』(岩波新書)はこの動きと手法・事例を伝えるためのものです。

○イーズの専門家チーム「アセスメント・見える化ユニット」

イーズではその必要性と重要性を認識し、「大事なもの・変えたいもの」を測定し、見える化する「アセスメント・見える化ユニット」を立ち上げました。以下の本ユニット担当スタッフの専門知識とスキルを活用して、環境負荷、ソーシャルインパクト、幸福度、地域経済の現状などを測定・計算し、効果的に「見える化」するお手伝いをしています。

●小野雄也:LCAの専門家
LCAの専門家。東京都市大学 伊坪徳宏LCA研究室にて、博士後期課程を修了〔博士(環境情報学)〕。博士論文は「日本およびアジアを対象としたウォーターフットプリント評価基盤の開発と活用」。日本学術振興会 特別研究員として、シドニー大学に留学後、東京大学 生産技術研究所 沖大幹研究室の特任研究員として研究に従事。開発したウォーターフットプリント原単位データベースは産業技術総合研究所の環境負荷データベースIDEAにも採用されるほか、企業の環境負荷削減に役立っています。それぞれの企業のニーズに寄り添ったLCAプロジェクトを設計・実施しています。

●新津尚子:社会調査の専門家
社会調査の専門家。東洋大学大学院社会学研究科社会学専攻博士後期課程を修了〔博士(社会学)〕。質問紙を用いた調査やインターネット調査の調査票作成、分析、集計を担当。調査の目的や組織・地域の実情に合わせて、丁寧に調査を設計し、ニーズに合わせた分析を行います。

●枝廣淳子:環境CSRコミュニケーションの専門家
心理学等に基づく実効性のあるコミュニケーションの立案・実施を行います。

○イーズ「アセスメント・見える化ユニット」の主なサポート領域と実績をご紹介します。

・環境負荷の見える化
・幸福度の見える化
・地域経済の見える化
・ソーシャル・インパクトの見える化

●環境負荷の見える化
ある製品・サービスを提供するために必要な生産~使用~廃棄の各過程で発生する環境への影響を評価する手法である「ライフサイクル・アセスメント」(LCA)を用い、企業の製品やサービスに伴うカーボン・フットプリントやウォーター・フットプリントなどの環境負荷を算定し、見える化します。

環境負荷を算定することで、設計や製造工程の改善による環境負荷の削減効果も算定することができます。

見える化プロジェクト全体の企画から、データ収集及び調査、算定のほか、LCAのレビューも行います。

また、算定結果をもとに、効果の高い削減案をともに考えるお手伝いも行います。

環境負荷やその削減効果をわかりやすく伝えるお手伝いを通して、企業ブランド価値の向上や、内外のESG投資家や消費者等への効果的なコミュニケーションをサポートします。

<事例1>
日本海ガス株式会社
算定内容 : CO2や水消費を含めた79項目

都市ガスおよびガス器具の販売を手がける日本海ガス(本社・富山市)は16年前より、ガスファンヒーターを販売するのではなく、レンタルする事業を行っています。顧客からは、「収納場所がいらなくて助かる」「初期投資なく、暖房を使える」「配達・取り付け・回収をガス事業者がやってくれるので手間がかからない」「万一故障しても、機器を無償代替してもらえる」「ガス事業者によるメンテナンスで常に安心して使用できる」など、好評を博し、貸し出し台数は右肩上がりに増えています。

このレンタルサービスは、顧客の利便性を高めるだけでなく、専門業者がメンテナンスすることにより、ガスファンヒーターの長寿命化にもつながり、また、単身者などが機器の寿命前に廃棄することも避けることができるなど、環境負荷の削減にもつながっています。

イーズ「アセスメント・見える化ユニット」では、16年間にわたる同社のガスファンヒーターレンタルサービス(Product as a Service)を対象に、LCAの手法で環境負荷の算定を行い、その環境効果を明らかにするとともに、今後に向けての改善提案につなげました。同社はLCAの算定結果を環境・CSR・SDGsコミュニケーションにつなげています。

【掲載されました】
ガスファンヒーターレンタルサービスのLCA調査結果 <日本海ガスさま社内報>
https://www.es-inc.jp/news/2018/nws_id009485.html

<事例2>
食品製造業、アパレル業、印刷業、化粧品業、化学製造業
算定内容 : CO2や水消費、土地利用

大手企業の環境部門で、事業活動による環境負荷削減効果の算定を実施。削減効果を数値化するとともに、ライフサイクルの観点からプロセスの改善点を見いだすことができました。社内で共有して改善につなげるとともに、結果を見える化して、ESG投資や企業ブランドにつなげるためのコミュニケーションの取り組みを支援しています。

<事例3>
自治体、農業、漁業、食品製造業、アパレル業、印刷業、化粧品業、化学製造業、飲食業、コンサルティングサービス業、小売業、研究機関、大学
算定内容 : 水消費

ウォーターフットプリントに着目し、製品やサービス、イベントや組織など幅広い評価支援を実施。ライフサイクルでの結果を把握することで、評価対象の有意性及び改善点を見いだすことができました。社内で共有して改善につなげるとともに、水消費をリスクとして捉え、経営戦略を練る上での材料とし活用しました。また、企業だけでなく、大学を始めとした研究機関でデータを活用されました。

●幸福度の見える化
「GNP(国民総生産)よりも、GNH(国民総幸福)のほうが大事」としたブータンの取り組みが1つの刺激となって、究極の目的であるはずの「幸福度」「真の豊かさ」を測ろうとする動きが世界中に広がっています。でも、GNPやGDP(国内総生産)は算定できるし、発表されているけれど、幸福度はどうやって測ればよいのでしょうか? 主観的な幸福度を測定することができるのでしょうか?

近年、幸福研究と統計学の進展があいまって、「幸福度の測定」技術が大きく進歩してきました。枝廣は、ブータン政府のGNHを世界に広げていこうという国際専門家委員会の一員でもあり、世界の最新の取り組みや手法等の情報にも近い立場にあります。イーズ「アセスメント・見える化ユニット」では、地域や企業のニーズにあわせて、「本当に大事なものを測る」お手伝いをしています。

<事例1> 島根県隠岐郡海士町(幸福度調査)
地方創生の先進地域の1つである、島根県隠岐郡海士町では、「海士らしい幸福度を測りたい」という要望にあわせて、「海士らしい幸福とは何か」を模索する作業から開始しました。これまでのさまざまな調査や委員会での議論、町の人々の声の聞き書きなどの膨大な資料から、「海士らしい幸せ」「海士らしさ」への言及をピックアップし、地域の方々との議論を通して、「海士らしい幸せを測る調査」を設計しました。

町役場から配布してもらった調査票が回収されたあと、分析を行いました。さらに、同じ項目での全国調査も行い、全国と比べての「海士らしさ」も浮かび上がらせました。結果は、役場の経営幹部へのブリーフィングを行って町政への反映をはかったほか、今後策定される総合振興計画にも役立てられる予定です。また、広報を通して町民にもフィードバックするとともに、ウェブサイトから広く発信されています。
http://www.town.ama.shimane.jp/topics/2000-1/post-191.html

この幸福度調査で「海士らしさ」の1つとして測定した「ないものはない」という価値観については、今回の結果をもとに、論文を執筆し、海外で開催される国際学会で発表するサポートもおこない、世界への発信にもつなげます。

<事例2> 株式会社ミナモト建築工房(社員満足度調査)
家づくりを通じて、持続可能な社会づくりに寄与したいと取り組む岡山県の地域密着型の工務店ミナモト建築工房のサポートを行う一環で、同社の今後の経営に活かすための社員満足度調査を設計・実施しました。分析結果は次期経営計画にも活かされ、社員も地域も地球も幸せになれる事業展開への一助となっています。
http://minamoto-k.com/

●地域経済の見える化
市町村は地域経済の活性化のために、「お金を引っ張ってくる」ことに注力しています。国の補助金をどうとってくるか、企業をどう誘致するか、観光客を呼び込んでどうお金を落としてもらうか......。それは大事なことですが、でも、いったん地域に入ったお金がすぐに地域から流出せずに、地域の中で循環しつづけるようにすることも、同じように、もしかしたら、それ以上に大事なことです。地域にお金を注ぎ込んでもすぐに出ていってしまっている現状は「漏れバケツ」に例えられます。

自分の地域の経済はどのくらいの大きさのバケツなのか? 何によってどのくらい外からお金を稼いで(お金を引っ張ってきて)いるのか? 何でどのくらい外にお金が漏れ出てしまっているのか?がわかれば、つまり、バケツの穴がわかれば、それをふさぐための具体的な手立てを考え、実行していくことができます。地域だけではありません。地域の中にある事業者が、どのくらい地域経済に貢献しているのかも大事な視点です。

イーズ「アセスメント・見える化ユニット」では、地域の漏れバケツの現状を見える化するための地域産業連関表を作成することを通して、豊かで安定した地域経済を支援しています。この数値は、自治体運営の指標の1つとしても有用です。また、事業者の地元経済への貢献度を数値化することで、より地域に資する事業者となっていくお手伝いもしています。

日本で地域産業連関表を作成している数少ない自治体である北海道下川町で、地域経済の漏れをふさぐ具体的なプロジェクトの企画や実行の支援を行っているほか、熊本県南小国町で、町の経済を見える化するための産業連関表の作成を行っています。

また、ある事業者がどこからどのくらい調達しているか、その調達先ではどこからどのくらい調達しているか、事業者の従業員はどこからどのくらい購入しているかを遡って算定することで、その事業者の地域経済への貢献を算定する」LM3」(Local Multiplier 3)という手法があります。この手法を用いて、ある事業者の地域経済への貢献度を見える化する作業を行っています。

さらに、地域経済への波及効果を念頭に、一般の家庭を対象に、どこから何をどのくらい買っているのかを調べる「家計調査」も行っています。調査の結果を参加住民と話し合うワークショップも開催し、住民の地域経済への意識啓発にもつなげています。

●ソーシャル・インパクトの見える化
たとえば、障がい者雇用促進プロジェクトや失業者の就労支援プロジェクトの創り出す価値をどのように測定することができるでしょうか? このような社会への働きかけを行うプロジェクトが投資に見合う効果を生み出しているのか、どのように知ることができるのでしょうか?

社会に創り出した価値(ソーシャルインパクト)を測定することで、プロジェクトへの支援を集めたり、支援への説明責任を果たそう、プロジェクト自体をさらに改善していこう、という動きが、英国を中心に広がっています。

単なる財務指標や、ある程度範囲を限定して算定できる環境負荷に比べ、測定や算定の難易度の高い領域ですが、イーズのアセスメント・見える化ユニットでは、SRIO(social return on investment)測定の草分けである英国のNEFconsultingとパートナーシップを組んで、最先端の算定手法や事例を日本に導入していきます。

~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~

新しいチャレンジ分野も含め、「本当に大事なものを測ること・見える化することで進めていく」お手伝いを進めていきます。「これはどうかな?」「こういうことで困っているのだけど」等、私たちにお手伝いできそうなことがありましたら、ぜひお声がけください!

ところで現在、以下の国際会議に参加するため香港出張中です。

16TH ANNUAL MEETING INTERNATIONAL SOCIETY FOR QUALITY-OF-LIFE STUDIESPROMOTION OF QUALITY OF LIFE IN THE CHANGING WORLD

会議初日に、上記「幸福度の見える化」のお手伝いをさせていただいている島根県・海士町の方々と一緒に、海士町の「ないものはない」という考え方が世界の持続可能で幸せな社会づくりに役に立つ!という発表をしてきました。

「ないものはない」:海士町が世界に送る「知足」の考え"
Naimono Wa Nai": Ama Town's concept of sufficiency and message to the world

発表の内容についてはまたお伝えしたいと思いますが、セッション後何人もの参加者が来てくれて、コメントや感想、今後の共同研究の可能性など、大変好意的な反応をいただくことができました。

「見える化」は手段です。その先にある目的に向かって進んでいくために、いろいろな形でのお手伝いができればと思っています。

 

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