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8月17日に、第1回プラスチック資源循環戦略小委員会が開催されました。世界的に大きな問題となっている海洋プラスチック汚染に対して、この6月に開催されたG7で「海洋プラスチック憲章」がまとめられた際、署名しなかったのは、米国と日本だけでした。当然ながら内外から大きな批判が向けられたわけですが、そういった批判に対してもしっかり対応できる、日本ならではの考え方やビジョンを作っていくことが期待されている委員会です(と理解しています)。委員会の委員は17名、私も委員となっています。
委員名簿や配付資料等はこちらからご覧ください。
http://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-01b.html
私は現在ロンドン出張中のため、初回の会合に出られませんでした。事前に資料を提出し、問題意識を共有させていただきました。私の提出資料も上記のサイトから見ていただけますが、以下に掲載します。
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第1回プラスチック資源循環戦略小委員会
枝廣淳子
海外出張のため、初回欠席となって申し訳ありません。紙面での提出となりますが、委員として参画するにあたっての問題意識を共有させていただければと思います。
1) 日本の取り組みは遅れていることをしっかり認識したうえで戦略を策定するべき
10年前の2008年からすでにルワンダでは、レジ袋やビニール袋の製造・輸入・販売・使用が全面禁止されていることはあまり知られていない(ルワンダの空港に到着した旅行客のスーツケースにビニール袋が入っていれば没収される)。昨年、ケニアでも同様の方策がとられた。こうした発展途上国よりも日本の意識・取り組みは遅れていることをしっかり認識すべきである。
2)パッチワークをやめて、本質的なビジョンと包括的な枠組みを
日本のこれまでのプラ対策は、容器包装リサイクル法などによる個別対応であって、プラそのものを経済や社会の中でどう位置づけるか、という本質的な考えや枠組みづくりには至っていない。地球温暖化が、省エネを推進するだけでなく、化石燃料そのものの位置づけを変えてきているように、小手先の施策ではなく、プラそのものの文明における位置づけを考え直す必要がある。フォアキャスティングでなく、バックキャスティングでの野心的なビジョンが必要だ。
3) 国際競争力の源泉として位置づける
欧州でのプラ対策の盛り上がりの背景は、人間の健康への影響への懸念が広がったこと、サーキュラーエコノミーへのシフトにおける各国の主導権争いやルールセッティングを通して、国際競争力の源泉となってきたことがある。日本にとってこれはチャンスでもあるが、手をこまねいていては大きなリスクとなる。こうした大きな枠組みの中で、プラ問題を日本のプレゼンスと国際競争力につなげるビジョンと取り組みを考える必要がある。
4)イノベーションの原動力としての位置づけを
1970年に、アメリカで「自動車の排気ガス中の一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物を10分の 1以下に規制する」という「マスキー法」が成立した当時、その規制値のクリアする見通しのある自動車メーカは世界で1社もなかった。この厳しい規制をばねにイノベーションを起こした日本の自動車メーカーが最初の規制合格車を生み出し、その後の日本車の高い位置づけにつながったことはよく知られている。プラ問題に対して「他国もやっているから仕方なしに」とリアクティブに対応するのではなく、積極的にイノベーションの原動力に転換する考え方としくみが必要である。
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しっかりと根本的なところからの話し合いができるのか、ぜひ見守っていただきたいと思います。
また、海洋プラ問題については、まとまった記事を執筆中です。知れば知るほど、恐ろしくなる現状を、各国や企業の取り組みとともに、少しでもお伝えしていき、日本が、そして自分たちがどうすべきか、考えていくための一助となりたいと思います。