今年の夏は、日本でも41度を超える気温が記録されたほどの信じられない酷暑となり、西日本で特に大きな被害をもたした豪雨、各地での大雨・ゲリラ豪雨など、「これまでと違う時代に入りつつある」と感じた方も多かったのではないでしょうか......?
気候変動の進行とともに増えると予測されているこうした事態が顕在化している状況に、「悪化の一途ではないか」「もう手遅れなのではないか」と悲観的になっている方もいるかもしれません。こんなときだからこそ、読んでいただけたらと思います。
そうした状況は、日本だけではないのでしょう。まさに現在、 米南東部に向かっている大型ハリケーン「フローレンス」も、米国や欧州、アジア、オーストラリアなどでも多発している山火事も、人々の希望を失わせかねない脅威となっています。
こういう時だからこそ! 『不都合な真実』『不都合な真実2』の映画・書籍を世に問うた米国元副大統領アル・ゴア氏が進めているclimaterealityprojectから少し前に届いた、「希望を選択する24の理由」をお届けしたいと思います。
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1. 希望を選択する
気候変動がもたらす危機という現実は、日を追って、緊急性を増している。しかし、未来に対して悲観的になることはない。私たちは希望を選択するし、より良い未来は私たちの手の中にある。なぜなら、私たちは変わることができるし、変わっていくからだ。そのことを説明する24の理由を次に述べる。
2. 技術の進歩
(1) 再生可能エネルギーは成長を続け、価格も下がりつつある
再生可能エネルギーのコスト低下と技術の進歩により、世界中でかつてないほど多くの太陽光・風力発電所が、より低いコストで作られている。今世紀半ばまでに世界のエネルギー需要は100%再生可能エネルギーでまかなえる、と予測する研究もある。
(2) 屋上太陽光発電の価格競争力が向上
世界中で、太陽光エネルギーが化石燃料エネルギーよりも価格競争力を持つようになっている。太陽光発電による発電コストが電力会社から購入する電力料金や発電コストと同じ、もしくは安くなる「ソーラーグリッドパリティ」は、太陽光エネルギー活用のコスト効率性を示す重要な指標だ。米国ではSunshotイニシアティブで2020年にソーラーグリッドパリティを実現するという目標を掲げている。
(3) 進歩を続けるエネルギー貯蔵
太陽は24時間出ているわけではなく、風が常に吹いているわけでもない。再生可能エネルギーを、作り出すだけではなく貯蔵する方法が重要になってくる。電池の形でエネルギーを貯蔵するエネルギー貯蔵システムは目覚ましい進歩を遂げており、需要も伸び続けている。
(4) 進化する配電網(スマートグリッド)
異常気象等の影響で停電しやすい単一の発電所よりも、複数の発電源から電力を得るスマートで柔軟性の高い配電網が必要不可欠だ。スマートグリッドによりエネルギー効率が高まり、費用が節約でき、信頼性も高まる。これはエネルギー市場に大きな変革をもたらす可能性がある。
(5) 盛り上がる電気自動車(EV)市場
ここ5年で世界中のEVの売上高は10倍になり、現在300万台を超えるEVが道路を走っている。シアトルでは、ドライブ・クリーン・イニシアティブによって乗用車やトラック等の陸上交通や海上輸送の大規模な電化をすすめており、2050年までに交通からの温室効果ガス排出をなくすという目標を掲げている。
(6) 輸送の効率化、公共交通網の発展
トランプ政権による排ガス規制の緩和の動きをよそに、多くの自動車メーカーが燃料効率の向上に取り組んでいる。その一方で公共交通、大規模輸送の利用も急速に伸びている。インドやコロンビアでは公共交通網に多額の投資をし、省エネルギー、国土の保護、大気汚染の緩和等に一役買っている。
(7) あらゆる予想を吹き飛ばす風力発電の発展
風力発電による電力は、私たちの生活のあらゆる側面で使われるようになっている。2017年上半期、スコットランドでは風力発電がエネルギー需要の57%を供給した。さらに、風力発電は電気だけでなく雇用も生み出している。
3. 立ち上がる人々
(8) 金融機関は汚染されたエネルギーにお金を出さない
大手銀行や金融機関は化石燃料への投資をリスクの高いビジネスだとみている。世界銀行グループでは、石炭火力発電所の新設に対する資金提供を制限している。
(9) 「グリーン化」する大企業や世界的ブランド
最近になって、いくつもの巨大企業がクリーンエネルギーを大々的に採り入れるようになった。コールズやホールフーズでは、使用する総エネルギーの100%以上を再生可能エネルギーから得ており、グーグルやアップル等のIT最大手は、世界中の事業における再生可能エネルギーの利用が100%に達したと発表した。
(10) 宗教コミュニティによる再生可能エネルギーの促進
世界中の宗教コミュニティも、再生可能エネルギーに光明を見いだしている。2015年、バチカンではローマ法王フランシスコが気候変動を含む世界の環境問題に関する緊急の声明を発表した。インターフェイス・パワー・アンド・ライトのように、信仰を持つ人々を組織して持続可能な未来を支援する団体もある。
(11) 関わりを深める若者たち
若者たちは、気候変動によって失うものが最も多い。それゆえ気候変動との闘いで最も大きな声を上げている集団かもしれない。学校への太陽光発電の導入や、化石燃料からの投資引き上げ、植林や持続可能性の達成に向けた教育機関のネットワーク作りなどで、学生グループは先頭に立って活動している。
(12) この流れが世論にも火をつける
2017年のピュー研究所の調査によれば、13カ国の回答者(特に中南米とアフリカ)で圧倒的多数の人々が気候変動を重大な脅威だと認識している。米国では何十万もの人々が気候変動の解決を求めて街を行進し、人口の70%は「米国は風力や太陽光など代替エネルギーの開発に力を入れてほしい」と考えている。
4. 気候問題を解決することのメリットは明らか
(13) 再生可能エネルギーによる貧困の撲滅とエネルギーへのアクセス拡大
発展途上国の地方部では、世界人口の5分の1が配電網に接続できず電気を利用できない。しかしそのような地方部でも、太陽エネルギー、LED灯、価格が手頃になった省エネ家電、技術への新しいアプローチと地方への支援を行う起業家のおかげで、電気を利用できる日はそう遠くない。
(14) クリーンエネルギーが生命を守り、より安全な世界を作る
温暖化する気候が食料や水の安全を脅かし、人の移動が国を不安定にする。しかし、クリーンエネルギーを活用すれば、費用を削減できるだけではなく、より安全な世界を作ることができるなどメリットは大きい。
(15) クリーンエネルギーにより、人々の健康状態が改善
簡単なことだ。化石燃料を燃やすと大気、水、土地が汚染され、その汚染にさらされれば死に至る病にかかる可能性がある。太陽、風、水の力を活用すれば、貴重な資源を汚染することがない。クリーンエネルギーによって、私たちはもっと簡単に呼吸でき、水を飲み、農業を行える。
(16) 気候変動への対策は、森林を守ること
森林伐採は世界の炭素排出量の10%強を占める。しかしインドやメキシコなどで、温室効果ガス排出削減やパリ協定の目標達成に向けた主要戦略として、森林伐採を大幅に削減する政策が作られようとしている。数千億トン相当の炭素を貯留する森林を守ることは、炭素を本来あるべき場所に留めておくことになる。
(17) クライメート・スマート農業が成長中
農業のやり方がどんどん「スマート」になってきている。いくつかの研究や試験プログラムによると、持続可能な農業管理技術を採り入れることで、温室効果ガス排出量を大幅に削減でき、急増する世界の人口に対して、持続可能な生態系の中で作られた新鮮で健康的な食料を提供できる。
(18) クリーンエネルギーが雇用を創出
再生可能エネルギー産業は昨年、980万人に仕事を提供した。2030年までに世界のエネルギー構成に占める再生可能エネルギーの割合が倍になれば、さらに2400万人分の雇用が生まれる。米国だけでも、太陽エネルギーは電力業界で最大の雇用主であり、米国経済の他業界の9倍ものペースで雇用を創出している。
5. 地域が動き出している
(19) 前進する米国の市長たち
2017年6月1日、「環境を考える市長会(クライメート・メイヤーズ)」のメンバーである米国402都市の市長たちは「パリ協定で制定された目標を採択し、尊重し、コミットメントを続ける」という誓いを立てた。この中には、ロサンゼルス、ニューヨーク、ボストン、ヒューストン、シカゴ、フィラデルフィアといった米国最大規模の大都市が含まれる。
(20) 2017年、市民3000人が「クライメート・リアリティ・リーダー」に
気候変動に関するストーリーを語り、地域社会での行動を喚起するリーダーを育成する「クライメート・リアリティ・リーダーシップ・コア」。昨年はデンバー他米国各地で開催され、家庭での会話から国際サミットまで、気候に関する会話を形成し、解決に向けた21世紀型の活動を構築するツールを活動家に提供した。
(21) 州や省などの地方自治体も気候変動へ明確な姿勢を示す
世界全体で、クリーンエネルギーが州、地方、地域レベルへ急速に広がっている。カナダでは州政府が効果的な炭素税を実施し、インドでは州同士が太陽光発電の導入を競い合っている。アフリカの19カ国は持続可能な成長とエネルギー安全保障に向けて力を合わせ、米国では気候変動への行動計画を精力的に進めている州(カリフォルニアとNY)がある。
(22) 主要都市が気候問題解決の先頭に立つ
コペンハーゲンは2025年までにカーボンニュートラルを目指す。サンフランシスコは2020年までに再生可能エネルギー100%達成を計画している。バルセロナは温水の60%を太陽エネルギーで沸かすよう義務づけている。ロサンゼルスは2025年までにコールフリー(石炭火力を使用しない)を目指す。
(23) 地域社会で交通のクリーン化が進む
人類の歴史と共に発展してきた技術のおかげで、私たちはより優れた、よりクリーンな移動手段でA地点からB地点まで移動できるようになっている。パリでは、自転車の利用促進やカーシェアリング等の政策により、2020年までに交通による排出量の60%削減を目指している。
(24) 大きな変化を起こすための方法は、かつてないほど多い
家の電球を取り替えたり、ソーダの缶をリサイクルしたりするほかに、気候問題の解決に向けて真の変化を起こしたいという願いをどう形にしていくか。米国では600以上の電力会社が、グリーン電力を選択できるオプションを提供している。「コミュニティソーラー」、つまり地域社会で太陽光発電所を作る試みも始まっている。インターネットで5分間検索してみれば、様々なチャンスや方法が見つかるだろう。
5. 今、何をすればいいのだろうか?
気候変動の危機の解決策は私たちの手の中にあるが、それには皆さんのような市民が真実の声を上げる必要がある。新聞の投書欄に投稿してもいいし、気候変動の危機についての懸念をSNSで広くシェアしてもいい。気候変動について家族や友達と話してみよう。危機の真実について議論することは、心構えを変え、あなたの大切な人々が地球に何が起きているかを知り、何ができるかを知るチャンスになる。
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バラトン合宿に向けて、今朝、ブダペストからバラトン湖へ、みんなで大型バスで2時間ほど移動しました。私は今年で17回目の参加、かなーりの古参組です。バスでは、スウェーデンから今回初めて参加した若い参加者といろいろおしゃべりをしました。
私が大学の授業や講演などで、若い世代に「未来は今よりも良くなっているか? 変わらないか? 悪化していると思うか?」と尋ねてみると、ほとんどの人が「悪化していると思う」と答えると話すと、彼も「スウェーデンでも若者は未来に悲観的な人が多い」と言っていました。
「だからこそ、地域で実際に取り組む人たちを応援することが大事だと思う。ローカルレベルだからこそ、変化を起こしやすいし、自分たちでその変化を感じ、先に進む力にできると信じているから」と言うと、彼もまったく同じ考えです、と。
私が日本の地域のまちづくりのお手伝いをしている話をすると、彼は大学院の研究者グループで、自治体が自分たちで変化を作り出すためのプログラムを開発し、実施しているとのこと。プログラムについての資料や事例を詳しく教えてもらうことにしました。きっと参考やヒントになることがあると思います。さっそく日本に持って帰れるものを得られそうです! どうぞお楽しみに~!