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つながりを読む

海士町からの動画「ストップ!漏れバケツ ~島の経済を見える化しよう~」

2019年08月06日

島根県・海士町で、町の産業連関表を作成するプロジェクトのお手伝いをしています。町では地元のみなさんに協力をお願いするため、説明用の番組をつくり、地元ケーブルテレビ局『あまコミュニティチャンネル』で放映しています。産業連関表のわかりやすい紹介番組、ぜひご覧ください!

うれしいことに、岩波新書「地元経済を創りなおす――分析・診断・対策」が5刷となりました!

多くの方に「読みましたよ」「もっと詳しく話を聞きたい、多くの人に聞いてほしいので講演会を開きたい」とお声をかけていただいていて、とてもうれしく思っています。

足元の人口減少や、商店街の衰退にどう歯止めをかけたらよいのか、外部に頼りすぎない地元経済を創っていくにはどうしたらよいのか――問題意識を共有している方々や地域が本当に多いのだと思います。

イーズでは、「見える化ユニット」を組織して、「アセスメント・見える化業務」の支援をしています。
https://www.es-inc.jp/visualize/

「見える化」の対象として、「環境負荷」「幸福度」「ソーシャルインパクト」とともに、「地域経済の見える化」にも取り組んでいます。
https://www.es-inc.jp/visualize/visual_local_econ.html

今年度は、北海道・下川町、熊本県・南小国町、島根県・海士町の「町の経済を見える化し、漏れ穴をふさぐための打ち手を考える」お手伝いをしています。

今年の3月16日には、この3町の方々においでいただき、「地域経済循環フォーラム」を開催しました。「人も経済も資源も循環する、持続可能で幸せな地域をつくる」をテーマに、200人もの方々が参加して下さいました。

「当日予定が合わなくていけなかったが内容を知りたい」という声を多くいただき、資料をお送りするとともに、動画で当日のようすを見ていただく「動画受講」(1,000円・税込)を準備しました。3町の取り組み、ぜひご覧下さい! 刺激や元気をいっぱいもらえると思います。
https://www.ishes.org/news/2019/inws_id002628.html

ここでも登壇してくれた海士町では、町の産業連関表を作成するプロジェクトを始めるにあたって、町民や町の事業者に協力をお願いするため、説明の動画をつくり、地元ケーブルテレビ局『あまコミュニティチャンネル』で放映しました。

私も登場して、産業連関表とは何か、それで何がわかるのか、を説明させていただきました。放映を見せてもらったら、町長と共に登場する役場職員と商工会事務局長の"名(迷?)演技"も楽しく、ぜひ島外の方にも見てもらえたらとお願いしたところ、YouTubeにアップして下さいました! 14分の動画です。よろしければぜひどうぞ~!

「ストップ!漏れバケツ ~島の経済を見える化しよう~」
https://youtu.be/Bp4LB9UHxnQ

さて、3町のなかでも最初に産業連関表を作成して、町の経済を見える化し、対策を進めて、実際に大きな成果(3億円以上、町外への流出をストップし、町内に環流)を挙げている下川町の取り組みを、幸せ経済社会研究所の英語ニュースレターとして世界にも発信しましたので、その日本語版をご紹介しましょう。


~~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~


地元経済を創りなおす~北海道・下川町の取り組み

○しっかりした地元経済の重要性
私はこの数年、中央政府のエネルギーや成長戦略、プラスチック問題などの委員会の委員を務める一方、北海道から九州、離島など、小さな町のまちづくりの支援に力を入れています。共有ビジョンの策定とともに、地元経済を見える化することで、外部に依存する割合を減らし、自分たちで回していける地元経済へのシフトのお手伝いに力を入れています。

地域のお手伝いに力を入れているのは、一つには「未来は地域にしかない」と信じているからです。政府は方向性や政策は打ち出せても、実際に人々の暮らしが営まれ、変化が生み出されるのは地域だからです。また、急速な人口減少・高齢化の進む日本にとって、地方の過疎化や疲弊は地方に住む人々だけの問題ではありません。

日本には現在、人口3万人未満の自治体が954あります。その人口を合計しても、日本の総人口の約8%にすぎませんが、それらの自治体の面積を合わせると、日本全体の約48%になります。つまり、わずか8%の人々が日本の国土の半分を支えてくれているのです。こういった地方で地域経済が回らなくなると、ますます人口減少に拍車が掛かり、無人地帯が広がっていき、日本の国土を保全することすらおぼつかなくなってしまうと心配しています。

今でも毎年10万人の若者が地方から東京に移住しています。「地元に帰りたい」という思いを持っている若者も少なくないのですが、「仕事がないから」東京に出てくるし、地元に戻れないと言います。

各地の地域がそれぞれ地元の経済をきちんと回して、お金や雇用を外部に依存する割合を減らしておくことは、次なる金融危機やエネルギー危機、顕在化する温暖化の影響などに対する「しなやかに立ち直る力」(レジリエンス)を高める上でも、大きな鍵を握っていると思うのです。

○地元経済は「漏れバケツ」?
それぞれの地域は、地域の経済のために、政府からの交付金や補助金のほか、企業誘致、観光客の呼び込みなど、地域にお金を引っぱってこようと懸命に努力しています。しかし、これから、政府からの交付金や補助金も減ってきます。これまでのように、「どうやって地域にお金を持ってくるか」を考えるばかりでなく、「どうしたら地域から出ていくお金を減らせるのか」に取り組むことが重要になってきます。つまり、「一度地域に入ったお金を、どれだけ地域内で循環して長くとどまるようにさせるか」が大切なのです。

その重要性を、わかりやすく直感的に伝えてくれるのが英国ロンドンに本部のあるNew Economics Foundation(NEF)の「漏れバケツ」モデルです。地元経済を「バケツ」と考えたとき、どこから水を持ってきてどれだけ投入するかだけでなく、そのバケツのどこに穴が開いていて、せっかく入った水が出て行ってしまっているかも重要です。その穴がわかれば、ふさぐ取り組みができます。

 「町から漏れ出ているお金を把握して、減らそう!」と実際に動いている北海道・下川町(人口約3300人)の取り組みを紹介しましょう。

○町の経済規模と域際収支がわかった!
町から漏れ出しているお金を減らすためには、まず「どこに、どのくらいの大きさの漏れ穴があるのか」を突き止める必要があります。全国・都道府県レベルなら産業連関表を見ればわかるのですが、市町村のレベルでは作成されていません。そこで、下川町では2012年に大学と協力して、町の産業連関表を作成しました。

作成にあたっては、住民基本台帳人口、北海道道民経済計算などの公的な統計データを活用するとともに、下川町内の主な事業所(約50事業所)に対して、各事業所の経済規模や調達についての聞き取り調査を行いました。域内の企業が「実際にどこからモノを買って、どこに売っているか」を聞き取り調査をすることで、実際の状況を反映した産業連関表が作成されます。

産業連関表を作成することで、「下川町の経済規模(域内生産額)は215億円」ということがはじめてわかりました。どれくらい町外からモノやサービスを買っているのか、どのくらい町外にモノやサービスを売っているのかを産業部門ごとに示す域際収支を見ると、地域の産業の強みと弱みも一目でわかります。

下川町の黒字部門は、製材・木製品(約23億円の黒字)と農業(約18億円の黒字)であることがわかりました。逆に、大きな赤字部門は、暖房用の灯油などの石油・石炭製品(約7.5億円)と電力(約5.2億円)でした。つまり、町の人々が使うエネルギーの購入費として、13億円近くが域外に漏れ出していたのです!

産業連関表を使えば、「漏れをふさいだ場合」の経済効果も計算できます。電力と暖房用燃料を下川町の木質バイオマスでまかなえれば、エネルギー購入費の合計13億円の赤字がなくなるだけでなく、波及効果も含めて、域内生産額が28億円増加し、100名の雇用を生み出すことがわかったのです。

○地元資源を活用して、エネルギー自給の町へ!
下川町では、この大きな可能性を現実のものにするために、森林資源によるエネルギー自給をめざす取り組みを始めました。まずは、暖房用の灯油などの石油・石炭製品を、地域の森林資源で置き換える取り組みです。町内の林業・林作業で発生する林地残材や小径の間伐材、枝打ちした枝、加工プロセスから出る端材などを原料に、木材チップを製造します。そのチップを燃料に、町内のバイオマスボイラーで熱を生み出し、100%町産の熱を町内に供給します。

現在、13基のバイオマスボイラーが稼働しており、下川町全体の熱自給率は49%。すでに町内の熱需要の半分近くを自給しているのです。これによって、2億円以上のエネルギー代金の流出を止め、地域や森林に循環しています。また、この化石燃料からバイオマスへの切り替えによって、全町のCO2は18%削減。今後は、熱供給導管の埋設を進めて熱の100%自給をめざすとともに、電力の域内生産への取り組みも進める予定です。

○利害の対立する事業者の巻き込み方
暖房の燃料を灯油から地元の木材チップを切り替えていくとしたら、これまで灯油を売って生計をたてていた人々はどうなるでしょうか? 暖房用の灯油の売上は減っていき、熱の100%自給が実現すれば、商売は成り立たなくなってしまいます。灯油などの化石燃料を販売してきた事業者が森林バイオマスの取り組みに反対したとしても、無理のないことでしょう。

この「移行に伴う課題」に対して、下川町は共創型のアプローチで取り組んでいます。灯油を販売している4つの灯油組合に、バイオマスエネルギーを供給する協同組合を作ってもらい、バイオマス原料の製造と配達を担当してもらっているのです。

灯油の代わりにバイオマス原料を販売できれば、事業者も商売を続けられます。地元の化石エネルギー事業者が再エネ事業者に転換していくことを支援する取り組みは、共創型の移行のお手本ではないでしょうか。

○新しい産業と転入者の増加
下川町では近年、森林資源や熱エネルギーを活用したさまざまな新しい事業が興こっています。豊富な熱エネルギーを求めて企業が薬草の研究所を設置したほか、温室によるシイタケ栽培もすでに年商7000万円を超える規模となっています。木工作家が移住したり、薪屋・トドマツ精油などの新しいビジネスも始まっています。

そして、こうした新しい動きに惹かれて、下川町へのUターンやIターンも増えています。年間200人を超える人々が転入し、社会減による人口減少に歯止めがかかっているのです。

下川町では、「地域の経済は、産業経済と家計経済から成り立っているが、産業連関表では家計経済はわからない」と家計調査も始めました。また、最初の産業連関表作成から5年たち、変わってきた現状を正確に把握するために、産業連関表も新しく作成し直しました。

日本の自治体の中で、ここまでしっかりと地元経済を見える化し、具体的な取り組みを進めているところは、まだそれほどありません。しかし、中央政府に頼り続けることは難しいという認識が広がってきた今、地元経済の見える化や、その漏れをふさぐことに関心を寄せ、取り組みを始める自治体も出てきています。

私はこのような考え方やツール、事例を知ってもらいたいと、今年2月に『地元経済を創りなおす』という書籍を出版しました。すでに3版となり、関心の高さを感じます。また、下川町のお手伝いのほかにも、九州・熊本県の南小国町や、島根県の離島・海士町などでも、産業連関表を作るなどの作業を進めているところです。

それぞれの地域が完全に「自給自足」になることをめざしているわけではありませんし、それは現実的でもありません。ただ、あまりに外部に依存しすぎているために脆弱になっている各地の経済が少しでもバランスを取り戻すお手伝いができればと願っています。


~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~


ほかにも参考になるかもしれない自分の資料をご紹介しておきます。

地域産業連関表について
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/shigoto.../h31-04-24-shiryou2-3.pdf

未来は地域にある! ~持続可能で幸せな 地元経済を創る~
http://asahigroup-foundation.com/academic/business/pdf/180904_2.pdf

また、イーズ「見える化ユニット」のメンバーのひとり、幸せ経済社会研究所の新津尚子研究員のコラムもどうぞ!

産業連関表―地域全体のお金の流れを把握する
https://www.amita-oshiete.jp/column/entry/015364.php


産業連関表をつくるだけでは物事は変わりません。その貴重なデータを読み解いて、実際の変化につなげていくこと。そして、産業連関表は地域経済の産業部門の動きを見るためのものですので、一般の消費者の家計部門(日々の買い物など)についても調べていくことが有効です。地元経済を創りなおすための買い物調査のプロジェクトも進めています。

このような取り組みからわかったことや実際の効果をみなさんにお伝えする機会をぜひつくりたいと思っています。どうぞお楽しみに!

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