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地域エネルギー会社がますます大きなカギに~気仙沼での挑戦

2019年12月15日

今年は台風の被害が各地で出てしまいました。しかし、台風による停電の真っ暗闇の中でも、明るいニュースもありました。

千葉県の睦沢町では、広域に停電をもたらした台風15号が来る1週間まえに、新電力会社、株式会社CHIBAむつざわエナジーが電力供給を開始していました。この会社は千葉県睦沢町と民間企業の協同出資で立ち上げた自治体PPSです。

2019年9月13日に出された同社のプレスリリースをご紹介します。
https://mutsuzawa.de-power.co.jp/wordpress/871


~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~


9/12 台風15号の影響で町内全域が停電する中、防災拠点であるむつざわスマートウェルネスタウンへ電力と温水を供給しました

2019 年 9 月 1 日のむつざわスマートウェルネスタウンのソフトオープンから間もない 2019 年 9 月 9 日 午前 3 時頃、台風 15 号による強風で東京電力の送配電線が損傷し、睦沢町を含む千葉県広域で大規模な 停電が発生しました。

むつざわスマートウェルネスタウンも一時的に停電したものの、自営線(電線)の地中化を行っていたためほとんど被害がないことを確認し、9 月 9 日午前 9 時頃にガスエンジン発電機を立ち上げ、住宅および道の駅の重要設備への送電を開始しました。

翌 9 月 10 日午前 10 時よりガスエンジン発電機の排熱等により水道水を加温して周辺住民の方々への温水シャワーの無料提供を可能にしました

道の駅むつざわつどいの郷は、国の重点道の駅に選定されており、災害時において防災拠点としての機能を担うことになっています。今回はオープンまもなく準備不足の部分もありましたが、その役割の一部を果たすことが出来ました。

株式会社 CHIBA むつざわエナジーは今後ともエネルギーの地産地消および地域への貢献に努めて参ります。


~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~


「地域の、地域による、地域のためのエネルギー会社」は、地元の再エネ資源(太陽光、風力、小水力、バイオマスなど)を活用することで、域外へのエネルギー代金の流出を止めるほか、CO2削減にも大きな貢献をします。加えて、むつざわエナジーがお手本を見せてくれたように、被災時のエネルギー途絶を最小限に押さえるによって、地域のレジリエンス(外部からの強い力にも折れずに、しなやかに立ち直る力)の中核を担うことができます。


委員を務めた「エネルギー情勢懇談会」でも「パリ協定長期成長戦略懇談会」でも、分散型エネルギーへのシフトは私の大きな主張点の1つでした。地方創生の観点からも極めて重要なカギを握っているためです。

最近の報道によると、「経産省は企業が特定の地域で工場や家庭までの電力供給に参入できる新たな仕組みをつくる方針」とのこと。太陽光や風力などの再生可能エネルギーの事業者を念頭に配電の免許制度を設け、地域で生み出す電力を工場や家庭に直接届けることができるようにし、電力大手が独占してきた配電に、他業種からの参入を呼び込み。再生エネの普及を促すとともに、災害時の停電リスクを分散する考えとのこと。

「数百世帯程度の町ごとに民間企業が電力を供給する姿を想定し、2020年代前半の実現を目指す」とのこと。いよいよ、大口の産業用はともかく、家庭用や民生の事業者用には、「うちの町のエネルギー」が普通だよ、という時代がやってきそうです!

時代の到来を待たずに、それぞれ地域資源で地域のエネルギーを生産・供給しようという試みがあちこちで行われています。

その1つ、気仙沼での事業を取材させてもらって英語記事にし、世界に発信しました。
https://www.ishes.org/cgi-bin/acmailer3/backnumber.cgi?id=20190925

その日本語版をお届けします。


~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~


再生可能エネルギーで地域のエネルギー循環を
――気仙沼からの挑戦

気仙沼市は、宮城県の北東端に位置する人口6万人強の市です。北上山系の支脈に囲まれ、東は太平洋に面しています。沿岸域は、半島や複雑な入り江など、変化に富んだリアス式海岸を形成し、その海岸美により国立公園や国定公園の指定を受けています。

2011年3月の東日本大震災で大きな被害を受けた気仙沼市は、復興計画の中で環境エネルギーを柱の1つに据え、地域の環境に適した再生可能エネルギーを積極的に取り入れていく考えを示しています。気仙沼市における再生可能エネルギーの取り組みで中心的な役割を果たしている、気仙沼地域エネルギー開発株式会社代表取締役の高橋正樹さんにお話を伺いました。

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○取り組みを始めたきっかけ
気仙沼市では、気仙沼復興会議という組織をつくって、2011年6月から震災復興計画の策定作業を始めました。そこにアイデア出しをするための実働部隊である市民委員会を作りたい、その座長になってほしい、という話を市長から受けたのですが、メンバーを見ると、東京で活躍している気仙沼市出身の人も何人か入っています。「いま自分の周りのことだけでも大変な状況なので、座長は被災していない人にしてほしい」と言ったのですが、「被災していないと言いづらいことも多いし、あなたが被災していることはみんなが知っているから」と言われ、引き受けることにしたのです。

委員会で話し合った復興計画の柱は様々でしたが、その1つであったエネルギーについては、震災直後に電気も油も絶たれた経験から、地産地消の再生可能エネルギーをどんどん入れたほうが良いということになりました。しかし、具体的に何をやるかは決まっていませんでした。復興計画の策定後、市内民間事業者によって太陽光や風力による発電事業が具体化され始めましたが、もっと気仙沼に合ったものがあるのでは? といって出てきたのが木質バイオマスです。山が海に迫っている地形なので、そこに生えている木を使わない手はないだろうと考えた市職員が居たのです。最初は森林組合に相談に行ったようでしたが、取り上げてもらえなかったようで、様々な事情から私の所へ来て懇願するバイオマス発電の発案者の熱い思いに、「じゃあ、調査事業だけでも一緒にやろうか」と言ったのが、取り組みのきっかけです。

日本の林業は、昭和40年代以降、コンクリートの台頭により、衰退の一途をたどっています。気仙沼もその例に漏れず、材価が下がったことにより手入れが行き届かず、豊かとは言えない山が多い状態でした。バイオマス発電ができるようになれば、町の人は地産のエネルギーを使えるので嬉しい。バイオマス発電の燃料として間伐材を使うようになれば、森の整備が進みますから、森林所有者も嬉しい。手入れのされている森林からは豊富な養分が海に流れ込みますから、漁業者も嬉しい。ただ、石油業者だけは、燃料としての需要が減るから寂しい思いをすることになります。

私の生業である気仙沼商会は石油を売る会社です。ですから、社内には「何でそんな敵になるような事業をやるんだ」という声もありました。それでも、「石油を売るのも、木材チップを売るのも、燃料を売るのは一緒じゃないか。商品のひとつだ」、と話をしながら進めていったのです。

○事業としての立ち上げ
全国のバイオマス発電の状況を見ると、大体が発電して終わりです。エネルギー効率でいうと木材から電気に出来るのは3割ぐらいが限度で、残りの7割は熱エネルギーとなって捨てている計算になります。僕たちは、その分も復興する町のエネルギーとして使おう、ということで熱を供給しようということになりました。

最初は市役所でバイオマスの熱を使おうと検討したのですが、役所だと夕方5時ぐらいまでしか熱を使いません。24時間熱を使うのはどこだろうと考えると、ホテルか病院ですよね。当時一番大きな市立病院は移転することが決まっていたので、まずホテルに行って話をしたら、石油より安く熱を使えるのであればという事で、またうまく稼動すれば、何年も使ってもらえるとも約束してくれたので、事業化に踏み切ることにしました。

発電プラントは、ドイツのメーカーに発注して、出力規模400キロワット、ガス化システムのものを2基導入しました。合計800キロワット、一般家庭でいうと約1,600世帯分に相当する発電規模になります。

ガス化システムは、木質バイオマスをチップ化、またはペレット化した燃料を使用し、熱分解・還元反応 によりガス化し、そのガスを燃料としてエンジンで発電を行う仕組みです。発電出力の2倍強の熱を回収することができるため、発電効率は3割程度でも、エネルギー効率としては8割近くになります。熱は、80~90℃の温水として供給されます。

最初に相談に行って事業者には成れないと言われた森林組合の人たちも、事業化を応援してくれると言ってくれました。最初から相談していたから、応援してもらえるようになった。これが大事なのだと思います。その後もずっと、最初に決めた値段で間伐材を安定的に提供し続けてくれています。

事業化には、資金調達というハードルもありました。当時は様々な補助金もありましたが、事業費のうちの11億円は借り入れで賄うしかない。事業として成り立ちそうだけどお金が無い、という話をしたら、信金や財団から「お金は出すから復興のシンボルとして是非やるべきだ」と話をされ、事業として始めることができたのです。

この事業の運営のために、気仙沼地域エネルギー開発株式会社という会社を立ち上げました。気仙沼商会からは出資せず、僕個人で45万円、提案者のうちの一人が45万円、信金が10万円、合わせて100万円の資本金でスタートしました。

○持続可能な木材供給
さきほども言いましたが、気仙沼の山は手入れが行き届いていない状態でした。森林所有者に聞いてみると、「山が荒れているのは嫌なので、誰か間伐してくれる人がいるなら間伐材は提供してもいい」という人もいれば、「木を切りたいけど、切り方がわからないから教えてほしい」という人もいました。

そこで先ずは林業研修から始めました。木の伐採方法、搬出方法、路網整備の方法の勉強会を開催。現在まで延べ700名を超える受講者がいます。そして次に、その木が切れるようになった受講者の一部をグループ化しました。他方、荒れている森林を整備してもらえるなら山を提供してもいい、と言っている人がいたので、そういう山にグループで入って木を切ってもらっています。今年はさらに、一歩進めて、「森ワーカー」という制度をつくりました。個人で参加してもよいという人たちを登録して、山の人材バンクのように山主さんとのマッチングを図っています。

「間伐材の売上は切った人にあげるから、お金をかけずに山がきれいになればいい」という山主さんもいますし、「1人で施業するのは大変なので助っ人が欲しい」という山主さんもいます。助っ人を頼む場合は、切る人の習熟度に応じて決めた謝礼金を、支払ってもらうようにしています。

他には、市長に提案して地域おこし協力隊を募集してもらい、山の人材として2人に入ってもらいました。市が募集した地域おこし協力隊はいろいろなカテゴリーがありましたが、林業だけはすぐに集まりました。今年に入って更に2人募集したら、これもすぐに集まりました。グループを組んでいるのはリタイアした60代以上の人が多いのですが、地域おこし協力隊には若い人が来てくれています。

現在稼働中の800キロワットの熱電プラントを動かすのに、年間8000トンの木材を使っているのですが、気仙沼の森林面積を考えると、資源としてはまだまだ余裕があります。どの山にも人が入って間伐を進めれば、今の規模のプラントを7つに増やしても持続的に循環できるという計算結果が出ています。

○地域通貨
燃料になる間伐材は、1トンあたり6000円で買い取っています。相場では3000円ぐらいなのですが、その価格だと引き合わないので、間伐されずに放置されている。そこで、倍の値段に設定しました。そして、相場に上乗せした3000円分は、地域通貨のReneria(リネリア)で支払います。

Reneriaという名称は、リアスの森、再生可能エネルギーなどの思いから名付けられました。現在、市内の150ほどのお店で使うことができます。交換手数料を取らないと話したら、皆さん好意的に加盟してくれました。「リネリア」が使われたら、加盟店の人はそれを別の加盟店に持っていって使うこともできますし、うちのガソリンスタンドでガソリンを買うこともできるし、換金することもできます。

現状、発電と熱の生産に使っている8000トンの木材のうち、2000トンを個人から買い入れ、6000トンを森林組合などの組織から買っています。「リネリア」で支払っているのは個人だけなので、年間600万円分の「リネリア」を出している計算です。これだけだと林業の人にしか渡らないのですが、一般の人にも渡るようにしたいと思い、有料の見学コースをつくりました。観光客は3000円のコースを利用することが多く、その場合は1000円分の「リネリア」を渡しています。

この地域通貨を通じて、地元の経済にお金が回るようになれば、と思っています。市にも協力してもらってもっと広げられればと思うのですが、これからの取り組みです。

○今後の展望
今後は、電力と熱をつくるコストを下げ、収支を改善させながら、地域に役立つエネルギーを供給していきたいと考えています。たとえば、農業用のハウスに熱を供給するなどのアイデアも出てきています。家で不要になった割り箸など燃料になるものを持ってきてもらって、「リネリア」で買い取るとか、もっともっと市民のみなさんにこの取り組みを知ってもらい、応援してもらえるようにしたいと思っています。

これまでに何回か、企業の社員研修や大学の授業に呼ばれたことがあります。我々の取り組みの紹介ビデオを見せながら地域の課題をディスカッションする、ということをやりました。企業に限らず、こどもたちも含めて、都会の人たちに研修としてこの事業を活用してもらえるような仕組みを、地域として作っていければとも考えています。

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今回お話を伺った高橋さんは、地域が元気になる、環境にも良い取り組みをいかに持続可能なものにしていくか、自分たちで山とつながって山から木材が出続けるようにするなど、さまざまな工夫を重ねておられます。より多くの市民がこの取り組みのことを知り、応援していくことで、事業が持続可能なものになり、地域でエネルギーが循環し、活性化していくことを期待します。

 

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