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つながりを読む

エルネオス最終号に贈る「しなやかに立ち直る 暗闇の先への指針」

2020年09月07日

「エルネオス」というビジネス雑誌で、数年にわたって『枝廣淳子の賢者に備えあり』というコラムを書かせていただいてきました。「エルネオス」最終号となる9月号への寄稿を、編集部の快諾を得て、転載します。


~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~


しなやかに立ち直る 暗闇の先への指針

気候危機への対処も十分にできていないうちに、世界は新型コロナウイルス危機に巻き込まれました。出口の見えない真っ暗なトンネルの中にいるようです。果たして出口はどこにあるのでしょうか。それまでにどれだけの被害や損害が出てしまうのでしょう。感染防止は徹底的にすべきですが、一方で経済活動を再開しないと、事業者や地域経済・日本全体の土台が崩れてしまいかねない......。

いうまでもなく、私たちの願いは、人類と社会と暮らしがずっと続いていくこと、つまり持続可能性です。「有限の地球の上で無限の経済成長を続けようとすることは持続可能ではない」ことを、システム思考をベースとしたシミュレーションで明らかにし、世界に警鐘を鳴らした『成長の限界』が最初に出版されてから約50年。私たちはいまだに持続可能性の難題に直面しています。

この『成長の限界』の著者、デニス・メドウズとドネラ・メドウズが立ち上げた、世界の研究者・実践家のネットワークがあります。私はこのグループに20年ほど前から参加し、『成長の限界』の続々編である『成長の限界 人類の選択』を翻訳しました。

同書は、多くのデータやシミュレーションを展開して成長の限界について解き明かしていますが、最終章では「では、どうしたら持続可能性をつくり出せるのか」を「5つの大事なこと」として提示しています。コロナウイルス危機や気候危機に懸命に対処しようとしている皆さんに贈ります。

(1)ビジョンを描くこと

ビジョンを描くとは、想像すること。「何を本当に望んでいるのか」を、まずは大まかに、そして細かいところまで思い描いていきます。思い描くのは、あくまでも「自分が本当に望むこと」です。人からそう望むようにと教えられたことや、それで我慢することに慣れてきたことではありません。コロナ危機の向こうに、どのような事業や暮らしや地域を望んでいるのでしょうか。テレビや人々の論説ではなく、自分の心の声に耳を傾けましょう。

(2)ネットワークをつくること

ネットワークにはさまざまな形態があります。人生のある側面についての関心を共有する人々が、連絡を取り合い、データや手法、アイデアや励ましを送り、お互いを尊敬し、支え合っています。権力や義務、物質的なインセンティブなどではなく、共有されている価値観や、「ひとりではできないこともみんなでやればできる」という認識でつながっている人々です。ネットワークに参加していることで、「自分ひとりではない」と思うことができます。コロナ危機や気候危機対して、同じような思いや認識の人々がきっといます。ネットワークの力を活用できないでしょうか?

(3)真実を語ること

嘘は情報の流れを歪めます。情報の流れが嘘によって歪んだり途切れたりすると、システムはきちんと機能できなくなります。他の人に話をする時は常に、嘘に立ち向かい、真実を断言するよう、努力することが大事です。

(4)学ぶこと

持続可能な世界をつくり出すために「行う」べきことはたくさんあり、そのために学ぶべきこともたくさんあります。学ぶとは、ゆっくり進み、物事を試し、その行動がもたらす影響に関する情報を集めようとすることです。誰もが、間違いを犯し、その間違いについて真実を語り、そして先に進んでいくことによって学ぶのです。

(5)愛すること

自分自身もほかの人たちも、同じ社会の一部だと考えるようにならないかぎり、うまくいかないでしょう。そのためには、思いやりの気持ちが必要です。自分のまわりにいる人たちだけではなく、遠くに暮らす人々や将来世代への思いやりを持てるようになること。

明けない夜はありません。大変なことがあっても、しばし落ち込むことがあっても、しなやかに立ち直る強さが私たちには備わっていると信じています。頑張りましょう!


~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~

この「5つの大事なこと」を示してくれたドネラ・メドウズさんは、システム思考の第一人者です。残念なことに、私は直接お会いする機会はなかったのですが、何冊か翻訳させていただく中で、その教えを伝える役割を務めています。

『世界はシステムで動く――いま起きていることの本質をつかむ考え方』
ドネラ・H・メドウズ(著)枝廣淳子(訳)小田理一郎(解説)英治出版

システム思考を日本に広げたい!とチェンジ・エージェント社を仲間と立ち上げ、自分自身でも大学院大学至善館で教えています。コロナ禍で集合研修が難しくなっていることから、この夏、システム思考の入門編の連続セミナーをオンラインで開催し、好評を得ました。

つづいて、中級編として、システム原型とレバレッジポイントについて学ぶオンラインセミナーを開催します。システム思考の基礎を学ばれた方ならどなたでも参加できます。また、入門編の音声講座を自学自習していただいて参加することもできます。ぜひご活用下さい!

~~~~~~~~~~~~~~ここからご案内~~~~~~~~~~~~~~~

9月9日(水)スタート: オンラインシステム思考セミナー(中級編・5回連続)

システム思考の基礎を身につけたら、次は「よくあるパターン」(システム原型)を学びましょう。システム思考では、古今東西を問わず、よく見られるシステム構造のパターンを「原型」と呼び、これまで10数種類の原型が見いだされています。本セミナーでは、このうち、本当によくあるパターンを数種類学び、そのパターンの罠に陥らない、または脱出するための「システムの鉄則」も学びます。

システム原型をいくつか知っているだけでも、「あ、この状況はあの原型かも」と、システム構造を見抜く手がかりになります。よくある罠に陥らずにすむ知恵を身につけることができます。

また、システム思考を学ぶのは「変化を創り出す力を身につけるため」ですよね。システム思考を用いて、構造がある程度わかってきたら、次は「どうやったら変えられるか?」です。構造がわかっただけでは変わりません。思いつきで対策やプロジェクトを行っても効果的な変化を生み出すことは難しいでしょう。

システムに効果的に介入する上で重要なポイントを「12のレバレッジポイント」としてまとめたものがあり、具体的にどうしたらよいか?というときに、非常に役に立つ枠組みとなります。「この対策はやりやすいけど効果は薄いよ」「ここの介入点を押してみよう」という議論ができるようになります。

本セミナーでは5回にわたり、システム原型とレバレッジポイントについて取り上げ、状況を構造としてシステム思考的にとらえ、さらにその理解をもとに効果的な変化を創り出す方法について学びます。中級編ですが、わかりやすくお伝えしますので、基礎編・入門レベルのシステム思考を身につけられた方でしたら、心配なくご参加いただけます。

さらに楽しいシステム思考の世界にぜひ!


第1回 2020年9月9日(水) 19:30~21:00
    システム思考のおさらい、システム原型と鉄則その1

第2回 2020年9月16日(水) 19:30~21:00
    システム原型と鉄則その2~5

第3回 2020年9月23日(水) 19:30~21:00
    レバレッジポイントとは、「12のレバレッジポイント」を学ぶ

第4回 2020年9月30日(水) 19:30~21:00
   「12のレバレッジポイント」を学ぶ

第5回 2020年10月7日(水) 19:30~21:00
    システム原型とレバレッジポイントを用いて、構造を見抜き、変化を創り出す

※各回、講師の解説とグループでの対話を行います


■定員:特に制限を設けておりませんが、本シリーズの基礎編、またはそれと同程度のシステム思考の基礎を身につけられた方向けのセミナーとなります。(基礎編は今からでも音声受講で学んでいただくことが可能です。

★この機会に基礎編(5回)を音声受講で学んでみませんか★
=「基礎編音声受講について」=

2020年7月から8月にかけて5回にわたりお届けした「オンラインシステム思考セミナー(基礎編)」を、この機会にあらためて学びたい方は、ぜひ音声受講をご活用ください。
ご購入いただいた方には、5回分の講師の音声(mp4)と資料(PDF)をダウンロードいただけるよう、ご案内をさせていただきます。


~~~~~~~~~~~~~~ご案内ここまで~~~~~~~~~~~~~


詳細とお申し込みはこちらをご覧下さい。

オンラインセミナーのよいところは、お住まいの場所に関係なく参加いただけること。先日翻訳セミナーを開催したときには、海外在住の方々も参加してくれました。オンライン化で「距離のハンディ」がなくなりますね。オンデマンド化で「時間の制約」も超越することができます。

この夏に開催した地域経済循環セミナー(4回シリーズ)も、資料と当日の動画でオンデマンドで学べる講座にしてもらいました。参加しそびれた方、初めて知ったという方、こちらもぜひご活用ください!

【オンデマンド講座】地域経済循環セミナー(4回シリーズ)


コロナがあろうとなかろうと、ビジョンを描くこと、ネットワークを広げること、学ぶこと、真実を語ること、大事にすべきものを大事にすることの大切さは変わりません。つい気もそぞろになりがちな状況ではありますが、学び、考え、問いつづけていきましょう!

 

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